歴史に残る“クラシコ”は見られない? バルサとレアル、両チームの対照的な現状

クラブW杯を制するも、優勝への道のりは遠いレアル

クラブW杯連覇を達成したレアル・マドリーだが、逆転優勝への道のりは極めて厳しい 【写真:ロイター/アフロ】

 一方、シーズン序盤に取りこぼしを繰り返したレアル・マドリーにとって、土曜のクラシコは逆転優勝の可能性をつなぐための鍵となる一戦だ。直接対決をものにすれば勝ち点差を縮めるだけでなく、同勝ち点で並んだ際に優位に立つことができる。逆に今回のクラシコで勝てなければ、逆転のために必要な勝ち点がもう1ポイント増えるようなものだ。そうでなくともシーズン終盤にはカンプ・ノウでの直接対決も残っており、逆転優勝への道のりが極めて厳しいことは間違いない。

 とはいえ、ラ・リーガが全てではない。レアル・マドリーは16日に4年間で3度目のクラブW杯優勝を成し遂げたばかりだ。監督としてはわずかな経験しか持たないジネディーヌ・ジダンは、スターぞろいのロッカールームを巧みにマネジメントしながら、素晴らしい成功を手にしてきた。

 2年連続で世界王者となったレアル・マドリーだが、その過程は楽なものではなかった。地元アブダビのアル・ジャジーラに敗退の一歩手前まで追い詰められた準決勝では、ほぼ常にゲームを支配しながら相手GKの好守とゴールポストに数々の決定機を阻まれた末、ビデオアシスタントレフェリーの不適切な使い方によりカゼミーロのゴールが取り消される不運まで重なった。

 決勝も簡単な試合ではなかった。後方の守備を固め、厳しい肉弾戦に持ち込んできたグレミオに対し、レアル・マドリーは直接FKによる1ゴールのみで勝利を手にした。大舞台に強いクリスティアーノ・ロナウドが決めた決勝点は、正しく配置されていなかった人壁の不備を生かしたものだった。

 バルセロナと同様に、レアル・マドリーも今季は本来のプレーレベルを取り戻すことができていない。ダニ・カルバハルやセルヒオ・ラモスのけがが続いたことで、ジダンはなかなかベストのDFラインを組むことができなかった。前線ではようやくギャレス・ベイルが復帰したことで、近年多くの成功をもたらしてきた“BBC(ベイル、カリム・ベンゼマ、C・ロナウドの3トップ)”の復活を期待する声が高まっている。

今回のクラシコにおける3つの注目点とは?

ここまで多くのゴールを奪ってきたメッシ。1000ゴール目は生まれるのだろうか 【写真:ロイター/アフロ】

 レアル・マドリーは結果を出せない試合が2、3週間続くだけで、人々の不満が沸点に達してしまうクラブである。今回も例に漏れず、決定力不足が続くベンゼマ、遂にはジダンまでもが厳しい批判の対象となった。クラブW杯優勝により落ち着いたかに見えるその状況も、クラシコで勝てなければ再燃することになるだろう。

 果たしてレアル・マドリーはクラブW杯優勝で得た勢いをクラシコに生かすことができるのか。ジダンがBBCへの回帰を決断するかどうかも気になるところだ。対するバルセロナはパコの欠場により4−4−2で戦う他ない状況にある。

 今回のクラシコについては、さらに3つの注目点がある。1つは入場時にバルセロナの選手たちが花道を作り、クラブW杯を制したレアル・マドリーの選手たちをたたえる「パシージョ」が行われるかどうか。その可能性はすでにギジェルモ・アモールが否定している。

 2つ目の注目点は、カタルーニャ州議会選挙(21日)の直後に行われるこの一戦が持つ政治的な意味合いだ。言うまでもなく、バルセロナはカタルーニャ、レアル・マドリーはスペインを代表するクラブであり、カタルーニャの独立問題をめぐっては両者の利害が対立している。

 3つ目の注目点は、プロになる以前から公式、非公式を合わせてキャリア通算998ゴールを積み重ねてきたメッシだ。彼は最大のライバルチーム、そして長年バロンドールを争ってきたC・ロナウドの眼前でキャリア通算1000ゴール目を決めることになるかもしれない。

 クラシコをめぐるさまざまな話題は、全て土曜にその答えを得ることになる。

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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