地吹雪舞うコースにスノボ鬼塚雅も涙 「風の条件はみな同じ」と言うけれど……

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選手の転倒相次いだスロープスタイル

スノーボード女子スロープスタイルに出場した岩渕麗楽は「風にあおられた」と影響を口にした 【写真は共同】

 超一流選手たちが競うステージとして設計された急斜面のコースを、地吹雪が渦を巻きながら吹き抜ける。平昌五輪で多くのスノーボード競技やフリースタイルスキー競技が行われるフェニックスパークは12日、強風の影響を大きく受けながらの試合となった。

 10時から予定されていたスロープスタイル女子の決勝。前日の予選が強風で中止となったため、2回の試技でメダルが決まる一発勝負の場となったレースは荒れた。風が去るのを待ち1時間15分順延した末に開始するも収まらず、選手たちはコースコンディションに難儀。1回目の試技で転倒なく滑り終える選手が現れるのは、8番手まで待たねばならなかった。

 15年世界選手権で史上最年少優勝、17年は銅メダルとメダルも期待された鬼塚雅(星野リゾート)は、2回の試技でともに転倒し19位。敗因を問われ「自分の実力を出し切れなかった。(理由は)風しかないです」と涙した。

「自然も関係している競技なので仕方ないと言えば仕方ない。でももうちょっと風の影響がないように(コースを)作ってほしかったです。ソチ五輪は年齢制限で出場できず、平昌では風で予選落ち。五輪はあまり好きじゃないな」

巨大コースが影響に拍車

 鬼塚と同じくメダルを期待されながら14位にとどまった岩渕麗楽(キララクエストク)。16歳ながらトップ選手のみが出場できる1月のXゲームズで2位に入り、日本女子として冬季史上最年少メダルも期待されたが、やはり風に苦しんだ。

「各セクションごとで風向きが違って、スタートしてからも風向きが変わるし、このコンディションに合わせ切るのはすごく難しいことでした。特に最後のジャンプは下からの風にあおられて、けっこうキツかったですね」

 風で苦しむのは空中だけではない。ジブセクションのレール上ではバランスが取りづらくなるし、ジャンプ台へ入る前に逆風が吹けばスピードに乗れず、距離にも回転にも影響が出て転倒に直結する。

 その影響をより大きくしているのが平昌五輪のコース特性だ。10日に男子スロープスタイル予選を滑った国武大晃(STANCER)は「いつものW杯とスケールが全然違う」とサイズに驚きを隠さなかった。

 岩渕も苦労を口にした。
「人工雪なので普通の雪より走りづらいという部分もあったと思います。でも一番は風ですね。少しでも向かい風になってしまうと(狙っている着地点に)届くのが厳しいコースで、すごい大変でした」

中止判断が難しい五輪、選手は万全の風対策を

ハーフパイプ女子の松本遥奈は予選3位に入ったものの「風で板が走らなく感じる」と口にした 【写真は共同】

 鬼塚の涙と時を同じくして、スロープスタイルと隣接するコースで行われたハーフパイプ女子の予選でも風の影響は避けられなかった。3位で決勝進出を決めた松本遥奈(クルーズ)は「風で板が走らなく感じる」と語れば、15位で予選落ちとなった18歳の今井胡桃(バートン)は「(16年の試合で)顔を骨折した時もすごく風が吹いていて、今自分のなかで風が一番怖いものなんです」と、精神面への影響を口にした。

 今五輪では10日のジャンプ男子ノーマルヒルでも風のなか競技を決行し、葛西紀明(土屋ホーム)が「こんなの中止でしょう」とボヤいていた。しかし4年に1度の大舞台である五輪は、さまざまな事情から競技の中止を決断しにくい。

 韓国気象庁のWebサイトによれば、平昌郡の2月の平均風速は5.0メートル(1980−2010年の平均)と、今大会の開催地はもともと風の強いエリア。競技が行われるような標高の高い山中では、より強い風が今後も予想される。

 風に苦しんだ選手たちは、最後に「条件はみんな同じなので」と必ず口にするが、4年間必死に重ねた努力の集大成が気まぐれな風に左右され過ぎるのはあまりに気の毒だ。今後出場する選手たちは万全の風対策を施すことが、好記録へのアシストになるかもしれない。

(取材・文:藤田大豪/スポーツナビ)
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