エース藤澤を救った元「戦力外」の笑顔 看板に頼らず五輪決めたLS北見

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「自信は伝染する」

カーリングはメンタルのスポーツ。チームを盛り上げるため、吉田知(右)はあえて笑顔を見せるように意識していたという 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 生まれ育った地でふたたび大好きなカーリングに励んだ吉田知は、レギュラーとして2015年には日本勢10年ぶりのパシフィックアジアカーリング選手権優勝、16年には世界選手権で史上初の銀メダル獲得とチームに貢献し続けてきた。

 そして今回の代表決定戦にあたり、あえて意識したことがある。チームにポジティブな雰囲気を作り出すべく、持ち前の明るい性格で盛り上げ役に努めたのだ。表情豊かな吉田知は、カーリングはメンタルのスポーツでもあることから、以前は試合中に表情の変化を出さないようにしていたと言う。それが今大会はショットを決める度、弾けるような笑顔を見せてくれた。

「五輪トライアルで地元の人たちがみんな見てくれているので、この大会くらいは自分のなりたいカーリング選手像でいたいなと。(理想の選手像は)自分がいることで他の3人のパフォーマンス、ショット率が上がる選手です。自信は伝染する、自信の欠如も伝染する。と、誰かが言っていました(笑)。勝つ意志だったり自信だったりがチームに伝染したらいいなと」

 LS北見と中部電力を比較すると、試合中も、試合以外の場面でも、LS北見の方に笑顔や笑い声が多く見られた。もちろん個々の性格もあり、チームの方針もある。どちらが良いと一概には言えないが、もし自信が伝染するのだとしたら、あの満面の笑みが他のメンバーに与えたものは大きいだろう。

五輪で試される精神力

スキップの藤澤(中央)を含め、吉田夕梨花(左)と鈴木夕湖(右)には五輪出場の経験がない。平昌では重圧との戦いにも打ち勝つ必要がある 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】

 LS北見の創立から7年にして、ついにつかんだ大舞台へのチケット。その平昌五輪へはもう半年を切っている。06年トリノ五輪、10年バンクーバー五輪と大舞台を2度経験している本橋は、「残り5カ月なのですごくダイナミックに何かを変えるということはないです。あの場にのまれない精神力、自分のスタイルを貫く精神力を貫き通せるか。精神的な強さが大事になってくる期間でもあります」と本番までの過ごし方を逆算してみせる。

 世界選手権銀メダルの実績を持つLS北見とはいえ、五輪でかかるプレッシャーは他の大会とはまた異質のもの。特に自身の一投でチームの命運を左右するスキップへの重圧は計り知れない。藤澤は26歳にして日本選手権5度の優勝を数えるが、五輪出場は初。「私はまだ五輪の重圧だったりが分からなくて、これからかかるプレッシャーも正直あると思う」と語ったのは、正直な思いだろう。

 チームの今季レギュラーを見渡すと、五輪の経験を持つのは吉田知しかいない。チーム内外の評価や信頼も、これまでの活躍から4年前とはまったく異なるものになっている。「そう言ってもらいたくて頑張ってきたところもあります」と笑う吉田知。一度は完全に失った自信を、新たな環境で取り戻した。

 平昌でも彼女の笑顔がメンバーに自信を与えれば、チームは吉田知にさらなるパワーを返してくれるはずだ。そんなポジティブ・スパイラルが機能した時、LS北見は世界選手権に続いて五輪のメダルも日本に届けてくれるかもしれない。

(取材・文:藤田大豪/スポーツナビ)

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