【ノア】拳王がグローバル・リーグ初制覇 原田はRATEL'S対決制し防衛も不満

高木裕美

「グローバル・リーグ戦」はヘビー転向後初出場の拳王が潮崎豪を破り初優勝 【写真:前島康人】

 プロレスリング・ノア「グローバル・リーグ戦2017」最終戦となる19日の東京・後楽園ホール大会では、満員となる1223人を動員した。

「グローバル・リーグ戦」は2010年にスタートし、これまでの優勝者は高山善廣、森嶋猛、KENTA、永田裕志、杉浦貴、丸藤正道、鈴木みのると、全員がGHCヘビー級王座戴冠者、もしくは13年の永田のように、優勝後にGHC王座に挑戦&戴冠している。ノアを象徴するシングルリーグ戦であり、ファンの注目度も高い。

 メインイベントの優勝決定戦では、拳王が潮崎豪を破り初優勝。ジュニアヘビー級からヘビー級に転向し、初出場にして新たな時代の扉を開いた拳王は、12.22後楽園で現GHCヘビー級王者であるエディ・エドワーズへの挑戦をブチ上げると、さらにリング上から「テメエらクソ野郎どもを武道館まで連れていってやるからな」と、かつてのノアのホームリングへ再びたどり着くことを宣言した。

「ノア=拳王」の時代を築くと宣言

拳王が蹴暴からダイビングフットスタンプを連発し、潮崎から3カウントを奪った 【写真:前島康人】

 Aブロック1位の潮崎は、丸藤正道に敗れ、マイバッハ谷口に両者リングアウトにされたものの、同じく10点のマサ北宮に直接対決で勝利していたため、決勝に進出。一方、Bブロック1位の拳王は、宮本裕向にこそ敗れたものの、元GHC王者である中嶋勝彦から勝利し、夏のZERO1「火祭り」から因縁が続いていた田中将斗にも初勝利。堂々の単独首位で大舞台に臨むことになった。

 観客も大きな声援で拳王を後押し。試合は、拳王のキックvs.潮崎のチョップによる壮絶な打撃戦に。序盤に拳王が潮崎の背中へサッカーボールキックを打ち込むと、潮崎も背中への逆水平チョップでお返し。10分過ぎには、潮崎のマシンガンチョップに、拳王も怒涛(どとう)のローキック連打で張り合う。拳王のアンクルホールドに対し、潮崎もゴーフラッシャー、トップロープからの雪崩式ブレーンバスターを繰り出すが、拳王もオーバーヘッドキックで反撃。20分を過ぎても両者の闘志は衰えず、ライバル意識ムキ出しの張り手合戦から、チョップ、キックを打ち合うと、潮崎のムーンサルトプレスを阻止した拳王が急角度の雪崩式ドラゴンスープレックス、ダイビングフットスタンプ。潮崎もラリアット2連発で拳王の体を1回転させ、なおも拳を握り締めてチョップを打ち込むも、拳王が起死回生の蹴暴をさく裂。うつ伏せ状態となった潮崎の背中めがけてダイビングフットスタンプを放つと、さらにあおむけ状態へもう1発。3カウントがたたかれた瞬間、客席は歓喜に沸き上がった。

 優勝トロフィーを受け取った拳王は、「リーグ戦、優勝したってことは、GHCチャンピオン、エドワーズに挑戦する資格ありだよな」と、年内最終戦となる12.22後楽園でのタイトル戦を要求。「ノア=丸藤、杉浦。そんな時代じゃねえだろ。オレがチャンピオンになって、ノア=拳王。オレの時代を築くから楽しみにしておけ」と、00年の旗揚げ当時からの所属選手であり、何度もGHC王座を巻いてきた丸藤、杉浦の2人にケンカ状をたたきつけた上で、「最後に、テメエらクソ野郎どもを武道館まで連れていってやるからな。これからはノアの時代を築く拳王、オレについて来い」とアピール。これには、観客もひと際大きな歓声で期待を寄せた。

