最高峰のスター選手8名を厳選紹介 MLB入門編<その3>

菊田康彦

特大弾で名を馳せたスタントン

約154メートルの特大弾を放ったことがあるスタントン。今年はマーリンズからヤンキースに移籍して、飛ばし屋ジャッジとともにプレーする 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 さて、ここからはバッターに目を向けることにしよう。昨年は史上最多となる6105本塁打が飛び交うなど、ホームランブームに沸いたMLBだが、その中で両リーグ最多の59本塁打を放ったのがマーリンズでプレーしていたジャンカルロ・スタントン(28歳)。16年には504フィート(約154メートル)の特大弾を放ったこともある右の大砲は、昨年はMLBでは16年ぶりとなる60本の大台には1本及ばなかったものの、2度目の本塁打王と初の打点王、そしてナ・リーグMVPにも輝いた。

 ところがそのMVPも、このオフはヤンキースにトレードされた。原因は14年のオフにマーリンズと結んだ、総額では北米スポーツ史上最高額となる3億2500万ドル(約346億円)の13年契約にある。この契約はようやく3年目が終わったばかりで、元ヤンキースのデレク・ジーターら新オーナーグループの下で再出発したチームにとって、重荷になると判断されたのだ。トレードの場合は獲得したチームが契約を引き継ぐため、ヤンキースは向こう10年で総額2億9500万ドル(約314億円)もの年俸を負担することになる。

ヤンキースの飛ばし屋ジャッジ

201センチ、116キロの巨漢ジャッジ。昨年はMLBの新人記録となる52本塁打を放った 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 スタントンが加わったヤンキースにはもう1人、メジャーきっての飛ばし屋がいる。昨年はMLBの新人記録となる52本塁打を放った身長201センチ、体重116キロの巨漢、アーロン・ジャッジ(25歳)だ。

 MLBで新人と言えば、プロ1年目やメジャー1年目だけでなく新人王資格のある選手のことだが、ジャッジもMLBデビュー2年目の昨季は、新人王の資格を残したまま序盤からアーチを量産した。球宴前日のホームラン競争で優勝し、レギュラーシーズンではマーク・マグワイア(アスレチックス)の新人最多本塁打記録を30年ぶりに更新。01年のイチロー以来となる新人王&MVPのダブル受賞の期待もかかったが、新人王には満票で選ばれたものの、MVP投票では次点だった。

身長165センチの安打製造機

身長165センチと小柄ながらパンチ力も兼ね備えるアルテューベ。昨年は2年連続3度目の首位打者とア・リーグMVPでアストロズのワールドシリーズ制覇に貢献した 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 そのジャッジに大差をつけて初のア・リーグMVPに選ばれたのが、昨年は2年連続3度目の首位打者になったアストロズの「小さな巨人」ホセ・アルテューベ(27歳)。ベネズエラ生まれのこの二塁手は、ヒットを打つだけの選手ではない。身長165センチの小柄な体を目いっぱい使ったフルスイングで、ホームランも2年連続で24本をマーク。昨年のポストシーズンでも7本塁打、14打点と長打力を発揮し、球団史上初のワールドシリーズ制覇に大いに貢献した。

 さらにメジャー2年目の12年から6年連続で30盗塁以上を記録し、うち2度の盗塁王と打って良し、走って良し。15年には各ポジションで最も守備の優れた選手に贈られるゴールドグラブ賞も受賞するなど、アストロズのA.J.ヒンチ監督が「パーフェクト・プレーヤー」と呼ぶのはダテではない。

ファンから人気が高いハーパー

派手な言動と激しいプレースタイルでファンの人気も高いハーパー。昨年のオールスターでは両リーグ最多の463万306票を集めた 【写真:USA TODAY Sports/アフロ】

 マーリンズからヤンキースに移籍したスタントンも含め、ここまで取り上げたのはア・リーグのバッターばかりになってしまったが、最後にナ・リーグきっての若きスーパースターを紹介しよう。ナショナルズの外野手、ブライス・ハーパー(25歳)だ。

 とにかく、何もかもが規格外。少年時代は「神童」と呼ばれ、高校時代にはアメリカで最も有名なスポーツ雑誌『スポーツ・イラストレイテッド』の表紙を飾った。その時のコピー「野球界の選ばれし者」に並べられた言葉が、打っては「570フィート(約174メートル)のホームラン」、投げては「96マイル(約154キロ)の速球」、そして当時の年齢の「16歳」。その後、飛び級で短大に進学すると、10年のドラフト全米ナンバーワン指名でナショナルズに入団し、12年には19歳で新人王に輝いた。

 メジャー4年目の15年は自己最多の42本塁打でホームラン王を獲得し、打率3割3分0厘はリーグ2位。この年、満票では史上最年少でナ・リーグMVPを受賞した。派手な言動や激しいプレースタイルでも注目を浴びるハーパーはファンの人気も高く、昨年のオールスターでは両リーグ最多の463万306票を集めている。オリックスの吉田正尚がこのハーパーに憧れて、プロ入り時に同じ背番号「34」を希望したというのは有名な話だ。

 なお、現在のMLBを代表するスーパースターといえば、真っ先に名前が上がりそうなのはエンゼルスのマイク・トラウトだが、大谷のチームメイトである彼の紹介は、また別の機会に譲りたい。

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著者プロフィール

静岡県出身。地方公務員、英会話講師などを経てライターに。メジャーリーグに精通し、2004〜08年はスカパー!MLB中継、16〜17年はスポナビライブMLBに出演。30年を超えるスワローズ・ウォッチャーでもある。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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