フットボールは精神状態に左右される競技 レアルとアトレティコの浮沈に感じること

監督交代の話題は忘れ去られた

PSGとの大一番が近づくにつれ、レアル・マドリーは集中力を高めていった 【写真:ロイター/アフロ】

 パリでのセカンドレグでは相手のエース、ネイマールがけがで欠場したとはいえ、勝負の大勢はサンティアゴ・ベルナベウのファーストレグで決していた。レアル・マドリーは早い段階で先制点を奪われたものの、消極的な選手交代を行った相手とは対照的に、攻撃の駒を続々と投入。結果として終盤に2ゴールを奪い、大きなアドバンテージを手にしている。

 セカンドレグのPSGは戦う前から気持ちで負けていた。最低でも2ゴールが必要な条件でネイマールは不在。レアル・マドリーに1ゴールでも奪われたら実質的に望みはついえる絶望的な展望は現実のものとなり、レアル・マドリーが早々に先制した後半は、ほとんど消化試合に等しい内容となった。

 一方のレアル・マドリーはPSG戦が近づくにつれて集中力を高め、国内リーグでも調子を上げてきた。第28節までを終え、ラ・リーガでは2位のアトレティコ・マドリーに勝ち点7差、4位のバレンシアとは同1差の3位につけているが、5位のセビージャとは同12差あるため、来季のCL出場権獲得を心配する必要もなくなった。

 今やジダンに疑問の目を向ける者はいなくなった。わずか1カ月ちょっと前まで議論されていた監督交代の話題も忘れ去られた。会見場では再び彼のジョークが好意的に受け入れられ、戦術的知識よりも柔軟なグループマネジメントが重視されるようになった。イスコが調子を落としてもそれは本人の問題であり、監督やコーチ・スタッフが責任を問われることはなくなった。

アトレティコにとって、CLの失敗は過去のもの

アトレティコもELというモチベーションを見いだしたとたんに強さを取り戻した 【写真:ロイター/アフロ】

 そんなレアル・マドリーを尻目に、ライバルのアトレティコ・マドリーは着々とラ・リーガで2位の地位を固めている。カンプノウの首位決戦ではバルセロナとの実力差があらわになったものの、それも今季の目標を達成する妨げにはならない。

 ヨーロッパリーグ(EL)ではロコモティフ・モスクワを難なく下して8強入りを決めた。最終的に史上2回目(UEFAカップ時代を除く)のEL優勝を成し遂げ、さらにラ・リーガを2位で終えれば、CLをグループリーグ敗退で終えたシーズンを良い形で締めくくることができる。

 だが、もはやアトレティコの選手たちにとって、CLの失敗は過去のものとなっている。バルダーノが繰り返し主張してきた通り、彼らは新たなモチベーションを見いだしたとたんに従来の強さを取り戻した。

 フットボールとはそういうものなのである。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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