PDCA意識で成長、競泳チームジャパン 世界水泳から3カ月半での手応え

田坂友暁

東京で短水路のW杯開催

今季前半、タイムの伸び悩みに苦しんだ池江。W杯東京大会では2つの日本記録を更新した 【写真:田村翔/アフロスポーツ】

 金メダルは取れなかったが、銀が4個、銅を3個、合計7個のメダルを獲得した第17回世界水泳選手権(ハンガリー・ブダペスト/以下、世界水泳)。世界最高峰の戦いが終わってから、3カ月半が過ぎ、メダリストも、そうでない選手たちも2018年シーズンに向けてスタートを切った。
 その皮切りとなったのが、短水路(25メートル)で行われるFINAスイミングワールドカップ2017の東京大会(11月14、15日開催、東京辰巳国際水泳場。以下、W杯)。第59回日本選手権(短水路)も兼ねて行われた大会だ。
 萩野公介(ブリヂストン)は米国でのトレーニングのため不参加だったが、ほとんどの代表選手たちが出場。さらにシーズンインしてから間もないが、短水路ながらそれぞれがしっかりと目的を持った泳ぎを披露してくれた。

充実感をにじませた選手たち

 今大会、誕生した短水路日本新記録は全部で5個。池江璃花子(ルネサンス亀戸)が50メートルバタフライ(25秒14)と100メートル個人メドレー(57秒75)で記録を更新。17年シーズンは、日本選手権や世界水泳といった主要大会で自己ベストを出せなかったことに悩んでいた池江だったが、短水路とはいえ2種目で自己ベストを更新し、「昨年より力がついていると実感できました」と笑顔を見せた。

 中村克(イトマン東進)は、100メートル自由形で塩浦慎理(イトマン東進)が持つ短水路日本記録を100分の5秒更新する46秒54をマーク。そして、江原騎士(自衛隊)が1500メートル自由形のなかで、800メートルの途中経過で7分42秒28をたたき出した。

 そして小関也朱篤(ミキハウス)が、50メートル平泳ぎを26秒06で泳ぎ、自身が持つ記録を更新した。100メートル平泳ぎでは、日本記録はならなかったものの56秒49の好記録をマーク。この2種目とも、世界水泳の100メートルで銅メダルを獲得したキリル・プリゴダ(ロシア)を抑えての優勝したことで、小関にとっては大きな自信になったことだろう。

 日本新記録ではないが、渡部香生子(早稲田大)は、100メートル平泳ぎで1分04秒99の3年ぶりとなる自己ベストを更新。
「ベストが出せて、本当にうれしいです。キックが入ったときに、しっかり水がかかる感覚がある。平泳ぎで記録を伸ばせたことが大きい。これをきっかけに、長水路でもベストを出せるように練習していきたい」(渡部)

 それほどレベルの高い記録は出せていないが、渡部と同じように平泳ぎで伸び悩む今井月(豊川高)も、今大会では「キックを打ってからの体重移動がうまくできているし、プラン通りのレースができている」と泳ぎの手応えを感じた様子。

 瀬戸大也(ANA)は、400メートル個人メドレーで300メートルまで世界記録を上回る泳ぎを見せる。結果的には大会記録にとどまったが、高校時代からW杯を何戦も戦って力をつけてきた瀬戸は、「久しぶりに自分のスイッチが入る感覚がある」と連戦のなかで闘争本能を呼び戻していた。

 世界水泳には参加できなかったが、世界ジュニア水泳選手権100メートル背泳ぎで1分の壁を突破した酒井夏海(スウィン南越谷/武南高)は50と100に出場。「空回りしないように気をつけながら、泳ぎのテンポを上げるように心掛けました。後半までそのテンポをキープできましたし、ベストも出て良かったです」と、夏に59秒台を出せたときの感覚を確かめるように泳いでいた。

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著者プロフィール

1980年、兵庫県生まれ。バタフライの選手として全国大会で数々の入賞、優勝を経験し、現役最高成績は日本ランキング4位、世界ランキング47位。この経験を生かして『月刊SWIM』編集部に所属し、多くの特集や連載記事、大会リポート、インタビュー記事、ハウツーDVDの作成などを手がける。2013年からフリーランスのエディター・ライターとして活動を開始。水泳の知識とアスリート経験を生かした幅広いテーマで水泳を中心に取材・執筆を行っている。

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