“Mr.KNOCK OUT”森井洋介の覚悟
世界一を得るため最強の挑戦者を迎え撃つ
4.14「KNOCK OUT SAKURA BURST」神奈川・カルッツ川崎大会のメインに立つ森井洋介
4.14「KNOCK OUT SAKURA BURST」神奈川・カルッツ川崎大会のメインに立つ森井洋介【写真:チナスキー】

 4月14日に開催されるキックボクシングイベント「KNOCK OUT SAKURA BURST」(神奈川・カルッツかわさき)で、メインイベントとなるKING OF KNOCK OUTライト級タイトルマッチに出場する“Mr.KNOCK OUT”森井洋介。昨年のライト級トーナメントを制し、初代王者として、ヨードレックペット・オー・ピティサック(タイ)の挑戦を受ける。


 昨年のKNOCK OUTの軸となった「KING OF KNOCK OUTライト級トーナメント」は国内の同級最強戦士が8人集い、大激闘を繰り広げた。その頂点に立ち、KNOCK OUT初の王者となった森井だが、2018年初戦で最強の挑戦者を迎える。


 ヨードレックペットはムエタイ最高峰の二大殿堂ラジャダムナンとルンピニー両スタジアムのライト級王座を同時に保持した経験を持ち、ムエタイ年間MVPの最有力候補と言われるトップ選手。森井は難敵の挑戦を退け、新設されたベルトの価値を高められるか。今回は試合を間近に控える森井に話を聞いた。

トーナメント優勝は「進化、成長の結果」

昨年のライト級トーナメントは全戦KO勝利で頂点へと上り詰めた
昨年のライト級トーナメントは全戦KO勝利で頂点へと上り詰めた【写真:中原義史】

――1回戦から決勝まで全KOで締めくくって王者となったトーナメントから4カ月。今年の第1戦が近づいてきました。


 ここ2、3年は試合が2カ月に1回とかのペースだったので、これだけ間隔が空いたのは久しぶりです。有難いことに祝勝会とかいろいろな行事があったのですが、練習、通常のトレーニングはちゃんとやっていました。試合が決まって、追い込みのトレーニングはまた全然違うのですが(苦笑)。だから良い意味でリフレッシュというか、体の疲れも全然取れましたし、それこそもうジムに来たらずっとサンドバッグを殴っているから、昨年は肩が痛かったのですが、今回は休みを取ったことでその痛みもなくなったので、やっぱり疲れが抜けているんだなと思いました。


――終わってみれば全試合KOで、森井選手が強さとほかの選手との差を見せたトーナメントだったと思います。


 僕はどちらかというと元々差があったのではなく、昨年やっていく中で進化、成長していき、それで結果的にああなったんじゃないかと思います。KNOCK OUTが始まって、観ているお客さんも増えたし、やったらやっただけ、頑張ったら頑張った分だけ返ってくるので、やる気というかプロ意識がさらに高くなった感じです。やっぱりプロなのでたくさんのお客さんの前で試合をしたいし、「これがプロなんだな」と思えるものにやっと出会えたというか。そこまで来れたなという思いがあります。


――KNOCK OUTという大舞台ができて、それに応えんとより自分の力を出せるようになったと。


 でも、自分では強くなっているのかあまり自信がなくて、まだまだ満足していないし、もっともっと強くなりたいという意識の方が高いです。ただ結果がついてきているので、強くなっているんだろうというのはあるのですが。

「勝てないだろう」と思われる選手に勝ちたい

最初の挑戦者がタイの現役王者ながら「勝てないだろう」と思われる相手に勝利していきたいと話す
最初の挑戦者がタイの現役王者ながら「勝てないだろう」と思われる相手に勝利していきたいと話す【写真:チナスキー】

――森井選手は08年2月のデビューで、ちょうど先日デビュー10周年を迎えました。


 ほぼ苦しかったなって(苦笑)。でも10年っていう時間を考えたらアッという間で、2、3年みたいな感じがします。デビューしてほぼ苦しいことを味わってきたから、逆に今面白いです。前からあったものではなく、自分で作っていける舞台、自分次第というか、これからどれだけ行けるのかなって思っています。今の舞台が前から用意されていたものだったらここまで来れたか分からないし、この面白さも味わえなかったかもしれないです。


――藤原敏男先生や師匠の小林聡さんの練習は膨大な反復を行わせたり、まさに“修行”というべき過酷さがあると思いますが、そういった中でも常に課題を持って新しいことに取り組んでいるのでしょうか?


