「頭を真っ白にして」3アクセルを跳ぶ 15歳・紀平梨花が見つけた“ゾーン”

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「降りたときは全然実感がなかった」

ISU公認大会では初となるトリプルアクセル+3回転トウループのコンビネーションを成功させた紀平梨花 【写真:坂本清】

 9日に行われたフィギュアスケートのジュニアグランプリ(JGP)ファイナルの女子フリーで、15歳の紀平梨花(関西大KFSC)が、トリプルアクセル+3回転トウループのコンビネーションを成功させた。国際スケート連盟(ISU)の公認大会では女子選手として史上初の快挙。合計得点は192.45点で4位に終わったが、フィギュアスケートの歴史にその名を刻んだ。

 演技冒頭で挑んだ大技。緩やかな助走から軽快に跳び上がると、着氷もきれいに決める。出来栄えを表すGOEは1.86点がついた。そのあまりに自然なジャンプは、一瞬本当に3回転半したのか分からなかったくらい、鮮やかなものだった。

「決まったときは全然実感がなくて、7つのジャンプのうち1つを降りたという気持ちしかなかったです。すぐに次のジャンプも絶対に降りようと考えました」

 続く2本目のトリプルアクセルはシングルに、さらに次の3回転フリップにもミスが出た。「フリップまでは不安があった」と後に振り返ったが、その後はすべてのジャンプを成功。スピンやステップでもレベル4を獲得し、大歓声の中、演技を締めくくった。

「ノーミスを目標としていたので、少し残念なところもあるのですが、トリプルアクセル+3回転トウループが決まったのはうれしいです。ちゃんと入っているか不安だったんですけど、加点もたくさんついていたのでよかったです」

 歴史的な快挙を成し遂げた15歳の顔には、満面の笑みが浮かんでいた。

自分なりの“ゾーン”を見つける

「以前と比べて周りのことが気にならなくなった」とジャンプに集中する“ゾーン”状態を見つけた 【写真:坂本清】

 女子でトリプルアクセルを成功させたのは、伊藤みどりさんや浅田真央さんら過去に7人しかいない。コンビネーションにするのはさらに難度が高く、2010年のバンクーバー五輪で浅田さんが、2回転トウループをつけた例があるくらいだ。そんな名選手たちの系譜に名を連ねたわけだが、紀平は11月に行われた全日本ジュニア選手権のフリーでも、今回を上回るトリプルアクセル+3回転トウループ+2回転トウループを決めており、今後はさらに難度を上げたジャンプに挑む可能性もある(全日本ジュニアはISU非公認大会のため参考記録)。

 単独のトリプルアクセルはすでに昨季のJGPシリーズで決めていたものの、安定して跳べるようになったのは今季からだという。

「昨季はまだイメージが固まっていなくて、どう跳べばいいのかなという感じで試合に臨んでいたんですけど、最近はこうすれば跳べるというイメージができるようになりました。以前と比べて周りのことが気にならなくなりましたし、自分で『跳ばなければ』と思わないようにして、すごくジャンプに集中できています」

 言わば自分なりに跳べる“ゾーン”を見つけたということだ。これまでは緊張してしまったり、演技中にカメラのシャッター音が気になったりと、集中し切れていなかったようだが、今は「頭を真っ白にして」跳ぶことを意識している。なお、2本目のトリプルアクセルがシングルになったのは「自分の心の中で『これも決めないと』とつぶやくくらい強い気持ちがあった」ため、やや集中が乱れたことが原因だと本人は分析する。

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