萩野公介「ひと味もふた味も違う優勝」 復調のきっかけとなった200自の棄権

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200自由形の回避、周囲からの励ましで“切り替え”

大会3日目の練習で、最後の一人になるまで泳ぎ続ける萩野 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 萩野は16年に右ひじの手術、今年の1月には体調不良のため東京都選手権を欠場しており、フィジカル面に一抹の不安を抱える。そういった背景も相まって、日本のエースを誰しもが心配した。

 しかし、その心配は杞憂に終わる。大会3日目の200メートル個人メドレーに登場した萩野は、全体1位で予選突破。準決勝も快泳を見せ、全体トップで決勝進出を果たした。

「背泳ぎも悪くなかった。後半もう少し伸びが出るはずなので、決勝はがんばりたい。素晴らしい選手たちとそういうこと(真剣勝負)ができるので、胸を借りるつもりで楽しんで泳ぎたい」

 2日前に見せた表情から一変し、レースそのものを心から楽しんでいる萩野の姿があった。「いろんな人から楽しんでやれと(連絡がきた)。僕、相当つまらない顔してやっているのかなと思ったのですが(笑)」と笑い飛ばした。

平井コーチの支え、周囲からの励ましを得て、気持ちをしっかり切り替えた 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 代表選考がかかる日本選手権のような大会で、棄権という判断は大きな勇気がいるだろう。メンタル面の不調はすぐに回復するとは限らない。しかし萩野は間に合わせてきた。
「自分の中で一区切り(できた)。試合期間中にしっかりと成長すること、個人メドレーが残っているのでそれに集中してがんばるということを考えることができたので、大きな1日だった」

 1日の休養を経て、エースは再び輝きを取り戻した。6日の200メートル個人メドレー決勝で優勝すると、8日の400メートル個人メドレー決勝も1位でフィニッシュ。

「苦しい思いをした分、ひと味もふた味も違う優勝」だと萩野は言う。

「初日も良くなくてすごくしんどい部分はありましたが、たくさんの人から楽しんで泳げと言ってもらったり(平井)先生の支えもありました。年始のころはこの大会(日本選手権)に出られないんじゃないかという状態だったので、こうやっていま泳ぐことができて、たくさんの方に感謝したいです」と振り返った。

 今後については、「2020年の(東京)五輪へ向けて一日も無駄にできないという気持ちで(練習や試合に)取り組んでいきたいと思います」と述べた。

 自信を取り戻したエースは、これからも一歩一歩着実に進んでいく。

(取材・文:鈴木一史/スポーツナビ)

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