速く走る感覚を“脳”に覚えさせよう 速く走りたい人のための『猫トレ』講座(5)

芸部歩人

【写真提供:ワハハ本舗】

 お笑い芸人・猫ひろしさんのマラソントレーニングを紹介するこの『猫トレ』講座(『猫トレ 猫ひろしのマラソントレーニング』/ベースボール・マガジン社)。今回が連載の最終回となります。最後のテーマは「スピード感覚」です。

 東京・神保町にあるランニング専門ジム「ハイテクスポーツ塾」には、スピード感覚を身に付けるための機器が設置されていますが、どれも「速く走る感覚」を脳に覚えさせる効果があります。

 今回は連載の最後ということで、中島進コーチからランナーのみなさんへ速く走るためのアドバイスももらいました。

速く走る感覚を長く続けること

――最後のテーマは「スピード感覚」となります。スピードをつけるために必要なトレーニングはどんなことになりますか?

 スピードというのは「ピッチ×ストライド」によって生まれますが、ストライドは以前お話した骨盤を使ったローリング走法のフォームを身に付けることなどで、効率的に伸ばすことができます。
 ピッチに関しては速く筋肉を動かすことがスピード向上につながります。ハイテクタウンの中には時速36キロまで出せる高速トレッドミルがありますが、100メートルを10秒で走るスピードです。これを利用することで速く走る感覚をつかむことができると思います。

 また「ドリームハンター」という機器があり、これは空気で体を持ち上げ、体重負荷を50%まで軽減して走れるトレッドミルです。この機器を使って、速く走っている時間を長く保つことで、脳にその動きを覚えさせる効果もあります。

 そういう機器がない場合は、下り坂を走ってみたり、バイクで引っ張ってもらったりして、まずは速く走る感覚を覚え、脳にその回路を作ることが大切です。

猫さんは今月19日に開催される東南アジアのオリンピック「SEAGAMES」にもカンボジア代表として出場! 【写真提供:ワハハ本舗】

――スピード強化の基本的なトレーニングといえば、『猫トレ』の中でも猫さんが「1番キツい」と話していたインターバル走などがありますが、そのなかでも効果的な方法はどんなトレーニングになりますか?

 毎日の練習は、同じ速度で同じ距離を走るのではなく、速く走ったりゆっくり走ったり、長く走ったり短く走ったりとバラエティーに富んでいた方が良いです。またいろいろな条件を体と脳に覚えさせていくことが大事です。その方が効率がいいし、パフォーマンスは上がります。その中でインターバル走というのは欠かせないトレーニングです。

目的や目標を持って走ろう!

――速く走る練習と長く走る練習、その割合はどのようにしたら良いのでしょうか?

 人によって割合は違いますが、私は目標とする大会の3カ月ぐらい前は長い距離をやって、1カ月ぐらい前になったら短い距離でスピードをつけます。真ん中は両方を組み合わせていくという基本的なラインは持っています。インターバル的なキツい練習というのは1人ではやりづらいです。そういう場合はランニングクラブに入り、切磋琢磨(せっさたくま)しながら走ったり、人に引っ張ってもらったりするのが良いと思います。

 ただ逆に、引っ張ってもらわなきゃ走れないランナーではダメなんです。自分でそれができるような精神状態を作っておかないと、本番に弱くなってしまいます。だから猫さんもポイント練習はほとんど1人でやっています。従って、後半の落ち込みが少なく、自分でレースを作れます。

猫トレ講座に協力していただいた「ハイテクスポーツ塾」の中島進コーチ(左)と佐藤浩華さん 【スポーツナビDo】

――インターバル走の距離や本数の設定については?

 インターバル走は、パフォーマンスを上げるために最適と昔から言われている方法です。実施する時は目一杯追い込めばいいと思います。例えば1000メートルを5本やって、1本目と5本目が同じタイムで行かなきゃダメだというルールはありません。変に調整して5本目だけ息が上がるようにするのではなく、5本全部疲れたとなるほうが良いです。例えば1本目は3分で走って、5本目は4分かかっても、これはこれで良いと思います。
――さて今回でこの連載は最後となります。最後にランナーの方たちへ速く走るためのアドバイスをお願いします。

 やっぱり毎日走ることです。よくいろいろなところで「メニューを作ってください」と言われるのですが、私が作るメニューは休養日はなく、毎日走ってもらうようになります。1キロでも2キロでもいいから走る。これは走ることを習慣化させることが目的なんです。どんなに疲れていても、短い距離であればできると思いますので、どこかで時間を見つけて毎日走る習慣をつけて欲しいです。

 あとはやる気を起こさせるには目標が必要だと思います。目標はそれほど大げさなものでなくて良いと思いますが、海外マラソンであったり、「あいつには負けたくない」というライバル心でもいいですし、「格好いい体になりたい」というのでも良いです。しっかり目的や目標を持って、走ることが大切だと思います。
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著者プロフィール

げいぶ・あると。体験系取材を中心に活動し、「2代目スポーツ冒険家」を自称する40代目前ライター。名前は映画『クリフハンガー』の主人公ゲイブ・ウォーカーから

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