凱旋門賞 特別インタビューvol.01 「勝たなければ、なにも始まらない」

JRA-VAN

「オルフェとサトノ、総合力なら五分と五分」

ライバルは強力だが、「オルフェーヴルと比較しても総合力は五分と五分」と池江調教師(左)は自信を見せる(中・ルメール、右・里見オーナー) 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 今年の凱旋門賞も、当然ながら手強い相手が揃った。海外の情報は騎手や調教師との情報交換で仕入れている「アナログ派です」という池江師だが、それにしても詳しい。インタビューの時点でサトノダイヤモンドと並ぶ2番人気に支持されていたアルマンゾルについて、「休み明け初戦(8月15日のゴントービロン賞(仏G3)の内容があまりにも悪かったですからね。このまま引退という線もありそうです」と予言するなど、情報の精度は非常に高い。

 その師が最も警戒しているのはエネイブル(牝3歳、仏、ジョン・ゴスデン厩舎、8戦7勝)で、「キングジョージを勝った直後にルメールから電話があり、“あれは相当強い”と言っていました。3歳牝馬なので、斤量も54.5キロ。こちらは59.5キロですから楽ではありません」という見立て。その後、8月24日のヨークシャーオークス(英G1)も5馬身差の楽勝を演じており、これでG1を4連勝と勢いもピークだ。凱旋門賞では突き抜けた1番人気になるだろうし、サトノダイヤモンドとしても難敵に違いない。それでも、もちろん前を向く。

「本番は100%で臨む、と大見得を切りたいですが、それは狙うほど難しいんです。でも、90%以上を狙うのはいまなら難しくない。今回は自然に95%ぐらいにはなっている? はい、そう思っていてください。もちろん、僕自身がワクワクしていますよ。オルフェーヴルとサトノダイヤモンドを比較すると、爆発力ならオルフェーヴルが上位ですが、精神面の完成度をはじめ、総合力なら五分と五分。そういう馬を連れて行くわけですから、勝てる可能性は十分にあると踏んでいます」

「扉の重さは嫌というほどわかっている」

欧州のトップトレーナーに敬意を払いつつも「まずは凱旋門賞の牙城を崩すことから始めなければ」と池江調教師は熱く語る 【Photo by Kazuhiro Kuramoto】

 日本の競走馬のレベルは限りなくトップクラスに近づいているというのが池江師の感覚。ただし、「それを扱うホースマンのレベルを比較するとまだ開きを感じている」とも言う。ホースマンの層の厚さ、そしてトップトレーナーたちが持っているセンスの高さに圧倒されるものを感じることがあると言うのだ。

「調教後の息遣いを手がかりとして、管理馬の体調の変化を全て感じてしまう力があるのが欧州のトップトレーナーたちです。私たちはそのセンスの高さをリスペクトしながら、まずは凱旋門賞の牙城を崩すことから始めなければいけないんです。まず凱旋門賞を勝たなければ、なにも始まらない。扉の重さは嫌というほどわかっているけど、こじ開けなければいけないと思っています」

 池江師の決意は固く、熱い。

(text by Ryozo Katayama)

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