最速130キロ、スケルトンを原宿で体験! メーカーが語るVR×スポーツの可能性

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国内コースがなくなったスケルトン

五輪出場の小口貴子選手。この会場である「スパイラル」は財政難から休止状態となった 【写真:松尾/アフロスポーツ】

 9日に開幕した平昌五輪。15日から予選が始まるスケルトンは、日本がボブスレー、リュージュを含めたそり競技で唯一代表を送り込んでいる種目だ。

 1人用そりに腹ばいで乗り込み頭から滑り出すスケルトンは、最高時速130キロにもなるというスピードが魅力。しかし、もしテレビでスケルトンを見て体験したいと思った人がいても、日本にはほとんど滑ることができる施設がない。しかも国内唯一の国際大会公認コースである長野市の「スパイラル」も、2月5日で製氷を休止している。

 しかし、バーチャルリアリティ(VR)の世界なら、気軽に都内でも体験できる。体験展示が行われているのは東京・原宿にある「Galaxy Showcase」。目前に広がるVR映像に合わせて、そり型のマシンが激しく動き、視覚だけでは得られない没入感を味わえる。スケルトンだけではなくカヤック、マウンテンバイクなどのコンテンツも用意されており、累計で200万人以上が体験したという人気ぶりだ。

見た目以上にスリリングな「VRスケルトン」

原宿の「Galaxy Showcase」では、スリリングなVRスケルトン体験ができる 【スポーツナビ】

 Galaxy端末を付けたら、そり型マシンの上に腹ばいになってスタンバイ。係員の掛け声に合わせて映像がスタートすると、一気に加速していく(ように感じる)。

 コースはバンクーバー五輪でも使用された「ウィスラー・スライディングセンター」で撮影された本格派。かと思えば途中、氷上から亜空間へ飛び出すなどスケルトンという概念を超えた斬新な設計だ。

 滑走中は体を左右に傾けてコース取りをするのだが、そのスピード感から体には自然と力が入る。体験時間はものの数分でも、滑り終わった後は汗をかくほどだ。体験者からは「見た目以上にスリリング」という声があがるという。

競馬はVRとの相性良し?「競技の全容把握できる」

亜空間へ飛び出すなど斬新な映像を楽しめる 【スポーツナビ】

 ここ数年、各方面から大きな注目を集めているVR技術だが、「スポーツをより高い次元に昇華させることができるテクノロジーであると確信を持っています」と語るのはGalaxy広報担当者。なぜスケルトンをVRで再現したのか尋ねると、「なかなか一般の人が実際のコースで体験しにくい競技を、ということで今回採用に至りました」と答えてくれた。

 VRの特徴は360度見わたせるという点。そのためGalaxyは競馬、競輪といった競技のVRコンテンツ化にも魅力を感じていると言う。

「円形のコースやトラックの中心点から360度カメラで撮影すれば、すべてを見わたすことで臨場感が増しつつも競技の全容の把握が可能です」

 また野球やサッカーといったメジャースポーツでも、360度カメラの設置箇所次第では新たな観点からの視聴が可能になると考えられている。実際にGalaxyのお膝元・韓国では野球のベースにカメラを埋め込んで、そこからの360度視聴の実証実験も始まっていると広報担当者は語る。

スポーツ×VRの可能性

独特の世界観を提供するVR。新しいスポーツの楽しみ方が実現する日がくるかもしれない 【画像提供:Galaxy】

 まったく新しい視点でのスポーツ観戦の形を生み出しそうなVR技術。しかし実現には、技術の壁に加えて、人的な壁を乗り越えなければならない。

「360度カメラが選手や審判の行動領域、あるいは競技コースで、“試合または競技中に”設置されることは、あらゆるスポーツにおいてハードルがあります。例えばサッカーや野球であればピッチ内、グラウンド内での試合中における撮影は現状当然禁止されています。アスリート達の妨げにもなりますし、アクシデントが起こるリスクにも繋がるためです。今後、各スポーツ団体に対してそのスポーツの振興にVRが有効であると考えていただけるよう、働きかけていくのも私たちの役割かと考えています」。

 もし各スポーツ団体の許諾を得られれば、あとはテクノロジーの進化次第。すでに動作解析などさまざまな最新テクノロジーがスポーツに導入されているが、VRはより根本を変えるだけの影響力を持つだろう。

「アスリートの方々からすれば、VRを通じて実践に近い体験を繰り返すことができるので技術面の向上やメンタル面の鍛錬に非常に有効であると思います。視聴者やファンの目線で言えば、今までテレビなどで見ていた“部分的なスポーツ視聴”が、カメラの設置方法次第で、あらゆる視点で臨場感を味わえる視聴環境を手にすることが可能になります」

 新しいスポーツの楽しみ方が実現する日は、そう遠くないところまできているのかもしれない。

(取材・文:藤田大豪/スポーツナビ)
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