連載:初めてのセイバーメトリクス講座

決定!“真の”守備の名手2017 初めてのセイバーメトリクス講座(8)

カネシゲタカシ

セイバーメトリクスで見る“真のGG賞”

セ・リーグの新人王、中日・京田も守備の貢献度が高かった 【写真は共同】

カネシゲ:昔は純粋に楽しめたGG賞も、UZRの前では“ツッコミどころ大賞”みたいになっちゃいますね。

鳥越:セイバーメトリクスでちゃんと守備の評価をしてあげて欲しいです。

カネシゲ:それ今回の記事でやりましょう。UZRで“真のGG賞”を表彰するくらいの勢いで(笑)。

鳥越:わかりました。では、まず17年の記者投票によって選ばれたGG賞を改めて見てみましょう。

パ・リーグ
投手:菊池雄星(西武/初受賞)
捕手:甲斐拓也(ソフトバンク/初受賞)
一塁手:銀次(楽天/初受賞)
二塁手:鈴木大地(ロッテ/初受賞)
三塁手:松田宣浩(ソフトバンク/5年連続6度目)
遊撃手:今宮健太(ソフトバンク/5年連続5度目)
外野手:秋山翔吾(西武/3年連続4度目)
外野手:柳田悠岐(ソフトバンク/2年ぶり3度目)
外野手:西川遥輝(日本ハム/初受賞)

セ・リーグ
投手:菅野智之(巨人/2年連続2度目)
捕手:小林誠司(巨人/初受賞)
一塁手:ロペス(DeNA/2年連続3度目) 
二塁手:菊池涼介(広島/5年連続5度目) 
三塁手:鳥谷敬(阪神/初)※遊撃手で過去4度受賞 
遊撃手:坂本勇人(巨人/2年連続2度目)
外野手:丸佳浩(広島/5年連続5度目) 
外野手:鈴木誠也(広島/2年連続2度目)
外野手:桑原将志(DeNA/初受賞)

鳥越:順番に見ていきましょうか。一塁手部門の銀次とロペスは順当です。

一塁手UZR
パ・リーグ
1:銀次(楽天)2.9
2:中田翔(日本ハム)−2.0


セ・リーグ
1:ロペス(DeNA)7.6
2:阿部慎之助(巨人)−4.3


カネシゲ:そもそも有資格者も少ないんですね。

鳥越:つぎは二塁手部門。パは浅村栄斗(西武)のほうがUZRでみると上です。セは菊池涼介(広島)で順当。

二塁手UZR
パ・リーグ
1:浅村栄斗(西武)−3.1
2:鈴木大地(ロッテ)−8.6


セ・リーグ
1:菊池涼介(広島)3.0
2:山田哲人(ヤクルト)−0.4
3:上本博紀(阪神)−5.7


カネシゲ:本当だ、結構しっかり浅村選手の方が上ですね……。セは名手・菊池のUZRがそれほど高くないのが意外でした。みんなうまいから、全体の平均が高いってことかな?

鳥越:そういうことですね。そして三塁手部門。セは先ほど紹介した通りなので、パを見てみましょう。

三塁手UZR
パ・リーグ
1:中村剛也(西武)5.6
2:松田宣浩(ソフトバンク)1.0
3:ウィーラー(楽天)−0.5
4:レアード(日本ハム)−6.7
5:小谷野栄一(オリックス)−8.9


カネシゲ:GG賞は松田宣浩が取っていますが、UZRは「おかわりくん」こと中村剛也の方が上なんですね。

鳥越:ただ、守備イニング数がぜんぜん違います(松田が1267回1/3、中村が921回2/3)。そこを重視すれば、松田でも妥当でしょう。

カネシゲ:では守備の華、遊撃手部門は?

鳥越:これはちょっと物申したい。ショートはセが坂本勇人(巨人)、パは今宮健太(ソフトバンク)がGG賞でした。坂本も確かにいいです。でも実は、京田陽太(中日)の方がUZRでは上だったんです。

遊撃手UZR
セ・リーグ
1:京田陽太(中日)14.4
2:坂本勇人(巨人)13.2
3:田中広輔(広島)−1.6
4:倉本寿彦(DeNA)−16.0


カネシゲ:おお、新人王の京田がここで!

鳥越:僅差なので坂本でもおかしくないんですけどね。で、それ以上に物申したいのはパ・リーグです。ここは源田壮亮(西武)をぜひ評価してほしかった。なんと「21.6」です。

パ・リーグ
1:源田壮亮(西武)21.6
2:安達了一(オリックス)7.0
3:今宮健太(ソフトバンク)2.7


カネシゲ:こっちの新人王もすごい!
 
鳥越:比べることはナンセンスですが、12球団全選手・全守備の中でも源田の「21.6」は去年のナンバーワンです。

カネシゲ:守備でもっとも貢献した野手だと言えますね。

鳥越:それが源田です。

カネシゲ:たまらん。

鳥越:参考までに遊撃手部門はUZRの内訳も見てみましょう。

パ・リーグ
1:源田壮亮 UZR21.6(守備範囲20.6、失策−2.8、併殺3.8)
2:安達了一 UZR7.0(守備範囲3.4、失策3.4、併殺0.3)
3:今宮健太 UZR2.7(守備範囲−3.2、失策5.0、併殺0.8)

セ・リーグ
1:京田陽太 UZR14.4(守備範囲14.2、失策0.2、併殺0.1)
2:坂本勇人 UZR13.2(守備範囲9.0、失策3.0、併殺1.2)
3:田中広輔 UZR−1.6(守備範囲−1.0、失策−0.3、併殺−0.3)
4:倉本寿彦 UZR−16.0(守備範囲−13.1、失策0.0、併殺−3.0)

