「頭を真っ白にして」3アクセルを跳ぶ 15歳・紀平梨花が見つけた“ゾーン”
「降りたときは全然実感がなかった」
ISU公認大会では初となるトリプルアクセル+3回転トウループのコンビネーションを成功させた紀平梨花 【写真:坂本清】
演技冒頭で挑んだ大技。緩やかな助走から軽快に跳び上がると、着氷もきれいに決める。出来栄えを表すGOEは1.86点がついた。そのあまりに自然なジャンプは、一瞬本当に3回転半したのか分からなかったくらい、鮮やかなものだった。
「決まったときは全然実感がなくて、7つのジャンプのうち1つを降りたという気持ちしかなかったです。すぐに次のジャンプも絶対に降りようと考えました」
続く2本目のトリプルアクセルはシングルに、さらに次の3回転フリップにもミスが出た。「フリップまでは不安があった」と後に振り返ったが、その後はすべてのジャンプを成功。スピンやステップでもレベル4を獲得し、大歓声の中、演技を締めくくった。
「ノーミスを目標としていたので、少し残念なところもあるのですが、トリプルアクセル+3回転トウループが決まったのはうれしいです。ちゃんと入っているか不安だったんですけど、加点もたくさんついていたのでよかったです」
歴史的な快挙を成し遂げた15歳の顔には、満面の笑みが浮かんでいた。
自分なりの“ゾーン”を見つける
「以前と比べて周りのことが気にならなくなった」とジャンプに集中する“ゾーン”状態を見つけた 【写真:坂本清】
単独のトリプルアクセルはすでに昨季のJGPシリーズで決めていたものの、安定して跳べるようになったのは今季からだという。
「昨季はまだイメージが固まっていなくて、どう跳べばいいのかなという感じで試合に臨んでいたんですけど、最近はこうすれば跳べるというイメージができるようになりました。以前と比べて周りのことが気にならなくなりましたし、自分で『跳ばなければ』と思わないようにして、すごくジャンプに集中できています」
言わば自分なりに跳べる“ゾーン”を見つけたということだ。これまでは緊張してしまったり、演技中にカメラのシャッター音が気になったりと、集中し切れていなかったようだが、今は「頭を真っ白にして」跳ぶことを意識している。なお、2本目のトリプルアクセルがシングルになったのは「自分の心の中で『これも決めないと』とつぶやくくらい強い気持ちがあった」ため、やや集中が乱れたことが原因だと本人は分析する。