 今でこそ、「新日本プロレス一強」と言われるプロレス界だが、かつてのノアは、1972年創設の老舗団体である新日本、全日本プロレスをしのぐ勢いを誇り、キャパ1万6000人の日本武道館で何度も満員マークを連発。04年&05年には東京ドーム大会も成功させた。「全盛期のノア」の象徴である武道館を目標に掲げたことについて、拳王は「クソ野郎どもの心に一番響く言葉を言ってやっただけ」と、一瞬でファンの心をつかんだ秘けつを明かし、東京六大学のひとつである明治大学出身ならではのクレバーさを見せつけた。

 かつて、みちのくプロレスの新崎人生にその才能を見出され、みちプロの最高峰・東北ジュニア王者に君臨しながらも、自身をさらに成長させるため、14年よりノアへ本格参戦。外様でありながら、着実にファンの支持を得てきた拳王が、今度はノアの頂点に立ち、再びかつての聖地で熱狂を生み出すことができるのか。まずは12.22後楽園が、その試金石となりそうだ。

原田が防衛も次期挑戦者は名乗り上げず

原田はGHCジュニア・ヘビー級王座を防衛。しかし試合後、誰も挑戦に名乗りを上げなかったことに不満 【写真:前島康人】

 セミファイナルのGHCジュニア・ヘビー級選手権試合では、原田大輔がタッグパートナーのタダスケを下し初防衛に成功。だが、試合後に誰も挑戦に名乗りを上げなかったことに不満を漏らし、「オレらの代でノアジュニアを終わらせたくない」と危機感を募らせた。

 原田とタダスケは共に大阪プロレス出身であり、普段は原田がリーダーを務めるユニット・RATEL’Sとしてタッグを結成。だが、10.1横浜でシングル王座を巻いた原田に対し、タダスケがその場で挑戦状をたたきつけていた。

 シリーズ中の前哨戦では、タダスケが原田に3連敗するも、11.12松山ではピンフォール勝ち。11.14大阪では大乱闘を繰り広げるなど、パートナーならではの甘えや妥協をかなぐり捨てて、今回の一戦に臨んでいた。

 気迫十分のタダスケは、序盤からパイルドライバー、スリーパーを繰り出すと、10分過ぎには原田のエルボー連打に対し、タダスケがラリアット、張り手、ラリアット4連発。だが、原田もジャーマン、ニーアッパー、エルボーを放つと、ロープの反動を利用したジャーマンスープレックスから、必殺の片山ジャーマンスープレックスで勝利。試合後はRATEL’Sのメンバーも駆けつけ、原田がタダスケの手を挙げて健闘をたたえ、ノーサイドとなった。

 見応えのある攻防に、客席からも熱のこもった声援が飛び交っていたが、原田自身はこの内容と結果にも、「満足はしていない」と厳しい表情。前回の戴冠時にはタダスケがいの一番に挑戦を直訴してきたが、今回は身内からも外敵からも何のアクションもなかったことに、「周りの様子を伺わずに、自分の意志で動け。オレらの代でノアジュニアを終わらせたくない」と、自分たちでタイトル戦線を活性化させようとしない選手たちに警鐘を鳴らした。

 現在はGHCジュニアタッグ王座もRATEL’SのHAYATA&YO−HEY組が保持。GHCジュニア前王者の石森太二は、日本人2人目のX−ディビジョン王者となったことから、視線は国外へ向いている。この日の第4試合では、田中稔がHi69にシングルマッチで勝利しているが、果たして、これまで数々のタイトルを総ナメにしてきた男が、ノアジュニアに対しアクションを起こす時が来るのか。

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著者プロフィール

静岡県沼津市出身。埼玉大学教養学部卒業後、新聞社に勤務し、プロレス&格闘技を担当。退社後、フリーライターとなる。スポーツナビではメジャーからインディー、デスマッチからお笑いまで幅広くプロレス団体を取材し、 年間で約100大会を観戦している 。最も深く影響を受けたのは、 1990年代の全日本プロレスの四天王プロレス。

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