カーリング「楽しく」「攻めて」健闘 男女の相乗効果で狙うは五輪表彰台

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絶好のスタートを切れた要因

予選ラウンド3連勝と好スタートを切ったカーリング女子代表のLS北見(左から吉田夕、吉田知、鈴木、藤沢) 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 平昌五輪のカーリング男女予選ラウンドが14日から始まった。1998年長野五輪以来の男女そろっての出場となる日本は、女子が3連勝と好調な滑り出し。男子も初戦で世界ランク3位のノルウェーから金星(6−4)を奪うなど、健闘を見せている。

 女子日本代表は2016年の世界選手権で2位に輝いたLS北見(世界ランク6位)だ。メンバー全員が北海道北見市の出身で、トリノとバンクーバーの2大会に出場した本橋麻里や、ソチ大会代表の吉田知那美といった五輪経験者を擁する。その二人がけん引するチームは、初戦の米国戦(世界ランク7位)を10−5と圧勝。前半の第5エンドまでで8−1とリードし、その後追い上げられたものの、5点をリードした第9エンド終了時点で米国がコンシード(相手の勝ちを認める)したため、白星発進を飾った。

 翌日の午前中に行われた第2戦でもデンマーク(世界ランク9位)に8−5と逆転勝ち。同日夜の地元・韓国戦でも、「テーハミング」の大合唱の中、7−5と2試合連続逆転で制した。

 絶好のスタートを切れた要因は「情報収集力」と「楽しむこと」にある。初戦の米国戦で後半に追い上げられたのは、刻一刻と変わる氷の状況に「アジャストできなかったから」(吉田夕梨花)。しかし、第2戦のデンマーク戦では朝からの試合にもかかわらず、選手同士でコミュニケーションを図りながら「試合が進むにつれて情報がまとまってきた」(本橋)という。韓国戦も同様で「(他の国の選手と)石やシート(氷のエリア)の状態をシェアをしていたから、アウェーの環境も気にならなかった」と本橋は語る。

 また本橋と吉田知以外は五輪初出場だが、その大舞台で皆が笑顔で試合に臨んでいる。米国戦後に吉田夕は「良い集中力でしたし、リラックスしながらこの場を楽しんでいる感じでした」と振り返り、控えに回っている本橋も「今までの大会で一番コーチボックスで落ち着いて見られました」と目を細めた。地元の大歓声を受けた韓国戦でも、選手たちはのまれるどころか、むしろ「失敗して『イエーイ』と観客に言われたことがあまりなかったので、逆にすがすがしかった。もう絶対に失敗しないぞと思った」と吉田知が負けん気の強さを見せたように、「会場が大盛り上がりで楽しかった」と全員が声をそろえていた。

標榜する「攻撃的なカーリング」とは

SC軽井沢の魅力は「攻撃的なカーリング」だ(左から両角公、両角友、山口) 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 一方、男子は長野五輪以来となる出場で、日本代表として戦うのは、16年の世界選手権で4位に入ったSC軽井沢クラブ(世界ランク8位)だ。スキップの両角友佑を中心に「攻撃的なカーリング」で表彰台入りを目指している。

 その攻撃的なカーリングを早速示したのが、初戦のノルウェー戦。3−3で迎えた第7エンドに、ハウス内にある相手の2つのストーンを同時にはじき出すダブルテイクアウトを決めて2点を追加した。それは日本が狙っていた形そのものだった。両角友はチームが狙う作戦について、こう説明する。

「相手の石にうまく自分たちの石もくっつけていき、そこにドンと石が当たったら、相手の石だけ出ていくような形を作っていく。そのためには、いざというときにたまっている石を一気に出せるパワーが必要になります。そのようなショットを、僕たちのチームは日本の中でも早い段階で挑戦してきました。成功率としては決まりにくい難しいショットになるのですが、リスクを負いながら点数をたくさん狙っていく作戦をとっています」

 こうした狙いがはまり、世界ランク3位の相手から金星を挙げた。だが、翌日の英国(世界ランク6位)戦では序盤からショットが思うように決まらず、リードを許す展開が続く。最後は同点の状態から第10エンドに1点を奪われ、5−6で敗戦。1勝1敗で世界ランク5位のスイスとの第3戦を迎える。

 もっとも選手たちはこの結果に手応えを感じている。両角友の弟・両角公佑は「最初は0勝2敗もあると思っていたので、1勝1敗は悪くないんじゃないかと思います。それぞれが(ショットを)もう1本、2本決めていければ、余裕のある戦いができる」と語れば、セカンドの山口剛史も「中盤以降のペースを最初から出せれば、この先も良い試合はできる」と力を込めていた。

男女ともに出場するメリット

男女アベックの活躍でカーリングの人気をさらに高めたい(左から両角公、山口、清水、両角友) 【写真:エンリコ/アフロスポーツ】

 日本においてカーリングは、その緻密な戦略性や、必死に戦う選手たちのキャラクターもあり、冬季五輪では必ず注目を浴びる競技となっている。これまでは正式種目となった長野五輪以降、6回連続出場を果たしている女子が人気を支えてきたが、今大会は男子も参戦。序盤戦から男女ともに熱い戦いを繰り広げている。

 両角友は、平昌五輪を「1つのチャンス」として捉えている。

「男子と女子が一緒に出る五輪は長野大会に続いて2回目ですが、女子の試合を見ていた人たちが、男子も見てみようかなと思ってもらえるチャンスだと思います。今まで世界選手権や日本選手権などはテレビで放送されていたのですが、それだとカーリングを見たい人しか見てくれない。でも五輪はとりあえず見てくれる。目に触れる機会もすごく多いので、カーリングに興味がなかった人に見てもらえるチャンスだと思います。うちの作戦は見る人も楽しいカーリングになっていると思うので、自分たちらしさをしっかり五輪でも出せたら面白くなるのではないかと思っています」

 その言葉どおり、ノルウェー戦は「攻めて」大きな勝利を勝ち取った。そして敗れた英国戦後にも両角友はこう語った。

「自分たちのやりたいカーリングをやらなければ勝てないと分かっているので、たとえばちょっと怖いからとか、難しいからこのショットを選ばないというつまらないカーリングだけはしないようにしたいと思います」

 一方、本橋も男子と一緒に出場できるメリットを感じている。

「カーリングの認知度は非常に高まってきていますが、今回はさらに男女でアベック出場となります。これまで女子だけの力では足りなかった影響力を、男子と女子で表現できることはとても意味があると思います」

 多くの人に注目してもらうには、試合内容もさることながら結果は必要不可欠。男女ともに違ったアプローチでカーリングの魅力を表現しつつ、「表彰台」という目標を目指している。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)
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