キタサンブラックに「ありがとう」を――武豊も感慨「騎手冥利。感謝しかない」
史上最多タイGI・7勝、歴代賞金トップに
キタサンブラックが有馬記念を勝利、引退の花道を飾る有終の美を飾った 【写真:中原義史】
キタサンブラックは今回の勝利でJRA通算20戦12勝。JRA・GI勝利はシンボリルドルフ、ディープインパクトらと並び史上最多タイの7勝目。獲得賞金は18億7684万3000円となり、テイエムオペラオーを抜いて歴代1位となった。また、騎乗した武豊は1990年オグリキャップ、2006年ディープインパクトに続く有馬記念3勝目。同馬を管理する清水久詞調教師は同レース初勝利となった。
JRA・GI勝利は最多タイにならぶ7勝目、獲得賞金は歴代トップとなった 【写真:中原義史】
武豊も安堵「本当に勝って良かった」
「まずはホッとした」と安堵の表情を見せた武豊(右)の騎乗に北島三郎オーナーも絶賛の言葉を送った 【写真:中原義史】
キタサンブラックのお別れセレモニー後、検量室前で囲み取材に応じた武豊がホッと一息をついた、その姿が印象的だった。これまで数多くの大舞台に名馬とともに挑み、常人では想像できないほどのプレッシャーと戦ってきた百戦錬磨をして、このような表情にさせるのかと。
もちろん武豊自身、この状況をナーバスに感じていたわけではなく、「このプレッシャーを味わっていました」とポジティブに受け止めていた。プレッシャーと言えばむしろ、表彰式での歌のリクエストを「余計なプレッシャー(笑)」と周囲を笑わせ、「これで解放されましたね」と、いつもの“らしい”冗談とともにキタサンブラックとの2年間を振り返ったわけだが、それでも過去のビッグレース後以上に安堵した表情の天才騎手がそこにいたように思う。
「1メートル、1メートル、丁寧に」
武豊とキタサンブラックの絶妙すぎるペースに後続はなす術なし 【写真:中原義史】
「ゲートが一番緊張しましたね。競馬は本当に何が起きるか分からないですから。楽観するところは1つもなかったです。1メートル、1メートル、丁寧に乗りました」
これまで持続力のあるスピード先行で他馬を封じ込めてきたキタサンブラックだったが、実は唯一とも言える弱点がゲートにあった。それが露見したのが、2走前の天皇賞・秋。ゲートが開く前に扉に突進してしまい、そのままタイミングが合わずに出遅れた。このときは武豊の神懸り的な発想と操縦でリカバリーしたわけだが、いくら内枠と言えども小回り中山コースでの出遅れは致命傷になる。そんな「一番緊張した」ゲートを好発でクリアすると、武豊は敢然とハナを切った。
「スタートが良ければ先手を取りに行こうと思っていました。枠順も良かったですし、先手を取ることもできて、あとはリラックスして走らせることに専念していましたね」
1馬身半差の完勝! 完ぺきなレースで現役ラストランを飾った 【写真:中原義史】