高木美帆も舌を巻く小平奈緒の強さ 五輪金メダルへ、その勢いは止まらない

スポーツナビ

同走した高木の武器を封じるレースプラン

女子1000メートルの世界記録保持者・小平奈緒が、圧巻のレース運びで高木美帆の持ち味を封じ、国内最高記録で優勝を飾った 【写真:築田純】

 スピードスケートの平昌五輪代表選考会が28日、長野・エムウェーブで行われ、女子1000メートルでは世界記録保持者の小平奈緒(相沢病院)が、国内最高記録となる1分14秒58をマークし優勝した。

 同走で、今季の世界ランクでも小平に次ぐ2位の高木美帆(日本体育大助手)でさえ、舌を巻く強さだった。この日はこれまでの対戦と異なり、小平がアウト、高木がインスタート。最初の200メートルは小平が17秒88、高木が18秒06で通過する。しかし、その後はスピードに勝る小平が飛ばさなかったことで、高木は途中から「前に出なければという気持ちが強くなってしまった」という。そのため、後半の伸びが持ち味である高木の計算が狂い、「最後の伸びのなさやキレのなさにつながった」のだ。

「スタートして、第1コーナーの出口あたりから、小平選手がもう少し行くかなと思っていたんですけど、意外と近くにいました。200メートルを通過したあたりで、これは(インとアウトで)クロスする前に、前に出なければいけないレースだと感じたんです。自分の感覚でしかないですが、小平選手はそこを調節してきたかなと。ただ、それをできるのが小平選手の強さですし、私もまだまだだなと思っています」(高木)

「今日は一度(高木が)前を滑ってくれたので、良いイメージをもらえました」とレース後に語った小平(右) 【写真:築田純】

 あえて前に出させて、相手の持ち味を封じ、自分の展開に持っていくその冷静さ。これは小平が長年の経験で培ったものであると同時に、世界記録を保持し、500メートルで続ける連勝記録(国内外で24連勝中)によって植えつけられた自信から来るものなのだろう。

「今まで一緒にやってきたレースでは、高木選手を前に見ることができなかった。今日は一度前を滑ってくれたので、良いイメージをもらえました」

 小平は、そう笑みを浮かべながらレースを振り返った。

アクシデントもポジティブにとらえる

レース前には左のスケート靴のバネが折れるというアクシデントもあったが、慎重に確かめながら滑り始めたと話す 【写真:築田純】

 そんな小平だが、レース直前にアクシデントに見舞われた。

 1つ前の組の選手が滑走しているときに、左のスケート靴のバネが折れたのだという。結城匡啓コーチが対処して事なきを得たが「不安はあった」。そのため、バネを再び折らないように慎重にスタートする。だが、心配ないことが分かると徐々に加速していった。そうしたアクシデントがありながらも、気持ちが乱されず勝ち切ったところは、小平の強さをより際立たせる。小平も「今後に向けて良いシミュレーションになった」と、ポジティブな経験としてとらえた。

500メートルに続く二冠となったが、今回のレース内容に関しては満足していない 【写真:築田純】

 今大会はこれで500メートルに続いて2冠を達成。その勢いはとどまることを知らない。とはいえ、今回のレース内容に関しては満足していないようだ。

「ミスは少なかったと思うんですけど、もう少し攻めてもよかったかなと思います。バックストレートは、頭の中の糸を切るような闘争心でいきたかったのですが、そこまでスイッチが入りきりませんでした。もっと動物的に闘争心あふれる感じでやってもいいかなと思っています」(500メートルのレース後)

「目標としていたタイムよりも少し遅かった。(ワールドカップ第1戦の)ヘーレンフェーンや(第2戦の)スタバンゲルではもっと良いタイムで滑れているので、低地のリンクとしてはまだまだかなと思います」(1000メートルのレース後)

 しかし、結城コーチは理解を示す。

「決して良いレースではなかったですし、本人も悔しいと思っていると思いますが、ずっと緊張感の高いレースをさせてきているので、ここで集中しなさいと言っても難しい。今日もアップをほとんどやらせていませんでした。ただ、負けるわけにはいかない状態でしっかり勝ち切った。そういう意味ではよく滑ったなと思います」

 万全ではなくても結果を残すのが真の強さ。連勝を続ける500メートルはもちろん、世界記録を保持する1000メートルでも平昌五輪の本命だ。他国からのマークも厳しい。ただ、その中で勝ってこそ女王にふさわしい。真価を示す舞台はもうすぐやってくる。

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)
  • 前へ
  • 1
  • 次へ

1/1ページ

著者プロフィール

スポーツナビ編集部による執筆・編集・構成の記事。コラムやインタビューなどの深い読み物や、“今知りたい”スポーツの最新情報をお届けします。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント