トロロッソ・ホンダの1年目を占う 新チームに感じるポテンシャル

田口浩次

ドライバーはガスリーとハートレー

トロロッソホンダのドライバーはガスリー(左)とハートレーが務める 【写真:ロイター/アフロ】

 では、ドライバーはどうだろう? 今シーズンのトロロッソ・ホンダは、ピエール・ガスリーとブレンドン・ハートレーを起用。ガスリーは16年のGP2シリーズ王者で、17年は日本のスーパーフォーミュラでホンダのワークスチームと言えるレッドブルカラーのチーム無限と契約。2勝を挙げてチャンピオンシップ2位を獲得した。F1でも不調だったダニール・クビアトの代わりとしてトロロッソからスポット参戦し、18年はついにレギュラーシートを獲得した実力者。

 そしてブレンドン・ハートレーは、もともとレッドブルの育成ドライバーとして、08年にはトロロッソのテストドライバーに選ばれるなど、エリートコースだったが、なかなかシートが空かないレッドブル/トロロッソの当時の状況に育成ドライバー契約を解消。12年にメルセデスF1チームのテストドライバーになるなど、当時からF1ドライバーとしての才能は見せていたものの、シート獲得までは至らず、活動の場をル・マン24時間レースなどのスポーツカーレースに移していった。そして、14年からポルシェワークスと契約して活躍。17年にはついにル・マン24時間レースも制覇して、その名を世界に轟かせた。このル・マンでの勝利が大きなきっかけとなり、トロロッソからF1スポット参戦のチャンスを得て、そのまま18年シーズン契約にまでこぎつけた。

両ドライバーが各コースへどう適応するか

 実際のところ、ドライバーの評価はどうなのだろう。ピエール・ガスリーについては、昨シーズン所属したチーム無限のスタッフにスーパーフォーミュラでの印象を聞いた。すると、「とにかく速いですね。あと、頭が良くていろいろ覚えるのも早い」とのこと。現代のF1では頭の良さも重要なポイントだ。そして何よりチーム無限に所属していたことで、ホンダスタッフとの人脈がすでに築かれている。日本人エンジニアのキャラクターに慣れていることは、大きなアドバンテージとなる。

 そしてブレンドン・ハートレー。彼はトロロッソやレッドブルのテストドライバー時代にサーキットなどで会っているが、当時はとにかく鼻っ柱が強い印象だった。良く言えば自信に満ちあふれ、悪く言えば態度が大きかった。しかし、ここ数年、ル・マン24時間レースで話しかけたときの彼は印象が違った。精神的に大人になり、ワークスドライバーとして求められるメディアへの対応などが、とても丁寧になっていた。もともと速さでは定評があったので、この精神的な成長が、トロロッソのスタッフにも高く評価されたポイントに違いない。

 ふたりのドライバーは、まだまだF1でのレース経験が少なく、ほぼルーキードライバーに近いが、ガスリーがホンダエンジニアとの親和性、そしてハートレーがワークスドライバーとしての振る舞いと、トロロッソに加入してもすぐに対応できるポテンシャルを持っている。あとは、短いグランプリウィーク中に各コースへどう順応できるかが、今季のトロロッソ・ホンダの命運を分けることになるだろう。

 正直なところ、過去3年間裏切られてきた多くのホンダファンにとって、まだまだ今年のトロロッソ・ホンダにも懐疑的な見方をしている人は多いはずだ。もちろん、期待はするが、正直、優勝を狙えるチームかと言われればそれも厳しい。8日間のテストを見る限り、メルセデス、フェラーリ、レッドブルというトップ3と、それ以下のチームは今季も明らかに別格だからだ。

 しかし、今季のトロロッソ・ホンダには、若々しさと、確実に毎レース入賞を争うだけのポテンシャルは感じられる。昨シーズン、コンストラクターズ4位と活躍したフォース・インディアやアゼルバイジャンGPで表彰台を獲得したウイリアムズと互角以上の戦いができるか、まずはその点に注目して、開幕戦のオーストラリアGPを楽しみたい。

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