外国人女性ジャーナリストが斬る凱旋門賞 日本馬は侮れない、だがオルフェ級か疑問

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斤量有利、馬場不問……不安材料の少ない不動の本命エネイブル

後続に5馬身差をつけ、圧巻の逃げ切りでヨークシャーオークスを制したエネイブル。(C)racingfotos 【netkeiba.com】

 今年の凱旋門賞には確固たる中心馬がいる。エネイブルがその馬だ。J・ゴスデン調教師が手がけるエネイブルは、大本命だったロードデンドロンを5馬身引き離して英オークスを勝った時から常に凱旋門賞の有力候補と目されてきた。その印象的な切れ味とスタミナ溢れる走りは2400mで争われる凱旋門賞にはうってつけだし、それ以上に牝馬ということも大きな追い風になるからだ。

 ザルカヴァ、デインドリーム、トレヴが凱旋門賞でライバルを一蹴したこともあって、凱旋門賞において3歳牝馬が斤量面で有利であることはここ何年にもわたって議論されてきた。ユリシーズやオーダーオブセントジョージよりも4.5キロも軽い斤量で出走できるのはエネイブルにとって大きなアドバンテージであることは明らかだが、もしこの斤量差がなかったとしても、1番人気に値する馬である。というのも、エネイブルは今年のキングジョージVI世&クイーンエリザベスSで、6kg重い斤量を背負ったエクリプスSの勝ち馬ユリシーズに4馬身半差をつけて勝っており、1.5キロの斤量差が1馬身差に相当すると考えると、仮に斤量差がなかったとしてもエネイブルはまだ半馬身差で勝っている計算になる。

 名伯楽であるゴスデン師が「もし一頓挫なければ、これまでの管理馬のなかで最も凱旋門賞を勝つチャンスがあった馬」と思ってきたナサニエルを父に持つエネイブルが、極めて才能に恵まれた馬であることは間違いない。“キングジョージ”では底が抜けたような重馬場で勝ち、一方の英オークスでは堅い馬場で優勝したようにどんな馬場にも対応できる。

 あと、エネイブルに必要なのは少しの運だけだろう。凱旋門賞は最後の直線でゴチャつきやすいことで知られているからだ。

サトノダイヤモンド、上昇の余地は大きいが

シャンティイで開催される凱旋門賞も今年が見納め。来年は新装なったロンシャンでの開催予定。(C)高橋正和 【netkeiba.com】

 今年が最後の凱旋門賞開催となるシャンティイ競馬場は、ロンシャン競馬場と比べてゲート順はあまり重要ではない。しかし、それでもなるべく内を通りたいと考える騎手は多い。それはまさしく昨年R・ムーア騎手がファウンドで行ったことで、今年ムーア騎手がどの馬に騎乗するのかはまだわからないが、間違いなく同じことをしようとするはずだ(編注:ウィンターに騎乗決定)。エネイブルはとても強い馬だが、そのほとんどがGI馬であることを思えば、他の出走馬を過小評価するのは誤りだ。

前哨戦のフォワ賞で、サトノダイヤモンドに3馬身以上の差をつけて優勝したドイツ調教馬のチンギスシークレット。Scoop/Dyga・TIS(C) 【netkeiba.com】

 決して侮ってはいけないのは日本の調教馬だ。まだ凱旋門賞を勝ってはいないものの、オルフェーヴルで2年連続して2着に入った池江泰寿調教師の管理馬なのだからなおさらだ。サトノダイヤモンドはオルフェーヴルとはまったくタイプの異なる馬で、前哨戦のフォワ賞では精彩を欠いてドイツのチンギスシークレットから3馬身以上離されてしまったが、この敗戦は見た目ほど悪くはなかったかもしれない。オルフェーヴルが証明してしまったように、フォワ賞を勝った馬がそのまま凱旋門賞を勝つことがまれであることはよく知られているし、ここを使ったことで次はもっと良くなるはずだ。手綱を取ったC・ルメール騎手が「まだ本調子ではない」とレース前から非常に慎重だったことを考えれば、上昇の余地は大きい。

日本のファンの期待を背負って出走するサトノダイヤモンドは、前哨戦の雪辱なるか? 写真は2016年有馬記念。(C)下野雄規 【netkeiba.com】

 だが、私はサトノダイヤモンドがオルフェーヴルと同レベルにある馬なのか、確信を持てていない。凱旋門賞はスタミナを必要とするレースではあるものの、非常に大切なのは最後の直線における瞬発力であり、それはディープインパクトを父に持つこの牡馬を必ずしも有名にさせたものではない。

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