「演技の質」重視するベテランの戦い方 ボロノフ、リッポン、ビチェンコが表彰台

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「自分には自分なりのすごさがある」

2位のリッポンは、経験を重ねて「今は大胆に、ミスを恐れることなく取り組めている」 【坂本清】

 もちろん、あえて難しいジャンプに挑戦して得点を狙うのも、ジャンプの難易度を落としクリーンな演技で得点を狙うのも正解だ。理想を言えば高難度のジャンプをきちんと跳んだうえで、クリーンな演技ができれば申し分ない。ただ、それを両立できるのは一部の選手のみ。人それぞれで得手不得手もあるだろうし、キャラクターも異なる。競技である以上、戦略は必要になってくる。すでに自らのスタイルを確立しているベテラン選手にとってみれば、難易度の高い新しいジャンプを取り入れるより、これまで培ってきた技術や表現力の練度を高める方が得策かもしれない。

 NHK杯がファイナルを含めてGPシリーズ20大会目の出場となるリッポンは、若手との違いをこう語る。

「昔の自分だったら、4回転を5個入れていないからダメかもしれないとパニックになっていたと思います。ただ、今は年齢を重ねて大人になったので、若いスケーターを見ると『あなたたちはすごいね。でも自分には自分のすごさがあるから』と思えるようになりました。彼らは難しいジャンプを跳ぶことで点を取っていく。自分は自分なりの戦略で点を稼いでいこうと思っています」

 そしてリッポンもまた「キャリアが上昇の波に乗っている」という。

「私はこれまでのキャリアで、良いことや悪いことをたくさん見てきました。そうした経験を現在はスケートに取り入れることができています。若い選手たちにはそれができないと思うんですね。年齢を重ねて、成熟した選手になってきたからこそ、その経験でスケートがしやすくなっていると感じます。今は大胆に、ミスを恐れることなく取り組めているのも大きいです」

競技を続けるモチベーション

3位のビチェンコも、生き生きと競技への意欲を語る 【坂本清】

 若い力が次から次へと芽吹くフィギュアスケート界において、長く第一線で戦ってきたベテラン選手たちの活躍は、競技に新たな彩りを加える。2014−15シーズンのGPファイナルで3位に入った経験を持つボロノフだが、GPシリーズは今回が初優勝。FSと合計得点の自己ベストも更新した。30歳にしてまだ進化していることを証明している。2位のリッポン、3位のビチェンコも含め3選手はこのあとも試合が残っているため、GPファイナル進出の可能性は十分にある。

 彼らは今後も新たな4回転を取り入れることより、演技の質をより高めていくことに重点を置いていく。それがベテランとしての彼らなりの戦い方だからだ。五輪でのメダル獲得は難しいかもしれない。それでも、今回のボロノフのように過去の自分は超えていくことができる。リッポンは言う。

「私は毎日ジムに行ってトレーニングをすることが大好きで、日々アスリートとして自分が力をつけているという実感があります。実際に自分はどんどん良くなってきているという感覚もあります」

 ビチェンコは競技を続けるモチベーションについてこう話す。

「自分が頑張れるのはその先に夢があって、成功があると信じているからだと思います」

 そしてボロノフは同じ問いに対し、シンプルにこう答えた。

「やはり好きじゃないと長続きしない。スケートを好きだという気持ちが競技を続ける原動力となっています」

(取材・文:大橋護良/スポーツナビ)

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