ACL準々決勝、川崎先勝の鍵は阿部と憲剛 浦和の“付け焼き刃”の対策は奏功せず
「3−5−2」に布陣を変更した浦和
ACL準々決勝第1戦はホームの川崎が3−1で先勝した 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】
だが、この日の浦和レッズは川崎フロンターレに対して、あまりにリスペクトしすぎてしまった。
川崎のホームで行われた8月23日のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)準々決勝第1戦は3−1で川崎が先勝した。堀孝史監督を迎えて5試合目となる浦和は従来の「3−4−2−1」ではなく、中盤の中央を3ボランチにした「3−5−2」でこの試合に臨んだ。その狙いについて、3バックの右に入った遠藤航が明かす。
「まずは真ん中を締めようという意図でした」
その背景にあるのは、19日に行われたJ1第23節、FC東京戦における好感触だ。
大久保嘉人が前線から中盤に降りるFC東京の攻撃に手を焼いた浦和は、前半の途中から2シャドーの一角である武藤雄樹が中盤に下がり3ボランチ気味にして、中央を締めて外に追い出すような守備で対応。2−1と勝利を飾った。堀監督が言う。
「FC東京戦でもそういう形をやったんですけれど、川崎とやるにあたって、やはり中央からの攻撃を防ぎたいと考えました。FC東京戦はちょっと違った意図で中盤に3枚の選手(青木拓矢、阿部勇樹、矢島慎也)を置く形になりましたけれど、それでやることができるんじゃないかと思いました」
カウンターの機会すら与えず、川崎が完勝を収める
浦和は武藤(9)のゴールで一矢を報いたが、付け焼き刃の対策は川崎の前には通用せず…… 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】
「真ん中を消してきたら、外から攻めればいいし、外を埋めれば中が空く。そういうことが自分だけじゃなく、みんなが分かってきている。人を見ながら、相手を見ながらやれるようになってきたと思う」
そう語ったのは、中村憲剛だ。焦らず、冷静にボールを動かしながら、人が出ていく。とりわけ相手の3ボランチを横に揺さぶり、体力とボールへの執着心を削ぎ取っていく。たとえボールを失ったとしても、攻守を素早く切り替え、激しくいって回収する。
浦和には左ボランチの矢島が攻撃の際に2シャドーのポジションに上がる狙いがあったが、川崎は浦和にカウンターの機会すら与えなかった。中村が続ける。
「クリアが精いっぱいのところまで追い込んでいたので、いけるかなというイメージが自分だけでなく、みんなにあったと思う」
その中村のドリブル突破から小林悠が決めて33分に先制すると、50分にはエドゥアルド・ネットのスルーパスを受けた小林がシュート。GK西川周作がはじいたところを、エウシーニョがボレーで決めてリードを2点に広げた。
76分にはオフサイドラインを掻いくぐられ、武藤のゴールで1点差に詰め寄られたが、85分にはドリブルで左サイドを崩した家長のクロスを小林が頭で決めて突き放す。浦和にとって試合直前に柏木陽介が負傷したのは不運だったが、川崎の完勝と言っていいゲームだった。
難しい時間帯で存在感を示した阿部
G大阪時代に4度の優勝経験のある阿部(8)が存在感を見せた 【写真:西村尚己/アフロスポーツ】
3点目を取りにいくのか、そのまま逃げ切るのか――。
「正直に言うと、後ろとしてはちょっとリスクを負いたくないなと思っていました」と、センターバックの奈良竜樹は明かす。
この時間帯で、攻撃のビルドアップの際に冷静にボールをディフェンスラインに戻し、「落ち着け」というジェスチャーを何度も繰り返していたのが、阿部だった。
「点を取りにいこうと急いでいるように感じたし、それでカウンターから点を取られるのが最悪なケースなので。1度落ち着かせて、最悪2−1でも勝ち切ればいいと僕は思ったので、そういうふうに伝えました」
結果的に3点目を奪って突き放したが、仮に2−2にされればチームの置かれる状況が一変するのがトーナメント戦の恐ろしさ。そこでゲーム中に冷静に判断し、周りに指示が出せる阿部の存在と経験は貴重だ。