今年は「○○年に一人」の逸材が中心!? 西尾×小関×福田ドラフト鼎談〜野手編〜

スポーツナビ

複数球団の入札が確実な早稲田実・清宮。人気と実力を高いレベルで兼ね備えるだけに、何球団が競合するのか楽しみだ 【写真は共同】

 まもなく「その時」を迎えるプロ野球ドラフト会議。本番に向けて動向を探るべく、アマチュア野球の逸材を追って全国各地で取材活動を行う西尾典文氏(野球ライター)、福田豊氏(日刊スポーツ所属)、小関順二氏(野球ライター)に集まっていただき、雑誌「アマチュア野球」(日刊スポーツ出版社)で人気を博した座談会がスポーツナビに場を移して復活となりました。第1回は今年の傾向と野手の候補生についてです。

「えっ!?」となる選手の1位指名も?

――まずは今年のドラフトの傾向をお聞かせください。

小関:清宮幸太郎(早稲田実)、安田尚憲(履正社高)、中村奨成(広陵高)……高校生野手で間違いなく1位指名される選手が3人集まるのは珍しいですね。数年後戦力になってるだろうという予想でいくと、今年はスケールが大きいです。大学ではここ数年続いていますが、地方に逸材が多いです。東京六大学や東都大学リーグも頑張っていますが、今年もその傾向が顕著に出ていますね。

福田:今年は「清宮ドラフト」ですね。清宮に何球団いくのか。広島は指名しないですが、11球団は可能性があるということで。当日までに徐々に降りていく球団もあると思いますが、どうなるかワクワクしますよ。実際清宮はお客さんを呼べますし、実力もある。仮に清宮から手を引いたときは、各チームの戦力補強や将来への考えも見えそうですね。

西尾:お二人も仰っていますが、入札が結構重なってくると思います。去年は佐々木千隼(桜美林大/千葉ロッテ)が外れ1位で重複したんですけど、今年も外れて石川翔(青藍泰斗高)、また外れて……みたいな展開がありそうです。そう考えていくと、1人か2人「えっ!?」ってなるような選手も1位指名されるかもしれません。いい選手もいますが、12人そろえようとすると、ちょっと足りないかなと。

清宮のすごさは「技術」と「自立」

――ありがとうございます。お三方とも同じような見解をお持ちだなと思いました。ここからは野手の候補について見ていきましょう。まずは高校生の大本命・清宮についてはいかがでしょうか?

小関:文句なしですよね。何より実績がすごい。ホームランはそんな簡単に打てるものじゃないです。「力があれば打てるんじゃないか」と言われますけど、そこには技術が必要になるわけです。なので、技術が高いように思いますね。次に変な癖がないです。バットが上下動したりしないですし、間のとり方も上手ですね。打つポイントも近いです。あと、公式戦でのホームランが多いですよね。全部のホームランを見ているし、1号や甲子園でのものも見ていました。期待されて、小学校からの実績があって、活躍するんじゃないかと言われて、親父さんも有名だし、そういう中で答えを出していったのはいいと思いますね。

西尾:パワーはあるんですけど、構えたときに力が入ってないように見えますね。それでもあれだけ飛ばせるというのは技術がないと飛ばせないので、すごいと思います。春先に日刊スポーツで全本塁打一覧が出ていたんですが、その時はほとんどライト方向だったんですよ。それが3年になって左方向にも打つようになりました。最後の夏も小関さんと一緒に見ていて、八王子戦で左中間に打ったんですけど、左方向であの打球というのはポイントをちゃんと近くに持ってきて押し出すようにしないとできない。あれは本当にすごいなと思いましたね。これだけ期待され続けて結果を残した球児はいないです。これだけコンスタントに打った選手もいないですし、どこに行っても大丈夫じゃないかなと思います。

福田:お客さんの数も報道陣の数もすごいですよね。取材に行っても記者席を取れないですよ。八王子球場では10人ぐらいしか座れなくて、一回スタンドでパソコンを開いた事があるんですけど、暑さでパソコンがいかれちゃって(笑)。それだけ人を集めて、結果を出すし、頭もいい。考えて野球をやってるなと感じますね。スカウトの人に聞くと「穴がある」と言われますけど、そのあたりはこれからいいピッチャーと当たっていく中で、弱点を突かれても「次はこういうふうに打とう」とかそういう頭の良さを感じます。よく野球選手で言われるのは「自立した選手」ということを問われるんですよ。高校野球の監督さんも「言われたことをやるんじゃなくて、自分から動ける」ようにしつけようとしている。でも無理なんですよね。結局は子供なので。でも清宮に関しては、考え方が大人びている。たぶん自分でしっかり考えながらやれると思います。コーチの人もいろいろ言うだろうし、自分で壁にぶつかるんでしょうけど、それを乗り越えられる力があるんじゃないかと思いますね。

清宮の打撃フォーム

(撮影:中原義史)


――打撃面は文句の付けようのない清宮ですが、守備や走塁面の評価はどうでしょうか?

西尾:足は遅くないですが、肩がちょっと……。横から投げていますよね。肩痛めちゃったらしいですよね、中学時代にピッチャーやってるときに。外野もやっていましたが、僕はファーストを守らせたほうがいいと思いますけどね。

小関:DHはないですよね。発想としてお客さんを呼ぶことも重要ですから、やはり守らせて見せる。人の視線に晒すことが大事だと思いますよね。

西尾:そう上手くはないですけど、ハンドリングはうまいですよね。

福田:うまいうまい。

小関:ゴロ処理はうまいですよ。

福田:ほとんどエラーしないですよ、シートノックを見てると。

小関:ああいう動きの遅く見える人って、落合(博満/前中日GM)さんや清原(和博/元西武ほか)もそうですけど、下手じゃないですよ。

福田:できる範囲でちゃんとやる。ファーストって守備機会も多いし、今では難しいポジションだと思うんですよ。ショートバウンドを取れるかどうかでアウトかセーフか全然違ってきますからね。そこらへんはちゃんとできるハンドリングのよさはありますからね。

西尾:野村(大樹/早稲田実2年)がサードを守っているときにイップス気味になったんですよ。一塁送球が変なバウンドになることが多くて。それも清宮のおかげで結構助けられていましたね。

小関:ショートバウンドをエラーする高校生って結構多いですよ。捕ってやれよっていつも見てしまうんですよね。そういうのが清宮にはないです。

――守備でもそれだけやれるなら本当に文句ないですね。

西尾:10年に一人とか、それぐらいの選手じゃないですか。

小関:この選手を文句言ったら他出てくる選手みんな言わないといけないですよ(笑)。

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