吉田麻也が縮めたい「あと一歩」の差 代表クラスが4人、激しさを増す定位置争い

田嶋コウスケ

し烈を極めるレギュラー争い

オランダ代表CBウェズレイ・フート(写真)の加入により、レギュラー争いは激化 【Getty Images】

 あと一歩、一瞬の差──。世界中から猛者が集うプレミアリーグでは、こうしたわずかな差が勝負の分かれ目となる。その細部を少しでも埋めようと、もがき苦しみながら切磋琢磨(せっさたくま)しているのが今の吉田である。ただ同時に、ハイレベルな真剣勝負から得られるものも多いという。

「(11月にブラジル、ベルギーと対戦した)日本代表戦の時と同じようなレベルの高いチームとやることができて、いろいろなものを吸収できているんじゃないかと思います。(ベルギー代表MFのケビン・)デ・ブルイネなんかは、代表戦の時とはまったくの別人でした。

 やっぱり、フットボールは不思議だなと思いました。シティのプレッシングの掛け方や切り替えの速さ、カウンターの速さは、僕たち日本代表も参考にしなきゃいけないなと思います。(シティ戦では後方から)パスをうまくつなぎたかったですけれど、いっぱいいっぱいな感覚が強かった。また試合のビデオを見直して勉強します」

13日に行われたサウサンプトンvs.レスターのマッチプログラムで、吉田のインタビューが掲載された。体も首周りも一回り大きくなった印象だ 【田嶋コウスケ】

 吉田が争っているのは、なにも対戦相手だけではない。精力的な選手補強によりクラブ間の競争がし烈を極めているように、各チーム内のポジション争いも厳しさが増している。サウサンプトン在籍6季目となった吉田もそれは一緒で、代表クラスのCBがしのぎを削る定位置争いに身を置いているのだ。

 レギュラー争いが厳しくなった理由は、オランダ代表CBウェズレイ・フートの加入だった。夏の市場にて1500万ポンド(約22億7300万円)でラツィオから移籍すると、第4節のワトフォード戦(9月9日)で初先発。開幕からリーグ杯を含む4試合すべてに先発出場した吉田が、この試合で初めてベンチにまわった。

 しかも、夏の市場期間中に移籍を志願し、試合から遠ざかっていたオランダ代表CBのフィルジル・ファン・ダイクも、第7節のストーク・シティ戦(9月30日)から先発に復帰した。夏の移籍期間でファン・ダイクの退団を認めなかったサウサンプトンだが、市場閉幕後にすぐ先発復帰させていては自軍の選手たちに示しがつかない。そのため、しばらく出番を与えていなかったが、マウリシオ・ペジェグリーノ監督はシティやリバプール、チェルシーも獲得を狙うオランダ代表の再起用に踏み切った。

「あと一歩の差」を埋めるために――

吉田の言う「あと1歩の差」とは、すなわち日本と世界との差でもある 【Getty Images】

 以降、オランダ代表のファン・ダイクとフート、日本代表の吉田、イングランドU−21代表のジャック・スティーブンスという代表クラスの選手4名によるポジション争いが始まった。4バックを軸としながら5バックを併用するサウサンプトンで、CBの先発枠は2〜3。指揮官が積極的にローテーション制を採用するなか、吉田はここまでリーグ戦18試合中13試合に先発した。

 ちなみに同節までの先発数は、ファン・ダイクが11試合、フートが9試合、スティーブンスが6試合。4回にわたりゲームキャプテンを務めた吉田が、CBの中で最多出場を果たしている。

 とはいえ、ローテーションで先発から外れる試合もあり、吉田は「腹が立つ」と正直な心情を吐露する。しかし、「腹を立てることにエネルギーを使うより、『自分がどうやったらベターな選手になれるか?』と試行錯誤することにパワーを使いたい。その方が時間を有効的に使える」と前向きに捉え、さらに高みを目指そうとしている。

 サウサンプトンはクロード・ピュエル前監督からペジェグリーノ監督に指揮官が交代。CBの人数が増え、これまで以上に定位置争いも厳しくなった。にもかかわらず、吉田はシーズンの折り返し地点に差し掛かったプレミアリーグで、CBの中心的存在としてプレーし続けている。

「勝ちをたぐり寄せられるチームになりたいし、自分自身もそういう選手になりたい。そこから、もう1、2ステップ上がっていければいいと思います」

 吉田の言う「あと1歩の差」とは、すなわち日本と世界との差でもある。その距離を縮めようと、吉田の戦いはこれからも続いていく。

2/2ページ

著者プロフィール

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。2001年より英国ロンドン在住。サッカー誌を中心に執筆と翻訳に精を出す。遅ればせながら、インスタグラムを開始

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント