【RIZIN】「未来を託せる選手が期待以上に活躍」 榊原実行委員長が2017年を振り返る

長谷川亮

世代がうまくスイッチできてきた

堀口や天心といったニューヒーローが出たことで、主軸がうまくスイッチされてきた 【(C) RIZIN FF】

――昨年はおっしゃられたように、旗揚げ当時のエメリヤーエンコ・ヒョードル選手やミルコ選手といった存在から、堀口選手や天心選手、RENA選手といった選手たちへ中心軸が移り変わってきた印象を受けました。

 変わってきましたよね。15年末の時点で日本の格闘技界はメジャー感を失っていたと思います。後楽園ホールやディファ有明といった小規模会場のイベントは絶対必要ですが、格闘技をもっとエンターテインメント、見るものとして成立させないといけないと思っていました。そういうところに過去のK−1やPRIDEはあった訳です。

 ただ15年当時はさいたまスーパーアリーナで2万人近い人たちがスポーツのエンターテインメントショーを楽しむといった空間作りができていなかった。ですので過去にそういうものを作り出していた桜庭選手やヒョードル、ミルコといった選手たちの力を借りて、第一歩を踏み出したわけです。

 そこから1、2年をかけて、そういう選手たちに未来を託していける世代の人たちを絡め、今その若い世代の選手たちが期待通り、いや期待以上の活躍をしてくれています。その結果が大晦日に実を結んだ感じですよね。

 ですから、今ヴァンダレイ・シウバvs.ミルコ・クロコップ戦が見たいかと言うと、これは一昨年のグランプリの時であれば成立したけれど、今このカードをどうしても見たいというわけではないと思います。世の中の人たちは常に新しいもの、次のスーパースター、ヒーローを求めています。堀口選手や天心選手といった、若くて未来や希望をファンに見せてくれる人たちに上手くスイッチできてきたと僕らも感じています。

マネル・ケイプ(左)といった強豪の発掘も、既成概念に捕らわれないからこそできた 【(C) RIZIN FF】

――昨年はほかにもKINGレイナ選手、矢地祐介選手、真珠・野沢オークライヤー選手、藤田大和選手、渡辺華奈選手といった新たな台頭が見られました。

 外国人で言えばマネル・ケイプもいましたよね。人間というのは結局与えられた情報の中で物事を考えたり価値観を計るものですが、UFCのランキングであったり、そういう既成概念とか今まで与えられている情報をリセットして世界に目を向けると、アンゴラにああいうとんでもない選手がいる訳です。私も驚きました(笑)。ですからそういう選手は日本人に限らずどんどん発掘していきたいと思います。RIZINは日本で開催しているので自然と日本人選手の出場機会が多くなりますが、かといって日本人選手をえこひいきする気はありません。世界にまだまだいるみんなの興味を引く逸材を、僕らが目利きしていきたいと思っています。

――PRIDEではグレイシーハンターとなった桜庭選手を誰が倒すのか興味が集まりましたが、現在のRIZINでは昨年1年を通じて堀口選手や天心選手がそういう存在になったのではないかと思います。

 堀口選手は準々決勝(12月29日)のガブリエル・オリベイラと当日10キロぐらいの差がありながら、あれだけ一方的な試合ができてしまう。当時の桜庭選手の首を獲って今のヴァンダレイがあるように、堀口選手や天心選手と絡むことで次の外国人スターが生まれる可能性は十分あるでしょう。だからイリー・プロハースカやマネル・ケイプのような、新しく外国人でポテンシャルのある選手を見つけてきて、1回負けたからといって切り捨てるのではなく、良いものを持っている選手は2回3回と使っていきたいと思っています。結果だけではなく、ファンの心をいかにつかめるのか。その目線で査定し、次代の外国人スターを生み出したいですね。

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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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