吉田麻也が縮めたい「あと一歩」の差 代表クラスが4人、激しさを増す定位置争い

田嶋コウスケ

絶好調のシティから勝ち点1をつかみかけるが……

リーグ戦11連勝中のシティから勝ち点1をつかみ取る寸前だったが…… 【Getty Images】

 11月29日(以下、現地時間)に行われたマンチェスター・シティvs.サウサンプトン戦で、日本代表DFの吉田麻也は敵地エティハド・スタジアムのピッチに立っていた。ポジションは5−4−1の右センターバック(CB)。プレミアリーグで快進撃を続けるシティに対し、サウサンプトンは5バックという超守備的な布陣で挑んでいた。

 試合は、サウサンプトンの狙い通りに進んだ。フィールドプレーヤー全員で守備を固め、プレミア最多得点を誇るシティにゴール前でスペースを与えなかった。その中で吉田も、ブラジル代表FWのガブリエル・ジェズスをマークしながら守備に奮闘した。クロスボールをヘッドで跳ね返したり、前方に出てインターセプトしたりと、積極的な守備で最終ラインを支え続けた。

 サウサンプトンはセットプレーから先制点を奪われたが、後半に起死回生の同点ゴールを奪取。守備的なアプローチが功を奏し、後半アディショナルタイムまで1−1で敵の攻撃をしのいでいた。アディショナルタイムは6分。当時リーグ戦11連勝中のシティに対し、サウサンプトンは勝ち点1をつかみかけていたのだ。

 ところが、90+6分に分岐点が訪れる。今季好調のラヒーム・スターリングがゴール前でボールをキープ。吉田が寄せに行こうとしたところで、スターリングが右足を振り抜き、ボールはゴール右に吸い込まれていった。

 試合終了まで残り数十秒という土壇場で生まれた決勝ゴールに、ジョゼップ・グアルディオラ監督を含むシティ一行は、まるで優勝したかのような大騒ぎ。対照的に吉田は、重い足取りで控え室に消えていった。

 試合後の取材エリアでも、無念さを隠そうとしなかった。

「悔しいです。でも、結局はそこなんですよね。結局、(勝負を分けるのは)ああいうところなんですよ。優勝争いに食い込んでいるチームの底力を感じました。僕らは徹底して守備をやった。11人中、9人が守備的な選手で、かなり割り切ってプレーしていたんですけれど……。(日本代表として戦った)ブラジル戦やベルギー戦もそうですけれど、レベルが高いと、本当に些細(ささい)なところが勝敗の境目になってくる」

「負ける相手ではなかった」アーセナルにドロー

引き分けに終わったアーセナル戦後、吉田は悔しさをあらわにした 【写真:ロイター/アフロ】

 劇的な幕切れで終わったシティ戦から11日後。12月10日のアーセナル戦も、似たような試合展開で進んだ。

 前半の立ち上がりに先制したサウサンプトンは、守備重視のプレーを徹底した。先発した吉田も、5バックシステムの中央CBとして最終ラインを支えた。ゲームキャプテンとして味方を鼓舞して引き締めつつ、「一番ケアしていた」というメスト・エジルとアレクシス・サンチェスから出されるチップキックのパスも封じていた。

 ところが、88分に転機が訪れる。FWオリビエ・ジルーにクロスボールが入ると、ジャンプした吉田の頭をかすめてヘディングシュート。ボールはゴール右に突き刺さった。クリアでジャンプした吉田とクロスボールの差は、わずか10センチ程度だった。

 クロスが入る直前まで、吉田は首を左右に振ってジルーとボールの位置を確認していた。ジルーをブロックできる場所にポジションを取っていたが、サンチェスがクロスを入れた瞬間、フランス代表FWは吉田の背後に抜ける動きで小さなスペースを作った。サンチェスが供給したクロスが絶妙だったこともあり、ジルーに同点ゴールを決められてしまった。

 試合はそのまま1−1のドローでタイムアップ。試合終了のホイッスルが鳴ると、吉田は両手で膝をつき、無念の表情を浮かべた。

「シティ戦と同じように引いて守ったゲームになりました。いつも言っていますけど、結局ああいうところ。あそこを僕自身としても、チームとしても乗り越えていかないといけないと思います。(失点の場面は一瞬の隙を突かれた?)もうワンステップ後ろにいればよかった。その1、2歩の差です。そこを改善していかないといけないのですが、そこがまた、難しいところでもあります。

 悔しいですね。相手がいつものアーセナルなら、(ドローという結果は)『まあOK』と思うかもしれないけれど、今日のクオリティーを見れば、負ける相手ではなかったと思う。十分、勝てる要素があったと思います」

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著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながら、インスタグラムを開始

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