 僕が思うに、ものすごい反復したりするのは当たり前にできた上で、そこでやっと技術を教えるんだと思います。ここ1年ぐらいでやっとその段階に来られて、僕のKO率がどこから伸びたかっていうのを見てもらえれば分かると思いますし、練習の仕方もそれぐらいから全然変わりました。それで結果が出てきているんじゃないかと思います。

 前は5ラウンド持っても倒すまで行けなかったのが、今は5ラウンドやって、どのラウンドで苦しい状態であっても倒せる力が残っているんだと思います。その状態にプラス技術もついてきたというか。


――練習自体も次の段階に入っていて、それが昨年の結果に結びついていたのですね。そして今年の第1戦はいきなりタイの現役王者ヨードレックペット選手というすごい相手が用意されました。


 今年の2試合目か3試合目ぐらいで来るかなと思っていたのが、いきなりだったのでビックリしました(苦笑)。ただ勝つ自信というのは分からないですけど、やっぱり格闘家なので、勝てる相手より「勝てないだろう」と言われるような相手を倒したいです。登山家もすごい山を登りたがるじゃないですか? 高尾山とかは別に当たり前ですし(笑)。でも、エベレストを登ったらスゴいってなるし、感動しますよね。それをやりたいです。勝てる相手っていうのは僕は高尾山だと思っています。たとえ「勝てないだろう」と思われても、それを倒せる選手でいたいです。


――先ほどのお話にあったように、今回のような強敵であっても5ラウンドを通じていつでも倒せる力が今はあると?


 勝てるかは分からないですけど戦えるし、戦えない相手じゃないというか。どこまで通用するのか、強いものに挑む、打倒ムエタイがキックボクシングの歴史だと思います。

怖くても戦えるための練習を積む

ゴングが鳴ってから自分を信じるために、練習に打ち込んでいく
ゴングが鳴ってから自分を信じるために、練習に打ち込んでいく【写真:チナスキー】

――そんな標的となるヨードレックペット選手の印象はいかがでしょうか。


 頑丈そうで気持ちも強いし、怖いですね(苦笑)。どんどん前に詰めてきて蹴りも強そうだし、あとは中間距離でもヒジを狙える距離を作るのが、ヒジを打てる空間にするのが上手いなと思います。


――では、今はそのヨードレックペット選手の対策に膨大な反復練習をへて、より技術的、戦略的な練習に入っている?


 膨大とはあまり思わないし、もう動いてないと怖いんです。それぐらいやらないと不安で。


――練習することでその怖さ、不安を試合までに取り除いていくと?


 いえ、怖さは絶対に取れないのですが、ゴングが鳴った時に動けるかどうかなんです。怖さはあっていいのですが、自分を信じられないと動けない。不安があると「これを打ったらどうなるのかな」とか、手数が出ないですし。今はスタミナも含め、ゴングが鳴って怖くても行けるという練習をしています。

世界一の相手を倒して勝って感動を与えたい

“世界一”の相手を前に、「一瞬でもいいからその地位にいる選手に勝ちたい」と意欲を燃やす
“世界一”の相手を前に、「一瞬でもいいからその地位にいる選手に勝ちたい」と意欲を燃やす【写真:中原義史】

――では、逆に今までの試合でそうやって半信半疑のままやってしまった試合というのはありましたか?


 しょぼい試合をした時は大体そうで、練習中も半信半疑になってしまうので中途半端なんです。だからやっていて疲れも残るし、意味のない練習をやってしまって当日疲れて動けないとか。いろいろ自分を疑うとそうなってしまうんです。


――練習は技術や体力を向上させていくこともありますが、自分を信じられるように作り上げていく過程でもあるのですね。


 それが集中だし、イメージというものにも繋がると思います。自分のイメージができていると、相手のイメージもできていると思います。


――では、KNOCK OUTが始まってからはよりその集中、イメージができていると?


 お客さんも増えて見られているというのがあるので、そのプレッシャーもありますけど、それが自分のケツをたたいてくれていると思います。


――今回「ヨードレックペット選手を倒してヒーローになる」といったツイートもありました。


 それがスターだと思うし、倒すしか僕がKNOCK OUTで生き残る道はないと思っています。自分が今、KNOCK OUTの中心にいるとは思っていないし、安心もしていない。1番強い奴がスターでいられる、KNOCK OUTはそれでいいと思ってます。だからその地位を守るために勝てる奴ではなく、強い奴とやりたいんです。「倒せない」と思っている奴を倒せる選手でいて、ヒーロー、スターでいたいです。それが僕の中でカッコいいので。勝てるだろうと思われるような相手とは全然やりたくないです。


――今回の試合に勝てば、森井選手が目指してきた“世界一”と言っていいのではないかと思います。


「一瞬でもいいからその地位にいる選手を倒したい」というのがデビューの時から僕の格闘技人生の中であって、それができたら引退してもいいやと思っています。一瞬でも世界一になれたら、勝ってその後動けなくなっても、死んでも構わないと思っているので、本当に一瞬でもいいから勝ちたいし、勝った証がほしい。心から“世界一”と言いたいです。


――そんな強い思いで臨む一戦へ向け、試合を楽しみにしているファンの方へ最後にメッセージをお願いします。


 今回世界一の相手と戦えるので、挑戦する姿で勇気や希望、倒して勝って感動を与えられたら最高だと思っています。それができるよう頑張りますので期待していてください。

長谷川亮

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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