恐るべし! 香港競馬の意外な底力 場内も場外も目の肥えたウマ女がぞろぞろ

山本智行

イケメンのリョン騎手が来日を熱望

イケメンの29歳、リョン騎手は日本での騎乗も熱望している 【写真:有田徹】

 なかでもシャティン競馬場が最も沸いたのが、そのリョン騎手騎乗のビューティージェネレーションが勝った「香港マイル」だ。何しろ、地元馬に乗った地元の騎手。ご存じのように香港は元イギリス領ということもあり、いまでもジョッキーの大半は外国籍。そんななか、29歳の色白なイケメン香港人騎手が勝ったのだから場内がヒートアップしたのも無理はない。

「いいペースだったので、このまま押し切れると思った。サポートしてくれたみなさんに感謝したい」。勝利インタビューで愛嬌のある笑顔をふりまき、ファンの喝采を浴びたリョン騎手は、香港ジョッキークラブ騎手養成学校出身。16-17シーズンの香港ローカル首位騎手になり、これがうれしいGI初勝利となった。しかも間もなく赤ちゃんも産まれるそうで、まさに二重の喜びともなった。

 そのリョン騎手は、特に17-18シーズンに入って急成長。モレイラ、パートンには及ばないものの、13日終了時点で18勝を挙げ、リーディング5位につけている。イベント終了後に話を聞くと礼儀正しい好青年は「近い将来、日本でも乗ってみたい。来年の7月? そうなるといいですね」とランフランコ・デットーリ騎手のような笑顔を浮かべ、続けて「難しいことは分かっているけれど、世界の大きなレースを勝つのが夢。もちろん、ジャパンカップもそのひとつ」と目を輝かせた。そこで「香港の馬で?」と突っ込むと「日本の馬で」とニヤリ。したたかな勝負師でもあるようだ。陣営は来年3月のドバイ遠征も視野に入れており、その後に安田記念に参戦する可能性も十分。早ければ、6月の府中でリョン騎手に会えるかもしれない。

注目の的、新進気鋭のロー調教師

新進気鋭のフランキー・ロー調教師(左)が香港競馬に新たな風を吹かせるか 【提供:山本智行】

 そしてもう1人、香港競馬で注目の的になっているのが今シーズン開業した51歳のロー調教師だ。これまで名伯楽のサイズ師をサポートしてきた腕利き。昨夏には栗東トレーニングセンターを訪れ、調教施設を視察しており「日本でも走らせたい気持ちはある」と意欲的だった。

 これまで香港の調教師と言えば、昨年新記録の94勝を挙げたサイズ師を筆頭にクルーズ師、Jムーア師と鉄壁の布陣。どの調教師が勝つかに賭ける例の“調教師券”もこの3人に、それ以外の調教師という4頭立てだったが、ロー師はここまで27勝を挙げ、リーディング首位。この日も奥さんを連れだって、仲むつまじいところを見せており「彼の人間性は素晴らしい」と別の女性職員は教えてくれた。獲得賞金面こそ劣るものの、風穴を開けていることは確かだ。

香港の人々にとっては賭けることが人生の一部

 香港競馬の明るい未来を感じ取った帰り道、私は場外に立ち寄り、「北韓−南韓」、「日本−中国」の“足球”を買った。何を買ったかはヒミツ。いずれにせよ、滞在4時間。そこであらためて感じたのが香港の人々にとっては賭けることが生活、いや大げさに言うと人生の一部になっている点だ。館内には常時30人前後が滞留しており、特に買い物帰りの女性の多さにはビックリした。少しトウが立っているが、ほとんど1人で入り、さっと買って去っていく。

 4、5時間の定点観測は新聞社に勤めているころから慣れているが、男女比はほぼ半々。競馬場でも感じたが、香港では場内も場外もまるで大根か白菜でも買うように馬券を買って帰るベテランのウマ女だらけというわけだ。そんな目の肥えた人々の前でレースをしているのだから気を抜いたプレーなどできない。

 香港競馬、恐るべし!  飲茶をいただきながら、そんなことが頭をよぎった。

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著者プロフィール

やまもと・ちこう。1964年岡山生まれ。スポーツ紙記者として競馬、プロ野球阪神・ソフトバンク、ゴルフ、ボクシング、アマ野球などを担当。各界に幅広い人脈を持つ。東京、大阪、福岡でレース部長。趣味は旅打ち、映画鑑賞、観劇。B'zの稲葉とは中高の同級生。

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