みんなの愛馬キタサンブラック3年の足跡 泣いて笑って歌って、そして愛されて

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武豊とコンビ結成、競馬界の顔となった2016年

16年から武豊(左)と新コンビを結成、人気と注目がますます高まったのもこの時期から 【スポーツナビ】

 ファン投票3位で選出された年末のグランプリ有馬記念でも3着と健闘し、古馬戦線でも勝ち負けの力があることを示したキタサンブラック。明けて2016年の4歳からは、北村宏の負傷もあり鞍上が武豊にスイッチした。日本歌謡界を代表する大スター歌手の馬と、日本競馬史上ナンバーワンのスター騎手がコンビを結成。これがキタサンブラックの人気をさらに押し上げ、「みんなの愛馬」になる大きなターニングポイントとなったことは言うまでもない。

 しかしながら、成績表を見てみると、意外なことに武豊との初コンビで臨んだGII大阪杯でも5番人気という“低評価”。「みんなの愛馬」どころか、この時点ではまだキタサンブラックはフロックと見られていたのだろう。過剰人気になりがちな武豊騎乗でも、1番人気になるのはその大阪杯から季節を1つ越しての秋、10月のGII京都大賞典。しかも、これがデビューから1年9カ月経って初の1番人気だというのだから、予想にシビアな馬券ファン、記者はどれだけキタサンブラックを見くびっていたんだ! というのがよく分かる。

ハナ差の大激戦を制した16年天皇賞・春、武豊の手腕にサブちゃんも脱帽だった 【スポーツナビ】

 ただ、その間にもキタサンブラックは伝統のGI天皇賞・春を逃げてハナ差で制する勝負強さを見せ、実力派ステイヤーとしての地位を確立。武豊も絶妙なペースメークとゴール前の差し返しで北島オーナーを脱帽させる、さすがの手腕を披露。武豊自身、これが2006年ディープインパクト以来、10年ぶりの春の盾制覇だった。一方で、サブちゃんは淀で2度目の熱唱となり、武豊との異色デュエットに期待が集まったが、これは天才ジョッキーがやんわりと断ったため実現はならなかった。残念。
 そして、さらに人気は高まり、ファン投票1位で選出された宝塚記念で惜しくも3着後、話を戻して初の1番人気で迎えた京都大賞典。このレースをきっちり勝ったあたりから、もしかしたら馬が一段とパワーアップし“本物の強さ”を身につけたのではないかと、今さらながら思う。スターとしての、王者としての自覚とも言うべきか、続くジャパンカップで度肝を抜く走りを満天下に示したのだ。

 菊花賞はクビ差、天皇賞・春はハナ差と、勝利したGIはともにわずかの着差。これがキタサンブラックの実力を懐疑的に見せていたのかもしれない。しかし、JCではスッとハナに立つと、ゴールまで一度も他馬に影をも踏ませないスピードとスタミナで2馬身半差の快勝。「僕が乗った中では今日が一番のパフォーマンスだったと思います」と武豊も舌を巻く強さだった。

武豊も舌を巻いた16年ジャパンカップ、キタサンブラックのベストパフォーマンスの1つに数えていいレースだ 【写真:中原義史】

 また、この年の8月、北島オーナーは自宅で転倒し頸椎症性脊髄症の治療のため入院。手術も成功し無事に退院したのだが、当時まだ体調は万全ではなかったという。そんな北島オーナーを元気付ける勝利でもあったのだ。
 これだけの走りを見せられては、いかに疑い深い馬券ファン、記者ももう認めるしかない。人気と実力がピタリと噛み合い、有馬記念ファン投票では過去10年で最多の13万7353票を獲得。レースでは1つ下のサトノダイヤモンドの強襲に遭い、クビ差2着に敗れたものの、2016年度JRA賞の年度代表馬に選ばれた。日本競馬界の“顔”となったのである。

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