予想外だったドイツ勢3人の協力体制 荻原健司氏が複合ラージヒルを解説

構成:スポーツナビ

守りに入らず最後まで攻めた渡部暁

ドイツの3選手は表彰台独占を狙い、協力して渡部を追ってきた 【写真:ロイター/アフロ】

――クロスカントリーに臨むに当たり、ドイツ勢3人が固まったことがその後の展開を大きく変えたと?

 そうですね。やはりドイツ勢が3人並ぶということは、みんなで協力して渡部選手を追い上げることで金・銀・銅の可能性も見えてくると。とにかく3人でしっかり協力しようという結束が見られたレースでした。それに対して渡部選手は、ジャンプで2番手に入ったノルウェーのリーベル選手が前に出てこないため、ずっと引っ張る形になりました。やはりこれはとても辛い展開でしたね。

――渡部選手としても後ろからドイツ勢が追ってくると考え、ハイペースで入った印象でした。

 渡部選手としては出だしで自分の勢いの良さを後続のドイツ勢にアピールしたかったのだと思います。(1.7キロ地点にある)最初のチェックポイントでは、(ドイツ勢先頭のフレンツェルと)2秒引き離して26秒差がつきました。それを受けて、ドイツ勢がどう思うか。銀メダル争いに切り替えるか、それとも渡部選手を追うのかと。この駆け引きをしたはずです。

 ただ次のチェックポイント(2.5キロ)に来た時には差が詰まっていました。それを見て、「ドイツ勢は強い」と考え、若干ペースを落として後続に吸収されるという切り替えをしました。

――吸収されてからも積極的に先頭を引っ張っていましたが、渡部選手にとって不運だったのは、残り1キロ付近でスキー板の接触で重なってしまい減速がありました。あのアクシデントは避けられたのでしょうか?

 アクシデントはありましたが、仮になかったとしても、結果的には順位に影響がなかったと思います。今日の滑りは1人で先頭を走って、レースを引っ張っていく。ノルウェーのリーベル選手の背中につくことなく、渡部選手が守りに入らず積極的に戦った結果かなと思います。

――今回の5位という結果は、渡部選手のミスがあったというよりも、ドイツ勢の強さが上回ったと?

 結果からすれば、渡部選手の力が足りなかったとも言えます。ただ、現在W杯ランキング総合1位の渡部選手に対して、今日のレース展開はドイツ勢が3人で結束して追い上げ、いわば1対3の戦いに持ち込まれてしまった。これが結果の別れ道だったと考えます。

団体戦では銅メダル争いに食い込めるか

ジャンプで良い位置につけ、クロスカントリーで粘ることが、団体でメダルを取るための鍵となる 【写真は共同】

――これで個人2戦を終え、次は団体戦となります。日本チームがメダル争いに絡むためには何が重要になるでしょうか?

 団体の結果としては、やはりドイツが金メダルを取るのが確実でしょう。2番手にはノルウェーが入ってくると思います。

 そして銅メダル争いなのですが、ここにはいくつかの国が並ぶと思っていまして、その1つが日本。もう1つはオーストリア、あるいはフランスといった3カ国が銅メダル争いを繰り広げると予想します。

――メダル争いで日本が有利に試合を進めるために必要なことは何でしょうか?

 やはり前半のジャンプが鍵ですね。今日のジャンプの結果を見ますと、渡部選手が首位、8位に山元選手、13位に永井選手、20位に渡部善斗選手と、比較的に日本選手は上位につけました。彼らがきちんと団体戦でもジャンプを飛べば、良い位置で後半を迎えることができると思います。良い位置というのは、首位という意味ではなく、2番手3番手あたりになるかと思います。

 オーストリア、フランスといったチームは走力がありますから、前半のジャンプでリードを奪っておくことが大事です。それができれば銅メダルの可能性も出てくる。(メダル獲得の)鍵はジャンプにあると思います。

2/2ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント