韓国が示した“ポーランド攻略法” 日本はパスワークから突破口を開け!

李仁守

双方の利害が一致したテストマッチ

韓国はドイツ、ポーランドは日本を想定したテストマッチ。日本にとっても絶好のシミュレーションになった 【写真:ロイター/アフロ】

 対決から約1週間が経っても、この試合に関する議論が絶えない。3月27日に行われた韓国対ポーランドの一戦だ。

 韓国にとってはワールドカップ(W杯)ロシア大会で対戦するドイツを意識した試合。対するポーランドは、同じH組の日本を想定して臨んだテストマッチであることは明白だろう。韓国サッカー協会の関係者によれば、ポーランドはW杯の組分けが決まった直後から、韓国との対戦を望んでいたという。ドイツを仮想できる相手を求めていた韓国にとっても、ポーランドはうってつけの相手。双方の利害が一致したテストマッチであり、日本にとっても絶好のシミュレーションとなった。

 というのも、韓国は日本の“永遠のライバル”とされる隣国。その韓国がポーランドを相手にどこまで戦えるかを見ることで、間接的ではあるが、日本とポーランドの実力差や相性を推し量れるわけだ。

「日本がこの試合を通じてポーランドの実態を探ろうとしていることは、現場でも感じましたよ」

 そう語るのは、韓国のスポーツ紙『スポーツ朝鮮』のヨーロッパ特派員として、ロンドンを拠点にプレミアリーグやUEFAチャンピオンズリーグなどを取材しているイ・ゴン記者だ。イ・ゴン記者も、この試合を現地で取材し、日本メディアの注目度の高さを実感したという。

「記者席を見渡すと、日本の記者の姿も少なくありませんでした。韓国の戦いから、W杯で対戦する際のヒントを見つけにきたのでしょうが、実際にこの試合ではポーランドの特長や弱点も見えました」

勝負を分けたレバンドフスキの「個の力」

試合の勝敗を分けたのは、レバンドフスキの「個の力」だった 【Getty Images】

 では、韓国戦で見えたポーランドの特長と弱点とは何か。

 試合は後半40分までポーランドが2−0でリードしていた。その後、韓国は立て続けに2点を決めて同点に追いつくが、後半アディショナルタイムにピオトル・ジエリンスキが決勝弾を決め、3−2でポーランドが勝利した。

 韓国を最も脅かしたのは、前半32分に先制点を決めたロベルト・レバンドフスキだった。世界屈指のセンターフォワードの力には、韓国の絶対的エースであるソン・フンミンも「相手の先制点は認めざるを得ない。クロスも良かったが、レバンドフスキの決定力が素晴らしかった」と称賛を送った。

 実際、このゴールの場面で韓国は、センターバック(CB)の3人が全員ペナルティーエリア内に残っていたが、レバンドフスキに置き去りにされ、成す術(すべ)もなくヘディングで決められてしまった。

 前出のイ・ゴン記者も、レバンドフスキには脅威を感じたという。
「レバンドフスキの個の力が勝負を分けた。そう言い切れるぐらい、強烈な存在感を見せていました。韓国は試合の立ち上がりからレバンドフスキに振り回されっぱなしでしたから。ポーランドの攻撃も、レバンドフスキを最大限に生かすことに集中していました。特に、2列目からレバンドフスキを狙ってアーリークロスやロビングパスを放り込まれるのが厄介でした」

 たしかに韓国は、レバンドフスキを狙ったロビングパスに翻弄(ほんろう)されていた。前半3分の場面は象徴的だ。後方からレバンドフスキがロビングパスを受け、ボールがペナルティーエリア内にこぼれたとき、韓国のDFは2列目から飛び込んでくる相手に誰も対応できていなかった。結局、CBのチャン・ヒョンスが体を張ってシュートを止めたが、あわや失点という危ない場面だった。

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著者プロフィール

1989年12月18日生まれの在日コリアン3世。大学卒業後、出版社勤務を経て、ピッチコミュニケーションズに所属。サッカー、ゴルフ、フィギュアスケートなど韓国のスポーツを幅広くフォローし、『サッカーダイジェストweb』『アジアサッカーキング』『アジアフットボール批評』『女子プロゴルファー 美しさと強さの秘密(TJMOOK)』などに寄稿。ニュースコラムサイト『S−KOREA』の編集にも携わる

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