※小数点以下の数値の関係で合計が一致しない場合があります。

カネシゲ:源田も京田も守備範囲が抜群に広いんですね。とりあえず今宮のGG賞受賞は、疑問符が付きます。

鳥越:あと安達了一はもっと評価されるべきショートだと思います。ただ今年は源田が良すぎた。安達のUZR7.0は、源田がいなければもっと高くなっていたでしょう。

カネシゲ:ていうか……DeNAの倉本は「−16.0」ですか。

鳥越:守備範囲の狭さが影響してますね。

カネシゲ:ここに阪神から守備の名手・大和が入るわけですから。ラミレス監督の采配に注目ですね。

真の外野手部門ナンバーワンは?

鳥越:外野もポジションごとに出しましょうか。左翼手部門はご覧のとおりです。

左翼手UZR
パ・リーグ
1:中村晃(ソフトバンク)−1.7
2:T−岡田(オリックス)−11.3


セ・リーグ
1:筒香嘉智(DeNA)−0.8
2:バレンティン(ヤクルト)−3.0


カネシゲ:全員マイナス指標。レフトは打力優先のポジションってことがUZRからもわかりますね。

鳥越:つぎは中堅手部門をみてみましょう。

中堅手UZR
パ・リーグ
1:西川遥輝(日本ハム)10.5
2:駿太(オリックス)8.1
3:秋山翔吾(西武)3.9
4:島内宏明(楽天)−4.6
5:柳田悠岐(ソフトバンク−6.0


セ・リーグ
1:桑原将志(DeNA)13.9
2:丸佳浩(広島)6.2
3:大島洋平(中日)−4.9


鳥越:セは桑原将志がナンバーワン。次点の丸佳浩も含め、GG賞は順当です。引っかかるのはパ・リーグ。柳田悠岐のGG賞受賞です。西川遥輝と秋山翔吾は順当ですが、柳田はイメージで選ばれたとしか……。バッターとして優秀だったから、盗塁もできるし、足も早いだろうというイメージ。

カネシゲ:トリプルスリーを取ったこともある選手とはいえ、守備は別物ですもんね。(後藤)駿太をもっと評価してあげてほしいですね。オリックスはそういう選手が多いな。

鳥越:そして右翼手部門。

右翼手UZR
パ・リーグ
1:上林誠知(ソフトバンク)3.7
2:木村文紀(西武)1.3

セ・リーグ
1:鈴木誠也(広島)9.3
2:梶谷隆幸(DeNA)2.8
3:長野久義(巨人)−7.7


カネシゲ:鈴木誠也のGG賞は文句なしですね。

鳥越:右翼手でトップですからね。外野についてまとめると、セのGG賞(丸、鈴木、桑原)は順当。パも秋山と西川は順当ですが、柳田に疑問符がつきます。しかしセンターは名手の激戦区。柳田もレフトに行けば、プラスになる可能性はあるでしょう。

カネシゲ:将来的にはありそうですね。 

鳥越:最後に捕手部門を見てみましょう。UZRに盗塁阻止と、捕逸阻止による得点貢献を加算して算出しています。

パ・リーグ
1:田村龍弘(ロッテ)5.8
2:甲斐拓也(ソフトバンク)3.3
3:伊藤光(オリックス)2.8
4:高谷裕亮(ソフトバンク)0.4
5:炭谷銀仁朗(西武)0.1

セ・リーグ
1:小林誠司(巨人)5.9
2:中村悠平(ヤクルト)4.4
3:戸柱恭孝(DeNA)−0.1
4:松井雅人(中日)−0.6
5:石原慶幸(広島)−1.8


カネシゲ:パのGG賞は甲斐拓也でしたね。田村龍弘と僅差の2位なので順当かな。

鳥越:甲斐は強肩が評価されてのことですね。後半戦はちょっと盗塁阻止率が落ちてしまいましたが、育成からはい上がってこの活躍は立派です。余談ですが、盗塁阻止率でいうと17年は大野奨太(日本ハム)がよく走られました。41回のうち、刺したのは4回、阻止率9分8厘ですから。

カネシゲ:なんと1割未満。中日にFA移籍しましたが……。

鳥越:もっと走られますね。広島などは仕掛けてくるでしょう。

カネシゲ:セはGG賞を取った小林誠司がトップで、中村悠平が2位。この2選手が抜けていますね。ところで捕手のUZRでインサイドワークは、評価に入らないですよね?

鳥越:入らないです。でも人によってはインサイドワークも守備力の一部とみなす人もいるでしょう。

カネシゲ:GG賞の投票ではそのへんが曖昧そう……。しかしUZR、面白いですね。このデータは選手も把握しているものですか?

鳥越:いいえ。知っている人は知っているでしょうが、まだまだ。監督やコーチですら知らない人はいると思います。

カネシゲ:なんと……。

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著者プロフィール

1975年生まれの漫画家・コラムニスト。大阪府出身。『週刊少年ジャンプ』(集英社)にてデビュー。現在は『週刊アサヒ芸能』(徳間書店)等に連載を持つほか、テレビ・ラジオ・トークイベントに出演するなど活動範囲を拡大中。元よしもと芸人。著書・共著は『みんなの あるあるプロ野球』(講談社)、『野球大喜利 ザ・グレート』(徳間書店)、『ベイスたん』(KADOKAWA)など。

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