3冠獲得に向け、視界良好のバルセロナ 移籍濃厚のイニエスタは有終の美なるか

欠けていた「手堅さ」を身に付ける

バルベルデ監督の手腕により、バルセロナは欠けていた「手堅さ」を身に付けた 【写真:ロイター/アフロ】

 2人より先に獲得したパウリーニョにも触れるべきだろう。中国リーグから来た彼の活躍は完全なサプライズだった。フィジカルコンタクトと2列目から前線に飛び出すプレーを得意とする彼は、ショートパスと連動性を重視するバルセロナのスタイルにハマるとは思えなかったからだ。それが今ではその貢献度に疑いの余地はなく、与えられたさまざまな役割を確実にこなしている。

 ビルバオ戦においては、セルヒオ・ブスケッツの不在を感じさせなかったことも特筆すべき点だった(14日のCL決勝トーナメント1回戦第2戦のチェルシー戦で負傷し、3週間の離脱を強いられた彼は、ワールドカップ=W杯の招集リストを決める上で重要なスペイン代表の親善試合2試合も欠場することになった)。バルセロナのピボーテは長年ブスケッツが独占してきたポジションだ。W杯を見据えて出場機会を求め、ハビエル・マスチェラーノが中国リーグへ移籍したのもそのためだった。

 しかし、今季はイバン・ラキティッチがブスケッツとともにドブレピボーテ(ダブルボランチ)を組むことが多くなった。ラキティッチは本職のボランチであるブスケッツほど高い守備能力を持っているわけではないが、優れたポジショニングセンスとゲームを読む目を駆使し、新たな役割を高いレベルでこなしている。

 今季のバルセロナは常に輝かしいプレーを見せてきたわけではない。それでも彼らはエルネスト・バルベルデ監督の手腕により、前任者のルイス・エンリケ時代には欠けていた「手堅さ」を身に付けた。

イニエスタはシャビと同じ形でキャリアを締めくくれるか

イニエスタ(右)はシャビ(左)と同じ形で今季を締めくくることができるだろうか 【写真:ムツ・カワモリ/アフロ】

 リオネル・メッシは直接FKによる得点力にさらなる磨きをかけ、チーム全体を動かすプレーメーカーの役割も果たすようになった。ジョルディ・アルバはネイマールの抜けた左サイドで攻撃センスをいかんなく発揮し、すでに2桁のアシストを記録。シーズン序盤は動きの重かったルイス・スアレスも驚異の得点力を取り戻した。

 現在のチームには、特に中盤から前線にかけて他クラブが羨むほど質の高いベンチ要員がそろっている。ほぼ全てのポジションにベストコンディションのバックアッパーを擁することなど、近年のバルセロナにはなかったことだ。

 ラ・リーガでは9節を残して2位のアトレティコ・マドリーに勝ち点11差をつけ、国王杯はセビージャとの決勝を残すのみとなった。さらには幸運も味方し、CLの準々決勝では戦力的に劣るローマと対戦することが決まった。

 時に15年当時を彷彿(ほうふつ)とさせるパフォーマンスを発揮しつつ、3つのコンペティション全てでタイトル争いができる好位置につけている現状において、3冠獲得の可能性は確実に高まっていると言っていいだろう。

 そうなれば、今季がバルセロナでのラストシーズンとなるかもしれないイニエスタにとって、輝かしいサイクルを最高の成績で、それも数々の記憶に残る試合や甘美なプレーを共にしてきたシャビと同じ形で締めくくることになる。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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