決定!“真の”守備の名手2017 初めてのセイバーメトリクス講座(8)
レンジファクターとDER
セ・リーグ三塁手部門のゴールデングラブ賞は宮崎が妥当? 【写真は共同】
カネシゲ:「レンジファクター」ですか。名前は聞いたことありますね。
鳥越:これはある選手がいくつのアウトに関与したかを示すものです。1試合27個のアウトの中で、どれだけその選手が守備によって関与したかを表す指標です。
レンジファクター=(刺殺+補殺)÷守備イニング数×9
鳥越:参考までに17年のRF、三塁手部門を見てみましょう。ここでも宮崎は鳥谷より上なんです。アウトに関与している数だけ見ても。
パ・リーグ
1:ウィーラー(楽天)2.49
2:中村剛也(西武)2.40
3:レアード(日本ハム)2.21
4:松田宣浩(ソフトバンク)2.08
5:小谷野栄一(オリックス)2.02
セ・リーグ
1:宮崎敏郎(DeNA)2.30
2:鳥谷敬(阪神)2.05
カネシゲ:ほんとだ。パはウィーラーがトップですか。これが要するにUZRという“黒船”が出て来る前のセイバー守備指標だったんですね。現在も活用されていますか?
鳥越:いや、これも知らない人が多いかと。プロ野球選手でも「刺殺」と「補殺」の区別がつかない人はいると思います。
カネシゲ:「あの人は知らないかもな」という選手の顔が何人か浮かびます(笑)。
【イラスト:カネシゲタカシ】
DER=(打者−被安打−与四死球−奪三振−失策)÷(打席−被本塁打−与四死球−奪三振)
カネシゲ:DERか……。なんか小室ファミリーみたいですね。ひと言で言うと、どういう指標ですか?
鳥越:チーム全体でグラウンド内に飛んだ打球をアウトにできた割合ですね。標準は「0.7」です。
カネシゲ:「0.3」はヒットになる、と。
鳥越:そうです。以前やったBABIPと逆の考え方ですね。それで2017年のチーム別守備成績を見ると……
ソフトB:7割2分0厘(エラー数38)
西武:7割0分1厘(エラー数88)
楽天:6割9分7厘(エラー数74)
オリックス:6割9分2厘(エラー数78)
日本ハム:6割9分2厘(エラー数86)
ロッテ:6割8分2厘(エラー数89)
広島:6割9分6厘(エラー数71)
阪神:6割7分7厘(エラー数82)
DeNA:6割9分2厘(エラー数66)
巨人:6割9分4厘(エラー数68)
中日:6割9分9厘(エラー数57)
ヤクルト:6割8分3厘(エラー数86)
カネシゲ:ソフトバンクがトップですね。2位は西武、3位は楽天だ。
鳥越:ソフトバンクはエラー数が38と異様に少ないんですよ。それでDERが72%になっています。これパークファクターのときも出ましたが、17年はヤフオクドームの人工芝を貼り替えたんですね。
カネシゲ:ああ、たしか打球が転がりにくくなって守備に好影響が出たとか。今年はDeNAの本拠地・横浜スタジアムも同じものに替えますよね。
鳥越:ロッテのZOZOマリンスタジアムもです。だからDeNAとロッテのこの数値は改善されるはずです。
カネシゲ:ちなみにDERの最下位は?
鳥越:阪神です。さらに今年は大和がいなくなったわけですから。いい加減ピッチャーから文句が出ますよ。ぶつぶつ、ぶつぶつ……。
カネシゲ:阪神は前回のプレートディシプリンで評価が高かったのに、今回は厳しい。阪神に対する上げ下げが激しい連載だ(笑)。
鳥越:ちなみに鳥谷は今季からセカンドへコンバートのようです。心機一転、頑張って欲しいですね。
(※文中のUZR、RF、守備イニングのデータはデータスタジアム社提供)
江戸川大学客員教授。「セイバーメトリクス」の日本での第一人者である。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、統計学をベースに、テレビ番組の監修や、「AKB48選抜じゃんけん大会」の組み合わせ、「AKBペナントレース」の得点換算方法の開発など、エンターテインメント業界でも活躍中。JAPAN MENSA会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。