【ボクシング】小関桃、黒木を圧倒し「最高の結果」 2階級制覇達成も次の目指す場所は未定

船橋真二郎

「アウェーで最高の結果を出せた」が......

黒木(右)との戦いは「2年ぶりの燃える試合」と意気込んで臨んだ小関。ただ不完全燃焼の勝利に苦笑いを浮かべた 【写真は共同】

 2年前、「中身のない防衛記録はいらない」と、ラストファイトの覚悟で初めて我を通し、有吉会長に対戦を直訴して実現したWBA王者の宮尾綾香(大橋=当時)との王座統一戦は、文句なしで年間最高試合に選出される熱戦だった。

 小関自身、「あれがゾーンに入るということなのかというか、そういう境地でやれた試合」と振り返ったが、同時に「あの試合がベストバウトと言われるのは嫌なんです」と技術面では自分の良さを出すことができなかった悔しさも残った。

 好敵手とぎりぎりの戦いをしたからこそ、わいてきた悔しさは、その後の小関を駆り立て、「あれ以上の試合をやるんだ、というのが今の支えになっているんです」と1年前に吐露したことがあった。今回の黒木戦は「自分の中では2年ぶりの燃える試合」。だが、「アヤカ戦に比べると、どこか余裕があった」という試合がベストファイトかというと「難しいですよね」と苦笑した。「アウェーで最高の結果を出せた」という満足感はある。でも……。

「もっと、もっと出し切って……。でも、そういう試合って、いろいろな条件がうまくかみ合わないとできないですからね」

 12月1日には、42歳の藤岡奈穂子(竹原慎二&畑山隆則)が目標にしてきた5階級制覇をついに達成した。11月10日には、36歳の元IBF女子ライトフライ級王者、柴田直子(ワールドスポーツ)が多田悦子(真正)との元世界王者同士のサバイバル戦に敗れて、引退を表明した。

 長らく女子ボクシングを引っ張ってきたトップ選手たちが、キャリアの締めくくりを考える時期に差しかかっていると感じる。しかし、ボクサーの引き際は難しい。小関は今後、目指す場所について「この試合に懸けてきたので、この先のことは、今は何も考えられない」と話すにとどまった。再び「もっと、もっと」という欲に駆り立てられるか。

黒木は敗戦に涙も「またチャンピオンに返り咲く」

 敗れた黒木は「またチャンピオンに返り咲く」と再起を宣言。「後半は目の色を変えてきたし、さすが5回防衛したチャンピオンと感じた」と小関が振り返ったように、苦しい展開にも気持ちを折らず、最後まで食い下がった姿には底力が感じられた。

 最終スコアが読み上げられた瞬間、こぼれた涙は勝気な性格の裏返し。競技人口がなかなか増えない女子ボクシングにあって、黒木は依然として貴重なタレントである。ベルトを失い、小関が宮尾とのライバル対決で感じた以上の悔しさが今後の原動力となったなら、そういう面でも意義深い試合だったと言えるのだろう。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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