幸運な組み合わせも、運任せにはしない 過ちから学んだスペインのキャンプ地選び

キャンプ地をクラスノダールにした理由

キャンプ地をクラスノダールにしたのは、過ちを繰り返さないため(写真は14年大会のオランダ戦) 【写真:ロイター/アフロ】

 スペインが生かすべき利点の1つは、ベスト8までにソチでの試合が2度あることだ。スペインのベースキャンプ地はロシア南部のクラスノダールで、ソチからは約190キロの距離にある。W杯の開催地には選ばれなかったが、クラスノダールでは先日アルゼンチンvs.ナイジェリアの親善試合が開催されている。

 クラスノダールはソチに近いだけでなく、カリーニングラード、モスクワ、ニジニ・ノヴゴロドとの距離も等間隔で、4時間以上かかるフライトがない。6月の平均気温も22度ほどで、各試合会場と比べて極端に低かったり、高いことはないのでコンディションは保ちやすいはずだ。

 ロペテギのアシスタントコーチを務めるパブロ・サンスとオスカル・カロは、現地視察を行った上で天然芝コート8面、人工芝コート2面にジムやプールも完備したクラスノダールFCのアカデミーの練習施設をベースキャンプ地に選んだ。それは過去の経験に学んだ重要な過ちを繰り返さないためだ。

 前回王者として臨みながらグループリーグ敗退に終わった前回のW杯ブラジル大会では、最低気温が6度にまで下がるクリチバをベースキャンプ地に選び、いずれも平均最高気温が25度を超えるサルバドールでオランダに1−5、リオデジャネイロでチリに0−2で大敗した。

 ユーロ(欧州選手権)2016では宿舎と練習場が離れすぎ、練習のたびにバスで移動しなければならなかった。今回、練習場と宿泊施設が一緒になっていることを条件に候補を絞り込んだのはそのためだ。

何1つ、運任せにはしない

ロペテギ監督(中央)のもと若返ったスペインからは、「運任せにはしない」という意思が感じられる 【写真:ロイター/アフロ】

 ユーロ2008を制したルイス・アラゴネスがチームに植え付け、10年のW杯南アフリカ大会とユーロ2012の優勝に導いたビセンテ・デルボスケが継続、強化してきたラ・ロハ(スペイン代表の愛称)のプレースタイルは、ロペテギの指揮下でもしっかり受け継がれている。

 だがイスコやマルコ・アセンシオ、アルバロ・モラタ、ダビド・デヘアら新たな戦力の台頭によってチームの顔ぶれは随分と若返り、ブラジル大会で敗退した際の疲れ切った面影はもうほとんど残っていない。バルセロナのメンバーがチームの骨格を形成していた以前とは違い、レアル・マドリーやプレミアリーグ勢が増えた現在は、所属クラブのバランスも整っている。

 何1つ、運任せにはしない。今回のスペインからは、そんな意思が感じられる。

(翻訳/工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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