3000m&台風に屈しないド根性馬は? 空前の大混戦、菊花賞の競馬記者座談会

競馬専門紙「優馬」

競馬専門紙「優馬」トラックマン座談会

 今週は菊花賞。ダービーの上位3頭が不在の戦いとなるが、春の実績馬に対して夏の上がり馬が挑む構図は例年通りだ。出走全馬が未知となる3000mの距離で、波乱が起こりうるのか。優馬TM(トラックマン)陣が激論を戦わせる。

混戦の匂いは漂うが 上位はトライアル好走の3強ムード

前哨戦のセントライト記念を制したミッキースワロー(左)(撮影:日刊ゲンダイ) 【(C)競馬専門紙「優馬」】

デスク「今年はジャパンカップに直行するレイデオロを筆頭に、ダービーで3着までの馬が不在。となると、必然的にトライアル重視となりそうだな」

中邑「ダービー上位組が不在なら皐月賞上位組か、と見ることもできますが、ミッキースワローは、その皐月賞馬をセントライト記念で並ぶ間もなく交わしたわけですから、主役の座を譲れないでしょう。その前走は、鞍上に横山典騎手を迎えたことにより、デビュー以来初めて流れに乗るレースができていましたし、レースぶりからは距離延長も心配ないと見ています」

佐藤直「近年の菊花賞は坂を下ってからのラストでどれだけいい脚を使えるかが、勝負の分かれ目だよな。ミッキースワローは、上がり3ハロンが11秒7−11秒3−11秒0の加速ラップだった前走を差し切った内容が秀逸だし、距離も馬場も状態も不安はないと思うぞ」

小野智「内でピタッと折り合いが付いていた前走のセントライト記念は、それまでの乗り難しい馬、というイメージを一蹴するものでしたし、ジョッキーが替われば馬もここまで変わるのか、と思いましたよね。ロングスパートも利くタイプですし、距離が延びても鞍上の手腕から心配はないはずですよ」

デスク「ただ、これは出走全馬に言えることなんだけど、未知の距離ではあるんだし、あと今回は道悪の適性も重要なポイントとなるよな」

小桧山「その辺は自ら追い切りの手綱を取る菊沢師の言葉を信じるべきだと思うんだ。“ずいぶんと大人になったから、3000mでも折り合えると思うし、大丈夫だろう。前走くらいキレるかどうかはわからないが、他の馬も同じ条件だからね。馬場も他が苦にするのなら、ウチのはこなせると思う”と。秋華賞のアエロリットは残念だったけど、師は落ち込むこともなく、いつも通りに淡々と語ってくれたよ。その先週の借りは、同じ鞍上がしっかりと返してくれるんじゃないかな」

瀬古「ただ、アルアインはセントライト記念で2着に敗れたとはいえ、夏に1走していた勝ち馬に対して、こちらは次を見据えた仕上げでしたから、勝負付けが済んだわけではないと思います。この中間は調教を強化されて、直前の6ハロン追いは勝った皐月賞時と同じパターン。本番でキッチリ変わってくるはずですよ」

武井「加えて言うなら、セントライト記念はアルアインが苦手とする一瞬の加速力を要求される競馬になり、力負けというよりキレ負けした印象を受けました。今回は叩いた上積みが見込める上に、道悪が濃厚の馬場。過去2戦の道悪では、千両賞は内々を立ち回る器用さを見せての快勝で、シンザン記念は不利があっただけですから、道悪は鬼の部類かと思います。当然、逆転は十分可能でしょうね」

那谷「ルメール騎手は“追い切りでリラックスしていて状態は完璧。とても乗りやすくて3000mもイケるし、柔らかいフットワークなので馬場が重くても大丈夫”と、共同会見では終始ご機嫌だったよ。陣営も、操縦性と心肺機能の高さを強調しているし、皐月賞で見せた一旦下がりながら盛り返す“ファイトバック”からも、泥を被っても怯まない勝負根性があると思えるんだ。ダービーや前走のような瞬発力勝負では分が悪くても、タフな馬場での消耗戦なら話は別だよな」

デスク「とはいえ、同じトライアルでもセントライト記念組より神戸新聞杯組の方が好走例は多いんだよな」

須藤「勝ったレイデオロがいないのなら、2着のキセキに順当に順番が回ってきてもいいはずです。春の期待値にようやく身体能力が追い付いて来た感を受けますし、距離が延びてもキレ味が鈍らないことは前走で証明できたと思います」

那谷「ミルコは、セントライト記念で騎乗したサトノクロニクルにもかなり色気があったようだけど、最終的にはキセキを選んだわけだし、この馬に騎乗した騎手たちが揃って絶賛してきた乗り味の良さが魅力だよな。最終追いは雨を含んだ芝コースで軽快な動き。“大トビだけど、同じ道悪でも阪神より京都の方がマシにこなせると思う。距離もベストではないかもしれないけど、折り合いが付くタイプ。とても能力が高いので自信を持って乗りたい”というミルコの言葉を信じたいな」

目黒「前走で12キロ減っていたキセキの馬体重については“元々、馬体が細くなりやすいタイプ。回復と維持を意識しつつ、緩めずに調整してきたし、追い切りもしっかりやれました”と、辻野助手も話していたように、体調面は問題ないでしょう。木曜発表の調教後馬体重も490キロと維持できていますし、当日に大きな馬体減がなければ大丈夫でしょうね」

デスク「ただ、これまた3000mと道悪がやっぱり鍵だよな。父のルーラーシップは道悪が得意だったけど」

目黒「陣営がポイントに挙げていたのは距離よりも馬場でした。辻野助手は“前走も掛かりそうになりながら、ジョッキーがうまく抑えてくれていたので、最初の下り坂をスムーズにクリアしてリズムに乗れれば大丈夫だと思います。問題は馬場ですね。この馬は父のルーラーシップに良く似たフットワークですが、ルーラーほどのパワーはなく、母父ディープインパクトの素軽さがあるので、実戦でもキレ味を発揮しているのかもしれません。道悪で父と同じように走れるかは微妙です”と、少し不安気でしたね」

久光「良馬場ならともかく、悪化しての3000mは長いと思えるアルアインもそうですが、時計勝負が理想のキセキにとっては厳しい馬場になるのではないかと思うんですよ。スタミナ比べではともに割り引かざるをえませんし、僕は人気を考えても買う気が起こらないですね」

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著者プロフィール

競馬専門紙「優馬」のスペシャル競馬サイト。トレセンや競馬場という現場で記者やトラックマン達が仕入れてきた生情報を元に、予想記事やコラム記事を掲載しています。さらに、競馬ファンのニーズに対しダイレクトに応えていくようなコンテンツも展開。

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