大阪桐蔭、春連覇に貢献した根尾昂 監督認める“ふてぶてしさ”で智弁封じ

楊順行

力以上のものを与えてくれる甲子園

投手に野村、橋本ら、打線では立浪、片岡らを擁して春夏連覇を達成した1987年のPL学園になぞらえる今春の大阪桐蔭。100回大会となる夏の甲子園では2度目の春夏連覇を目指す 【写真は共同】

 圧巻は、遊撃手でもある根尾のフィールディングだ。三重との準決勝でも「あえてさせた」(根尾)バントに一瞬逆を突かれながら、絶妙な体の切り返しで処理すると、二塁へ矢のような送球で併殺を完成。この日も2回、同様にほれぼれするようなバント処理で併殺を演出している。

 根尾はかつて、中学時代に世界大会に出場したアルペンスキー・スラロームになぞらえ、こんなふうに語った。

「スキーって一見、足腰でバランスを取っているように見えますけど、上半身なんです。野球でも、全身のスムーズな動きにとって、上半身のバランスや柔軟な動きが、すごく大切だと思います」

 なるほど。それが、見ているだけで楽しい根尾のフィールディングの根底にあるのか。

「打つほうでも、昨日の当たりだったり今日も運良く(野手の間を抜く)ヒットになっていました。ゲッツーにしてもそういうヒットにしても、甲子園が自分の力以上のものを与えてくれているかもしれません」(根尾)

昔は打倒・PL、今は打倒・桐蔭

 これで大阪桐蔭に4連敗となった高嶋監督は試合前、こう語っていたものだ。

「いまの大阪桐蔭は、私が智弁学園(奈良)の監督になったころのPL学園(大阪)のような存在です。どのチームも、打倒・PLでやってきていたのが、いまは打倒・桐蔭になっている」

 大阪桐蔭の現チームは、春夏連覇した1987年のPL学園によくなぞらえられていた。投手陣は野村弘樹(元横浜ほか)、橋本清(元巨人ほか)ら、のちにプロ入りする2人を含めて強力な3投手を擁した。打線には立浪和義(元中日)、片岡篤史(元日本ハムほか)らがそろい、豊富な投手陣とプロ注目打者をそろえるいまの大阪桐蔭と似ているのだ、と。ちなみに大阪桐蔭・西谷監督も、98年の就任時は「PLさんが常に目標でした」と言う。大阪桐蔭は、史上PL学園しかなかった春連覇と春夏連覇を達成したことになる。いま、そのPL学園は姿を消した。

 今年100回を迎える夏は、同時に平成最後の大会でもある。その締めくくりに大阪桐蔭が挑戦するのは――PL学園さえ成し遂げていない、2度目の春夏連覇だ。

2/2ページ

著者プロフィール

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。高校野球の春夏の甲子園取材は、2019年夏で57回を数える。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント