ロシア勢の強さは徹底的なルール理解 小塚崇彦の選手解説<女子編>

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メドベージェワはジャッジの求めも理解している

 世界選手権を2連覇しているメドベージェワ選手は、とにかく高得点を安定して出してきます。彼女の強さは、ジャンプをきっちりと決める安心感や、ジャッジがどういうことを求めているかを理解し、点数を出さざるを得ないような状況を作ってくるところです。手を上げながらジャンプを跳ぶなど、少しでも加点を狙い、それが積み重なることであれだけの得点になる。そういう特徴を持った選手です。

ザギトワは15歳とは思えない難度のプログラムを構成している 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 同じロシアのアリーナ・ザギトワ選手はまだ15歳ながら、(ジャンプを演技後半に集中させる)大変なプログラムをやっています。ロシアの選手すべてに関して言えることなのですが、ルールを徹底的に理解している。選手本人、コーチ陣、周りのスタッフがきちんとルールを解釈して、どうやったら点数が出るのかというのをすごく考えているんじゃないかと思います。それは個人レベルではなく、連盟ともども考えているように感じます。

 昨年の世界選手権で2位に入ったケイトリン・オズモンド選手(カナダ)は、ジャンプの流れや、そこからそのまま次の要素にいく全体的な流れ、最初から最後まで継ぎ目のないつなぎの部分がきれいだと感じています。それこそカロリーナ・コストナー選手(イタリア)と共通する良さです。ただ昨年12月のグランプリ(GP)ファイナルのように、コストナー選手が先に演技してしまうと、同じ系統のスケーターなのでまだコストナーに敵わないという印象は受けました。

人の心を打つコストナー、急激に伸びる米国勢

コストナーの強みは人の心を打つ演技 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 そのコストナー選手は31歳になりますが、ジャンプの難易度を下げてもそれをカバーするだけ技術があります。それは彼女が6.0点満点方式の時代から戦っていることがすごく大きいと思っています。ルールだけではない、人の心を打つ演技ができるからこそ彼女は戦えている。その心を打つものを点数化するとあれだけの点数になる。GPファイナルを見ていても、一人だけ彫刻を見ているような感じでした。それが彼女の強さだと思います。

 米国はブラディ・テネル選手が全米選手権を制し、代表に選ばれました。急に来た感じがすごくありますが、それだけの技術をしっかりと積み重ねてきたのだと思います。米国は意外とそういう選手が多い。これまでも(98年の長野五輪で金メダルを獲得した)タラ・リピンスキーさんや、(02年ソルトレイクシティ五輪で金メダルを獲得した)サラ・ヒューズさんのように、急に伸びて勝っていく。とはいえ技術を積み重ねないことには勝つことができないので、テネル選手も本番でしっかりと自分の滑りができれば、チャンスは出てくると思います。

見事にカムバックした長洲にはバンクーバー以上の演技を期待したい 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 また米国では長洲未来選手も代表に選ばれました。本当にいろいろと苦労をしてきたと思いますが、その中でこれだけ演技を戻してこられたのは、努力のたまものだと思います。ここ何年かはトリプルアクセルをずっと練習していて、やっと形になった。今季が始まる前のオフも挑戦していました。その頑張りがようやく実を結んだと思います。

 長洲選手はもともと天才肌だった。ただ、それだけでは戦っていけないということを身を持って感じたんだと思います。その気持ちが努力する方向にいき、しっかりと五輪の切符をつかんだ。前回のソチ五輪は出場できませんでしたが、その前のバンクーバー五輪で4位になったときのフリーの演技は記憶にも残っているので、ああいう演技を今回のショートとフリーでも見せてもらいたいと思います。

 最後にメダル争いですが、やはりロシア勢は外せない。そこに宮原選手とオズモンド選手が割って入れるかだと思います。3位までにロシア勢が2人、あと1人が違う国の選手という結果になるとみています。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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