外国人女性ジャーナリストが斬る凱旋門賞 日本馬は侮れない、だがオルフェ級か疑問

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ユリシーズ、ウィンターの瞬発力は魅力

 一方、ユリシーズは、1番人気だったチャーチルを2馬身差突き放した英インターナショナルSで見せたように、素晴らしい瞬発力の持ち主だ。私はユリシーズを昨年の英ダービーに出走した頃から高く評価していたが、ユリシーズにとっては英ダービー挑戦は時期尚早だった。しかし、今年4歳を迎えた彼は、まるで良質のワインのように、時が経つにつれて、ますます良くなっている。どんな馬場にも対応できるこの馬が、もし3着以内に入らなければとても驚きである。当初はBCターフに向かう予定だったにもかかわらず、予定を変えて凱旋門賞出走に踏み切ったことを考えると、陣営は“キングジョージ”でエネイブルに敗れたときよりも今回は差を縮められると思っているに違いない。

 もし、A・オブライエン調教師が3歳牝馬のウィンターを参戦させるようならとても魅力的な出走馬になる。この芦毛のガリレオ産駒は今年牝馬のマイル〜中距離路線を席巻した後、レパーズタウン競馬場で行われた前走の愛メイトロンSで同厩舎のハイドランジアに敗れたが、これには多くの敗因があるのだ。

 まず、ひとつ目としては調教を休んでいた時期があったことが挙げられる。そしてふたつ目として、今のウィンターには距離が足りなかったと思うからだ。だから、凱旋門賞で2400mに初めて挑むことに非常にワクワクしている。ウィンターはいい切れ味の持ち主で、もし距離がもてば、エネイブルと接戦を演じることができると思う。

今年はやや劣勢気味のフランス勢。巻き返す可能性は?

 ひょっとしたら、読者の方々は私がここまでフランス調教馬について少しも触れていないことを不思議に思っているかもしれない。そう、残念ながら今年のフランス勢はそれほど強くないと思っているのだ。A・ドゥロワイエデュプレ調教師が管理するザラックは、シャンティイ競馬場ではあまり好成績を残せておらず、もっと平坦なコースに向いているように映る。距離は問題ないし、切れ味もあり、才能に恵まれた馬だが、いわゆる“バリバリのGIホース”と呼べるまでの存在ではないのだ。ただ、彼はサンクルー大賞で見せたように闘志のある馬で、それはプラス材料だろう。

 J・C・ルジェ調教師のブラムトについて言えば、彼は仏2000ギニーと仏ダービーを制した時点では真のスーパースターのように見えた。しかし、復帰戦のGIIギヨームドルナーノ賞で完敗。勝ったエミネントとの差は9馬身もあった。そこから巻き返して凱旋門賞のような大レースを勝つのは非常に困難だ。ルジェ厩舎はシーズン当初ウイルス感染に見舞われ、多くの馬は本調子を取り戻すのに時間がかかった。とても残念なことである。また、仏2000ギニーと仏ダービーで入着した馬を見ると、その後まだ誰もGIを勝てていない。そう考えると、今年のフランスの3歳牡馬はあまり強くはない世代だと思えてくる。どれだけ出走馬を分析してみても、やっぱり本命はエネイブルだ。

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文:Liz Price(リズ・プライス)/訳=秋山響(TPC)
 95年にソルボンヌ大学卒業後、レーシングジャーナリスト、コメンテイターとして活躍。現在、フランスを中心とした世界の競馬事情について、地元のパリチュルフ紙やアットザレイシーズなど、さまざまな媒体を通じて発信している。

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