苦難続きのウクライナ・サッカー界 再建を目指す“英雄”シェフチェンコ
スポンサーの栄枯盛衰がクラブの浮沈に直結
マルロス(左)らが所属するシャフタールはCLで決勝Tに進出した 【写真:ロイター/アフロ】
しかも、現時点でプレミアリーグには、シャフタール・ドネツク、オリンピック・ドネツク、ザリャー・ルガンスクと、ドンバス占領地のクラブが3つもある。これらのクラブはウクライナ各地での疎開生活を余儀なくされており、試合も本来のホームタウンからは遠く離れた場所での開催となるわけで、観客動員が厳しいのも無理はない。
そう考えると、シャフタール・ドネツクが政変後も、毎年プレミアリーグの優勝争いを続け、チャンピオンズリーグ(CL)でも健闘していることは、驚異的としか言いようがない。オーナーの鉄鋼王リナト・アフメトフ氏が、政変で一時期窮地に陥りながらも、しぶとく生き残ったことが、その背景にある。
国内の2大クラブから多数招集
「サウジについての情報は十分にある。同国では監督が代わったが、スタイルはそれほど大きく変わっていない。ミドル、ショートのパスを多用し、ポゼッションがうまい。日本に関しては、サウジとの試合が終わってから、選手に情報を与えることにしたい。これらの試合の結果はランキングに反映されるのできわめて重要であり、われわれはこの2試合を非常に重視している」
シェフチェンコ監督が今回の2試合に向けて招集した25人の所属内訳は、海外組が7人、国内のシャフタール・ドネツクとディナモ・キエフが8人ずつ、ザリャー・ルガンスクが2人となっている。シャフタール勢は主に守備陣、キエフ勢は主に中盤から前線と、国内2大クラブが攻守の主要部分を担っている。逆に言えば、上述のように国内リーグが危機的状況でも、この2大クラブさえ安泰なら、それなりのレベルの代表チームは編成できるとも言える。
日本戦は2枚看板の1枚を欠く
ドルトムントで香川真司とプレーするヤルモレンコ(左)はけがで代表を辞退 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】
ウクライナ代表の問題は、左右の2枚看板以外の力が、だいぶ劣ることである。その結果、ヤルモレンコとコノプリャンカの強引すぎる単独突破が目立ち、またせっかく外で崩しても中で決める人がいないということが起こる。最近シェフチェンコ監督は、トルコのカイセリスポルでプレーするアルテム・クラベツをセンターFW(CF)の軸として起用し、また若手のロマン・ヤレムチュクやアルテム・ベセージンを試しているが、いずれもエースストライカーと呼ぶには物足りない印象だ。なお、ベルギーのヘントで久保裕也の同僚であるヤレムチュクは、今回はけがで招集を見送られた。
シェフチェンコ監督は20日の会見で、「本音を言えば、もっと高いレベルの競争を望みたい。何人かの選手はクラブで満足な出場機会を得られていないが、それでも他のクラブの選手たちよりはレベルが高いので、代表に呼ばざるをえない」と、人材難を嘆いている。
サウジ戦は1−1のドロー
シャルケでプレーする左ウイングのコノプリャンカがキーマンとなる 【写真:ロイター/アフロ】
ヤルモレンコ不在は返す返すも残念だが、ウクライナ代表は、中3日で行われる日本戦にも可能な限りのベストメンバーを組んで、日本代表の課題をあぶり出してほしいものである。