【ボクシング】五輪連覇ロマチェンコが夢の対決に臨む リゴンドーは「化けの皮剥がす」と怪気炎

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WBO世界スーパーフェザー級王者のワシル・ロマチェンコが、同じく五輪2大会連覇のリゴンドーと激突! 【(C)NAOKI FUKUDA】

 五輪2大会連続金メダル獲得後にプロ転向を果たし、プロでも世界王座を獲得。現在もベルトを保持し続けるサウスポーのチャンピオン同士の対決が12月9日(日本時間10日)、米国のニューヨークで実現する。

 WBO世界スーパーフェザー級チャンピオンのワシル・ロマチェンコ(29=ウクライナ)にWBA世界スーパーバンタム級スーパー・チャンピオンのギジェルモ・リゴンドー(37=キューバ)が挑むもので、究極の技巧派対決として注目を集めている。8歳若く、2階級上のロマチェンコが有利とみられているが、リゴンドーの底力を推す声も少なくない。夢の対決を制するのは「ハイテク」ロマチェンコか、それとも「ジャッカル」リゴンドーか。

傑出したアマチュア実績を誇る両者

 この試合がなぜ“ドリームマッチ”なのか? それを説明するにはまず両者のアマチュア実績に触れる必要があるだろう。ロマチェンコは08年北京五輪のフェザー級で金メダルを獲得し、12年ロンドン大会ではフェザー級が実施されなかったためライト級に出場。ここでも4試合を勝ち抜いて最も高い表彰台に乗った。このほか09年と11年の世界選手権でも優勝している。アマチュア戦績に関しては諸説あるものの、397戦396勝1敗が通説となっている。この1敗は07年の世界選手権決勝でロシアの選手に喫したものだが、のちに2度、借りを返している。

 リゴンドーは選手層の厚いことで知られるキューバで7度も国内選手権で優勝し、五輪は00年シドニー大会、04年アテネ大会でバンタム級金メダルを獲得した。いずれの大会も5試合を勝ち抜いて最高位についたが、すべて一方的な内容だった。このほか世界選手権は01年と05年の大会で優勝している。こちらもアマチュア戦績に関しては複数の説があるが、475戦463勝12敗が最も信頼のおける数字といえる。最後に負けたのが03年というから、プロ転向後も含めて14年も無敗をキープしていることになる。

 4年に一度の五輪で連続して金メダルを獲得することが至難の業であることは想像に難くない。その偉業を成し遂げたロマチェンコとリゴンドーは、プロのリングでも「世界チャンピオン」という称号を手にしている。

「2階級制覇王者」vs.「V10王者」

リゴンドーはロマチェンコ戦へ自信「ロマチェンコはホンモノではない。その化けの皮を剥がしてみせる」と意気込む 【(C)NAOKI FUKUDA】

 ロマチェンコはロンドン大会の翌13年10月、6階級制覇チャンピオンのマニー・パッキャオ(フィリピン)らを擁するアメリカの大手プロモート会社、トップランク社と契約を交わしてプロに転向した。契約に際して「デビュー戦で世界戦を組んでほしい」とリクエストした逸話が残っている。世界挑戦するにはランキングに入る必要があるため、初陣で世界7位と対戦して2度のダウンを奪って4回KO勝ち。2戦目で世界挑戦は実現したが、このときは計量で失格した百戦錬磨のラフファイター、オルランド・サリド(37=メキシコ)に判定で惜敗した。長丁場を過剰に意識して前半をセーブしたことがマイナスに作用したようだ。この失敗でスタミナの配分を学んだロマチェンコは14年6月、決定戦を制してWBO世界フェザー級王座を獲得した。プロ転向から8カ月後のことで、3戦目での戴冠は最速タイ記録でもある。この王座は3度防衛後に返上した。

 16年6月にはベテランのローマン・マルチネス(プエルトリコ)を鮮やかな5回KOで屠り現在の王座を獲得。プロ7戦目での2階級制覇は、井上尚弥(大橋)の8戦目を更新する最速記録だ。持ち前のスピードとテクニックに経験値が加わったことで、いまやロマチェンコは手のつけられない強さ、巧さを発揮している。世界王者経験者のニコラス・ウォータース(ジャマイカ)、ジェイソン・ソーサ(米国)には何もさせずに7回と9回で棄権に追い込み、タフネスと強打に定評のあるミゲール・マリアガ(コロンビア)からは2度のダウンを奪ったすえ7回で勝負を諦めさせた。戦績は10戦9勝(7KO)1敗。5戦目から6連続KO(TKO)勝ちと乗りに乗っている。

 これに対しリゴンドーは、キューバではプロスポーツが認められていなかったため09年に亡命してプロ転向を果たした。1年半後の10年11月には7戦目でWBAのスーパーバンタム級暫定王座を獲得し、のちに正王者を倒してその地位を奪い取った。5度目の防衛戦ではWBOチャンピオンのノニト・ドネア(フィリピン)にも競り勝ち、2団体王座の統一を果たした。このころトップランク社と契約を交わしていたリゴンドーの試合はテレビ中継されていたが、14年には局の方針で一方的に放送が打ち切られてしまった。ワンサイドの試合が続き、勝利至上主義のリゴンドーがリスクを最小限に抑えた戦いを変えなかったことが理由とされた。前後してトップランク社との契約も解除された。リゴンドーは「常にベストを尽くして戦っている。ただ私が強すぎるだけだ」と反論したが、状況は変わらなかった。

 その後、リゴンドーは日本で天笠尚(FLARE山上)に不覚のダウンを喫したものの11回終了TKO勝ちで清算し、8度目の防衛に成功。一時はビジネス上の問題で実戦から遠ざかったため両団体から王座を剥奪されたが、のちにWBAからは返還されている。通算の防衛回数は10度まで伸びている。これまで一貫してスーパーバンタム級にこだわってきたリゴンドーが今回の冒険に出たのは、37歳という年齢を考慮したからだけではなく、絶対的な自信があるからだともいわれる。リゴンドーは「ロマチェンコはホンモノではない。その化けの皮を剥がしてみせる」と意気込んでいる。18戦17勝(11KO)1無効試合。

オッズは4対1でロマチェンコ有利

 個々の戦力を比較してみると、スピード、パワー、スタミナ、耐久力、経験値などはほぼ互角とみていいだろう。ロマチェンコには多彩なコンビネーションがあるが、リゴンドーも左ストレートという切り札を持っている。まったく同じ条件下であれば互角の戦力といっていいだろうが、今回はリゴンドーが2階級上げて戦うことになる。そこが勝負のカギと言ってもいいだろう。

 体格そのものは身長168センチ/リーチ166センチのロマチェンコに対しリゴンドーは162センチ/173センチと、数字上はどちらかに一方的に傾いているわけではない。しかし、いまのベスト体重には3.6キロの差があり、その分、ロマチェンコにアドバンテージがあるといえる。コンスタントにリングに上がり続けてプロの戦いに馴染んできた29歳と、ブランクを繰り返してきた37歳。その中身と年齢差も気になるところだ。4対1というオッズほどの差はないものの、ロマチェンコ有利の予想は妥当なところといえる。

 その下馬評どおりウクライナ生まれの「ハイテク」ロマチェンコが先輩を完封してしまうのか、それともキューバ出身の「ジャッカル」がかみついて飛び級の2階級制覇を成し遂げるのか――。12月9日、夢の対決に要注目だ。

Written by ボクシングライター原功
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