キタサンブラックに「ありがとう」を――武豊も感慨「騎手冥利。感謝しかない」

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史上最多タイGI・7勝、歴代賞金トップに

キタサンブラックが有馬記念を勝利、引退の花道を飾る有終の美を飾った 【写真:中原義史】

 JRA競馬の1年を締めくくるグランプリレース、第62回GI有馬記念がクリスマス・イブの24日、中山競馬場2500メートル芝で開催され、武豊騎乗の1番人気キタサンブラック(牡5=栗東・清水久厩舎、父ブラックタイド)が優勝。好スタートから先手を奪うと、そのまま後続に影を踏ませない逃走劇で引退レースを花道で飾った。良馬場の勝ちタイムは2分33秒6。

 キタサンブラックは今回の勝利でJRA通算20戦12勝。JRA・GI勝利はシンボリルドルフ、ディープインパクトらと並び史上最多タイの7勝目。獲得賞金は18億7684万3000円となり、テイエムオペラオーを抜いて歴代1位となった。また、騎乗した武豊は1990年オグリキャップ、2006年ディープインパクトに続く有馬記念3勝目。同馬を管理する清水久詞調教師は同レース初勝利となった。

JRA・GI勝利は最多タイにならぶ7勝目、獲得賞金は歴代トップとなった 【写真:中原義史】

 なお、1馬身半差の2着にはクリストフ・ルメール騎乗の8番人気クイーンズリング(牝5=栗東・吉村厩舎)、さらにハナ差の3着にはヒュー・ボウマン騎乗の3番人気シュヴァルグラン(牡5=栗東・友道厩舎)が入った。

武豊も安堵「本当に勝って良かった」

「まずはホッとした」と安堵の表情を見せた武豊(右)の騎乗に北島三郎オーナーも絶賛の言葉を送った 【写真:中原義史】

「本当に勝って良かった……改めてそう思いますね。ここまでたくさんのファンの皆さんが残ってくれて、本当に良かったなと。ディープのときとはまた違った感動がありますね」

 キタサンブラックのお別れセレモニー後、検量室前で囲み取材に応じた武豊がホッと一息をついた、その姿が印象的だった。これまで数多くの大舞台に名馬とともに挑み、常人では想像できないほどのプレッシャーと戦ってきた百戦錬磨をして、このような表情にさせるのかと。

 もちろん武豊自身、この状況をナーバスに感じていたわけではなく、「このプレッシャーを味わっていました」とポジティブに受け止めていた。プレッシャーと言えばむしろ、表彰式での歌のリクエストを「余計なプレッシャー(笑)」と周囲を笑わせ、「これで解放されましたね」と、いつもの“らしい”冗談とともにキタサンブラックとの2年間を振り返ったわけだが、それでも過去のビッグレース後以上に安堵した表情の天才騎手がそこにいたように思う。

「1メートル、1メートル、丁寧に」

武豊とキタサンブラックの絶妙すぎるペースに後続はなす術なし 【写真:中原義史】

 キタサンブラック最後の大舞台は、過去2年、あと一歩のところで勝利に届かなかった中山2500メートル芝、グランプリ有馬記念。「春秋通じてグランプリは未勝利」「叩き3走目は未勝利」など、探せば出てくる負のジンクスはあったものの、21日木曜日の枠順抽選では武豊自らの“神引き”で1枠2番の絶好枠をゲット。引退花道へ最高のお膳立てが整った主役を、ファンは単勝1.9倍の断然1番人気に支持した。傍から見れば、勝利は約束されたように感じるかもしれないが、何が起きるか分からないのが競馬の怖さ。武豊が言う。

「ゲートが一番緊張しましたね。競馬は本当に何が起きるか分からないですから。楽観するところは1つもなかったです。1メートル、1メートル、丁寧に乗りました」

 これまで持続力のあるスピード先行で他馬を封じ込めてきたキタサンブラックだったが、実は唯一とも言える弱点がゲートにあった。それが露見したのが、2走前の天皇賞・秋。ゲートが開く前に扉に突進してしまい、そのままタイミングが合わずに出遅れた。このときは武豊の神懸り的な発想と操縦でリカバリーしたわけだが、いくら内枠と言えども小回り中山コースでの出遅れは致命傷になる。そんな「一番緊張した」ゲートを好発でクリアすると、武豊は敢然とハナを切った。

「スタートが良ければ先手を取りに行こうと思っていました。枠順も良かったですし、先手を取ることもできて、あとはリラックスして走らせることに専念していましたね」

1馬身半差の完勝! 完ぺきなレースで現役ラストランを飾った 【写真:中原義史】

 1週目の4コーナーでやや力む場面があったというが、ゴール板を過ぎたあたりからキタサンブラックも落ち着きを取り戻し、人馬一体でラップを刻んでいく。前半1000メートルの通過は61秒6。GIとすれば決して速くはないペースなのだが、1コーナーから2コーナーでいったん13秒台まで落としたペースを、向こう正面から2週目の3コーナーにかけて12秒2、12秒1、11秒7と一気に押し上げていく。その絶妙なラップ配分に、後続はキタサンブラックに鈴をつけに行くどころか身動きすら取れない。そして、とどめとなったのが最後の直線に入ってすぐ。2100メートルから2300メートルにかけての1ハロンを、キタサンブラックは11秒2の脚で突き放した。

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