稲葉監督の“初陣”は収穫の多いドロー ポイントになった打線の1、2、5番
3回に同点に追いつくタイムリー二塁打を放った近藤 【写真は共同】
「試合から遠ざかっているなか、バッターには初球からどんどん振っていこうと話していました。ピッチャーは調整をしっかりやって、いいボールを投げていました。機動力でも、積極的に走ってくれました。全体的に非常に良かったと思います」
11月12日にSOKKENスタジアム(宮崎市清武総合運動公園野球場)で行われた日本ハムとの練習試合は、侍ジャパンにとって16日に開幕する「アジア プロ野球チャンピオンシップ」に向けた調整段階の一つだ。しかも、選手たちは公式戦終了から日程が開いて臨む難しさがある。
そんな中で確認したかったのは、選手たちはどういった意識を持ち、チームとしてどんな戦いぶりを見せるかだ。その点で、特に攻撃面で収穫の多い一戦だった。
打撃陣は12安打に機動力も発揮
この日スタメンで起用されたのは、1番が京田陽太(中日)、2番が源田壮亮(西武)で、5番は近藤健介(日本ハム)。2点を先制された直後の3回、この打線が機能して同点に追いついた。先頭打者の京田がセンター前ヒットで出塁すると、続く源田の場面でフルカウントからエンドラン(結果はセカンドゴロ)で1死二塁。3番に入った上林誠知(福岡ソフトバンク)がライト前ヒットを放って1死一、三塁とすると、4番・山川の初球で二盗を成功させる。
ここで光ったのが、山川の技術と京田の足だった。1ボール2ストライクとなった場面で、山川は1点を取りにいく。
「犠牲フライの意識はありました。ちょっと(ボールに)差されたので、距離が足りるかなと思ったけど、ランナー(京田)が行ってくれたので犠牲フライという形になったのは良かったですね。最低限の仕事をできました」
浅いライトフライだったが、京田が果敢なスタートで1点をもぎ取った。この走塁に対し、山川は“次”への相乗効果を口にしている。
「あの当たりでセーフになるのはありがたい。(京田が三塁にいるときはフライを)打ち上げちゃえばいいという意識で打席に入れるのは楽ですね」
京田だけでなく、上林も好走塁で三塁へ。同点のチャンスで打席に近藤が向かう。ボールを自分のポイントまでうまく呼び込み、前の打席に続いて左中間を破るタイムリー二塁打で追いついた。
「僕の役割としては、得点圏でしっかり結果を出すところになってくると思います。5番を打っている以上、打点にこだわらないといけない」
前日、稲葉監督は「近藤を2番で起用しても面白い」と話していた。だが5番に置いたのは、“山川の後”がポイントと見たからだ。
「1、2番が出て送りたいとなったとして、(3番に置いた場合)近藤選手には(バントではなく)打たせたいのもありました。上林選手は打つのもすごいけど、バントもうまい。山川選手の後ろは非常に大事なポジションというところで、近藤選手のバットコントロール、勝負強さが活かされるのかなと思って今日は5番で行きました」
まさに、指揮官の狙い通りの形で2点を追いついたわけだ。
この場面で見逃せないのが、上林の走塁だ。チーム全体に「積極的に走っていこう」という指示が出ていたなか、1死一、三塁から4番・山川の初球で二盗を成功させている。
「ランナー一塁のときより成功する確率が高いですし、積極的に行けて良かったです。国際大会は短い期間なので、1度のミスが許されないと思うので、確実に行けるところは行って、自重するところは自重したいですね」
さらに、7回には先頭打者の代打・西川龍馬(広島)がセンター前ヒットを放つと、上林は送りバントを確実に成功させた。得点にこそ結びつかなかったものの、稲葉監督の期待通りに犠打を決めたのは、本番につながるプレーだった。
打線を全体的に見れば、1番の京田が猛打賞、4番・山川は5回に右中間の電光掲示板を直撃する本塁打を放つなど、計12安打。足を絡めた攻撃も機能した。