【ボクシング】“持ってる”比嘉大吾が切り開く道 注目度上がる軽量級でビッグマッチも

船橋真二郎

具志堅会長「チャンピオンが幸せをくれた」

4日のWBC世界フライ級王座戦を1回KOの速攻劇でV2を果たした比嘉(左)と具志堅会長 【船橋真二郎】

 2月4日、沖縄県立武道館で行われたプロボクシングのWBC世界フライ級タイトルマッチは、チャンピオンの比嘉大吾(白井・具志堅スポーツ)が同級9位の挑戦者モイセス・フエンテス(メキシコ)に1ラウンド2分32秒KO勝ち。ミニマム級、ライトフライ級を制した元世界2階級制覇王者を圧巻の速攻劇で退けた。

「昨日の試合を見て、比嘉大吾の強さに沖縄はもちろん、全国のファンが感動して、びっくりしたんじゃないかと思います」

 試合から一夜明け、具志堅用高会長はこうコメントした。だが、期待以上のことを次から次とやってのける愛弟子に最も心震わせ、驚かされているのは、誰より具志堅会長自身なのではないだろうか。

「ホテルに戻って、私も1時間しか寝ていないです。チャンピオンになった時もうれしかったんですけど、また防衛するたびにうれしさがたくさんあるんじゃないかと思いますね。比嘉チャンピオンが、そういう幸せを私にくれたかなと思います」

凱旋試合、連続KO記録…… さまざまなプレッシャーの中での試合

地元沖縄での凱旋試合はさまざまなプレッシャーがかかる中だったが、比嘉はそれを跳ね除けた 【写真は共同】

 故郷・沖縄への凱旋試合。具志堅会長のラストファイト以来、37年ぶりとなる沖縄開催の世界戦。そして、過去3戦あった沖縄での世界戦では具志堅会長を含め、日本人が全員敗れているというジンクス。昨年11月に亡くなった具志堅会長の興南高時代の恩師・金城眞吉氏の追悼。沖縄の偉大な先輩・浜田剛史氏が持つ15連続KOの日本記録に並ぶ一戦。さまざまなプレッシャーの中で迎えた2度目の防衛戦だったが、比嘉は敢えて自分を追い込んだ。

「KOで勝てば、自分は“持ってる”チャンピオン。もっと上にいける。もしKOで勝てなければ、普通のチャンピオン。負ければ、ただの人。明日になれば、分かると思います」

 必ずKOで勝って、特別なチャンピオンになる――。試合前、そう言い続けてきた比嘉は計量後、あらためて決意表明。最高の形で答えを出してみせた。

「倒すと言って、試合に臨んできたんで、やっぱ、カッコいいなと思いましたね」と試合後のリング上では、茶目っ気たっぷりに話したが、「もしKOじゃなかったら、何か言われることも分かっていましたけど、自分にプレッシャーを与えると体が勝手に動いてくれるので。やっぱり言ったほうがいいかなと思って」とは、なかなかできないことである。

「具志堅会長と同じ21歳で世界チャンピオンになる」と言い続け、昨年5月に巡ってきたチャンスを逃さず、21歳9カ月で見事に達成した。10月の初防衛戦では、過去の世界戦で日本人が4戦全敗だったフランス人相手にジンクスを覆した。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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