韓国が示した“ポーランド攻略法” 日本はパスワークから突破口を開け!

李仁守

試合終盤に集中力を失ったポーランド

わずか2分の間に2点を失うなど、ポーランドは試合終盤に集中力が落ちた 【Getty Images】

 ただ、韓国の守備が不安定だったことも否定できない。韓国はこの日、本職のサイドバック(SB)がけがで離脱し、急きょ得意とする4−4−2から不慣れな3−4−3にフォーメーションを変更したため、ディフェンスラインの足並みがそろっていなかったのだ。後半から出場した右SBのチェ・チョルスンは、ポーランドの攻撃に対処するには守備の連係が不可欠だと強調した。

「相手の攻撃に、DFが揺さぶれてしまった。守備陣がもっとコミュニケーションを取り合わないといけなかった」(チェ・チョルスン)

 また、韓国は前線からの激しいプレスにも悩まされた。相手の3トップのプレッシャーに落ち着きを失い、韓国の守備陣はキックミスやトラップミスを連発。ビルドアップも思うようにできず、ディフェンスラインと前線の間隔が広がり、トップのソン・フンミンが孤立してしまったのだ。

 イ・ゴン記者も言う。
「ポーランドは、前線からプレスをかけることを徹底していました。しつこいプレスによって選択肢を限定され、韓国はなかなか前線までボールを運べなかった。ボールを奪った後、冷静にボールをキープし、チャンスにつなげることが必要だったと思います」

 レバンドフスキを中心とした2列目からの攻撃と、前線からの執拗なプレスに苦しめられた韓国。しかし、この試合ではポーランドの弱点も露呈した。その1つは、終盤に集中力が落ちたことだ。事実、ポーランドが失点したのは後半40分と42分だった。わずか2分の間に2点を奪われたのである。

 イ・ゴン記者はポーランドが集中力を失ったことが、記者席からも見て取れたという。
「ポーランドの選手の動きや表情を見ていましたが、後半途中から緊張感がなくなっていたことは明らかでした。前半に2点をリードし、韓国もゴールから遠ざかっていたため、安心してしまったのでしょう。韓国が1点目を決めた後などは、すっかり気が抜けていたように見えました」

 韓国のシン・テヨン監督も、ポーランドの気の緩みを見逃さなかった。
「ポーランドもW杯に出場するチームなだけに、最後まで良いパフォーマンスを見せていた。だが、後半に2つ失点したときは、かなり集中力が落ちていたと思う。その点を除けば、ドイツと同じレベルのチームだった」(シン・テヨン監督)

日本はパスワークから突破口を開けるか!?

韓国が示した“ポーランド攻略法”。その教訓を生かし、日本はW杯で勝利を挙げることができるか 【写真:ロイター/アフロ】

 もっとも、ポーランドが同点に追いつかれた一因には、韓国が前半終了間際にフォーメーションを元の4−4−2に戻したこともあるだろう。それは、試合序盤に前線で孤立していたソン・フンミンが感じていたことでもある。ソン・フンミンは、2トップを組んだファン・ヒチャンの動きが活路を開いたと語る。

「2トップに変更してから、パートナーのファン・ヒチャンの動きが良かった。ファン・ヒチャンが相手DFの裏に動いたことで、スペースが生まれました」

 イ・ゴン記者も、ファン・ヒチャンの活躍によって韓国の攻撃が復活したと話す。
「韓国は、4−4−2に転換してから、確実に流れをつかみ始めました。ファン・ヒチャンがスペースを作ったことで、ソン・フンミンを生かせるようになった。韓国の攻撃が復活したのです。ファン・ヒチャンが実践したような守備の裏を突く動きは、ポーランドに対する有効な攻撃の1つと言えるのではないでしょうか」

 集中力の欠如と、裏を突かれたときの守備の対応の鈍さ。この試合で見えたポーランドの弱点は、日本がW杯で対戦するうえでも、1つのヒントになるかもしれない。そんなポーランドの戦いぶりを踏まえ、日本の勝算についてイ・ゴン記者に客観的な意見を聞いてみると、韓国と欧州のサッカーを追ってきたベテラン記者は、日本にも勝ち目があると即答した。

「ポーランドの強さは認めますが、韓国がまったく太刀(たち)打ちできなかったというと、そんなことはない。韓国選手たちも試合後、“勝てた試合だった”と口をそろえていましたし、韓国記者たちの意見も同様です。今のポーランドであれば、W杯で日本も十分に戦えるでしょう。

 日本の場合は、フィジカルではポーランドに力負けするでしょうから、パスをつないでポーランドのプレスをかわさなければいけません。韓国戦でも、ポーランドは左右に揺さぶられると対応できていなかったので、パスワークから突破口を開ければ、日本にも勝機はあるはずです」

 韓国が示した“ポーランド攻略法”。ライバル国が得た教訓を生かし、日本はW杯で欧州の強豪国に勝利することができるか。

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著者プロフィール

1989年12月18日生まれの在日コリアン3世。大学卒業後、出版社勤務を経て、ピッチコミュニケーションズに所属。サッカー、ゴルフ、フィギュアスケートなど韓国のスポーツを幅広くフォローし、『サッカーダイジェストweb』『アジアサッカーキング』『アジアフットボール批評』『女子プロゴルファー 美しさと強さの秘密(TJMOOK)』などに寄稿。ニュースコラムサイト『S−KOREA』の編集にも携わる

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