予想外だったドイツ勢3人の協力体制 荻原健司氏が複合ラージヒルを解説
ノルディック複合個人ラージヒルで、今大会2つ目のメダル獲得を狙った渡部暁斗だったが、5位に終わった 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】
渡部暁は前半のジャンプで134.0メートルを飛び、全体トップとなる138.9点をマーク。2位のヤールマグヌス・リーベル(ノルウェー)とは1秒差となったが、ノーマルヒル金メダリストのフレンツェルとは24秒差をつけて、後半のクロスカントリーに臨んだ。
クロスカントリーでは前半から積極的に先頭を走るが、後ろから集団走で追ってきたドイツ勢3人に吸収されると、残り1キロ付近の混戦でスキー板が接触するアクシデントで減速。そのまま集団から離され、表彰台も逃す結果となった。
今回の戦いについて、1992年アルベールビル五輪、94年リレハンメル五輪の団体メンバーとして金メダルを獲得、ワールドカップ(W杯)では3シーズン連続個人総合1位の偉業を達成し、今回はノルディック複合競技の放送解説を務めている荻原健司さんに話を聞いた。
ジャンプの出来は素晴らしかった
前半首位に立ったジャンプは「ばっちりだった」と、荻原健司さんは話す 【写真:松尾/アフロスポーツ】
残念ながらメダルを獲得することができませんでした。「ドイツ勢に完敗した」と本人も思っていると思います。
――試合を振り返りますと、前半のジャンプではトップにつけることができました。ジャンプ内容はどうだったのでしょうか?
ジャンプそのものはとても素晴らしい出来でした。ライバル選手たちが強めの向かい風で飛んだ中、渡部選手の向かい風は緩かったです。ジャンプは向かい風が強い方が遠くに飛べますので、そういう状況の中で134メートルはとても良いジャンプでした。ノーマルヒルの時は、飛び出しの動作で前方向に強めに出てしまうミスがありましたが、その反省をきちんと踏まえて、今回のラージヒルではできていました。飛び出しの強さ、方向は、ばっちりだったと思います。
――ジャンプの結果として、2位のヤールマグヌス・リーベル選手(ノルウェー)とは1秒差、クロスカントリーの強いドイツ選手、フレンツェル選手とは24秒差がつきました。この差というのは渡部選手にとっては?
私はこの競技が始まる前、多方面で「ジャンプで20秒以上のリードができれば、優勝の可能性が高い」と話していました。それは、現在の渡部選手の力からすれば、当然だと思っていたからです。このジャンプでフレンツェル選手に24秒差をつけて、この形は後半に向けて、メダルを狙うには良い結果だったと思います。
ですが、予想外のことが起きました。フレンツェル選手が4位、ヨハネス・ルゼック選手が5位、ファビアン・リースレ選手が6位と、ドイツ3人衆が24秒から34秒の間で固まりました。この3人が協力し合い、風除けをしながら引っ張り合うことで渡部選手を追いかける形になりました。それが予想外でした。