日本のエース小平奈緒を阻むイ・サンファ 韓国記者「勝つ可能性は25%」と分析

李仁守

韓国が誇る“氷上の女帝”

韓国が誇る“氷上の女帝”イ・サンファ。日本のエース小平奈緒最大のライバルだ 【写真:ロイター/アフロ】

 韓国にとっては、是が非でも勝ちたい戦いだ。2月18日に行われる平昌五輪の女子スピードスケート500メートルで、同国が誇る“氷上の女帝”イ・サンファが日本のエース小平奈緒(相沢病院)と対決する。

 五輪2連覇中のイ・サンファは、国内では絶大な支持を集めるスター選手。それだけに、今回の日韓対決には、韓国メディアやファンも並々ならぬ闘志を燃やしている。現地の報道を追っていても、2人の名を見ない日はないほどだ。

 韓国のスポーツ紙『スポーツ・ソウル』でスケート競技を担当するキム・ヒョンギ記者も、国内の盛り上がりをひしひしと感じている。

「イ・サンファは、看板スターとして長らく注目を集めてきました。平昌五輪でも、もっとも期待されている選手です。小平との対決には国中が関心を寄せていますよ」

 そもそもイ・サンファは、早い時期から500メートルでその才能を発揮してきた。

 小学1年生のときに兄の影響でスケートを始め、フィギョン女子中学時代に韓国代表に選出されると、2005年の世界距離別選手権では中学3年生にして銅メダルを獲得。翌06年のトリノ五輪にも韓国代表として出場して5位に入り、07年にトリノで開かれた冬季ユニバーシアードでは優勝を飾っている。

バンクーバー、ソチと五輪2連覇中

ソチ五輪では500メートルの五輪記録を塗り替えて金メダルを獲得。史上3人目となる五輪2連覇を達成した 【写真:ロイター/アフロ】

 そんな彼女の名を世界に知らしめる決定的なきっかけとなったのは、10年のバンクーバー五輪だった。

 この大会、当時の世界記録保持者であるドイツのジェニー・ウォルフを抑え、500メートルで金メダルを獲得。20歳にして、アジアの女子スピードスケート選手として史上初めて五輪の頂点に立った。

 キム・ヒョンギ記者も、当時のイ・サンファの成長スピードには驚かされたという。

「イ・サンファに実力があることは知られていましたが、それでもバンクーバーではうまくいって銅メダルというのが大方の予想でしたから、本番での爆発力には驚きましたね。もともと才能のある選手でしたが、若い頃からスピードスケートに打ち込んできたからこそ、成長のスピードも早かったのでしょう。実際、あの頃のイ・サンファは、昨日と今日とでは別人のような滑りを見せていました」

 イ・サンファの快進撃はバンクーバー五輪以降も止まらなかった。

 同大会後の2シーズンを強化に当てると、13年1月のワールドカップ(W杯)カルガリー大会では36秒80をマークし、500メートルの世界新記録を樹立。同年11月のソルトレークW杯では36秒36をたたき出して自身が持つ世界記録を更新している。

 さらに、翌14年のソチ五輪では、500メートルの五輪記録を塗り替えて金メダルを獲得し、女子スピードスケート史上3人目となる五輪2連覇を達成している。

 そんな彼女の実力は、世界のトップ選手も認めざるを得なかった。同大会でイ・サンファに敗れ、銀メダルに終わったロシアのオルガ・ファトクーリナも、韓国が生んだ“氷上の女帝”には称賛を惜しまなかった(編注:後にロシアの組織的ドーピングが判明し、17年11月にメダルが剥奪された)。

「イ・サンファの技術は完璧でした。まるで陸上のウサイン・ボルトのように思えました。彼女こそ、女子500メートルのリーダーだ。本当にすごい滑りでした」

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著者プロフィール

1989年12月18日生まれの在日コリアン3世。大学卒業後、出版社勤務を経て、ピッチコミュニケーションズに所属。サッカー、ゴルフ、フィギュアスケートなど韓国のスポーツを幅広くフォローし、『サッカーダイジェストweb』『アジアサッカーキング』『アジアフットボール批評』『女子プロゴルファー 美しさと強さの秘密(TJMOOK)』などに寄稿。ニュースコラムサイト『S−KOREA』の編集にも携わる

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