フォームの基本は“ローリング走法” 速く走りたい人のための『猫トレ』講座(2)

芸部歩人

【坂本清】

 お笑い芸人ながら、カンボジア代表としてリオデジャネイロ五輪の男子マラソンに出場した猫ひろしさん。そんな猫さんのトレーニング方法をまとめた書籍『猫トレ 猫ひろしのマラソントレーニング』(ベースボール・マガジン社)の中から、実際のトレーニングを紹介するのがこの企画。

 今回は「フォーム改善」について、猫さんのコーチでもあり、東京・神保町にあるランニング専門ジム「ハイテクスポーツ塾」の主宰者である中島進さんに話を聞きました。

速く走るためには速く走るためのフォームがある!

フォーム改善には、正しいフォームを脳に覚えさせることが大事 【スポーツナビDo】

――猫ひろしさんを五輪選手に導いた『小林寛道先生理論』における4つの柱(フォーム・筋力・スピード感覚・心肺機能)の中から、まずはフォームについて教えてください。

 一般的に時速8キロを境にして、ウォーキングとランニングのフォームというのは分かれてきます。もしウォーキングのフォームで時速15キロで走るとなると、それこそ競歩で金メダルを取る選手のように汗をビッショリかきますし、とてもキツいです。ですから速く走るには“速く走る形”というものがあって、それがフォームなんです。みなさんは速く走ろうと思ってランニングに取り組んでいるのですから、そのフォームを会得しなければなりません。

 速く走れるフォームというのは、『猫トレ』にも書いてありますが、足の接地時間を短くして、足を自転車のペダルを漕ぐように、タイヤが回るようにする走り方“ローリング走法”になります。そのために腰の大腰筋を使って走ることが基本です。

 この走り方だと、皇居1周(5キロ)を30分ぐらいで走る人(1キロ6分ペース)にはキツいフォームなんです。「ゆっくり走る時はそれに合ったラクなフォームで走れ」と教える方もいますが、私たちの理論で言うと、その点は違います。

 最初から「速く走るためのフォーム」を習得しないといけなく、ゆっくりの時も、上がり坂や下り坂を走った時も、もちろん見た目は変わりますが、基本的には同じ形で走っていくことが大事です。

 速く走るフォームが1000メートルしか保てないのであれば、5000メートルまで走れるようにトレーニングする。そして5キロまでいけたら、10キロ。次は、ハーフ、そしてフルマラソンをその形で走れるようにします。そうすれば足を引きずるようにラクに走るよりも、結果的には全然速くなります。

動かしながら鍛えることが大事

――では、その速いフォームのポイントとなるのはどんな点でしょうか?

 先ほども言いましたが、接地時間を短くし、足を前後に動かす筋肉=大腰筋というインナーマッスルを使って走るのが1番速く走れます。

 例えば猫さんは、フルマラソンを4時間を少し切るぐらいの時はまだ大腰筋が細かったです。ですが、3時間を切った頃にMRIで撮影してみたら、ずいぶん太くなっていました。やはりそれはインナーマッスルを使えるようになったからです。逆に言いますと、そこを鍛えたから速く走れるようになったとも言えます。ですから、そのインナーマッスルを使ったフォームを作り上げるのがポイントです。

<フォームを改善するトレーニング>
――フォームにおける体の使い方・動かし方についてもポイントを教えてください。

 走るさいのスピードはピッチ(歩数)とストライド(歩幅)の掛け算になるので、歩数が同じでもストライドを伸ばせば、スピードを上げることができます。ローリング走法のポイントは骨盤の動かし方で、ローリングが大きいか小さいかで、これによってストライドを伸ばします。

 このとき、腰骨の横にあるでっぱりが前後ではなく円を描くように注意してください。右脚が前に出るときは腰の右側が前に出て、左脚が前に出るときは腰の左側が前に出ます。

 右の腰骨を上げたあと、前に出して下ろす。このとき左の腰骨は下がったところにあって、後ろに回ってから上に上がる。この骨盤の動きを意識しながら歩いて、そこから走りへ繋げていくといいと思います。さらに地面の反発をもらいながら走ってください。

――「ハイテクスポーツ塾」にはフォームを作るためののマシンが導入されていて、ゆっくり動作することで脳にフォームを覚え込ませますが、最初はこの骨盤を作った歩き方でもなかなか難しいですね。

 あと、着地するとき足首が内側に倒れる動きを「プロネーション」といって着地の衝撃を吸収する動きでもあるのですが、これが大き過ぎると「オーバープロネーション」といって、足首や膝、腰でしたり故障の原因になります。

 オーバープロネーションになるのは踵の「外側」から着地する走り方をしているからで、これだと足首が内側へ倒れやすくなります。これを解決するには体の右側と左側に軸があって、体の前にある2本の線の上を走っていくイメージの「2軸走法」を取り入れるとよいと思います。脚を地面に対して垂直にする、これだと踵の後ろから、あるいは中足部からの接地になるので足首のねじれが起きにくく、故障のリスクが少なくなります。

 基本は骨盤を回すローリングの動きで、2軸の動きをその上に乗せるようなイメージをするとよいと思います。

(次回は、ランニングに必要な筋力についての具体的なトレーニングです)
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著者プロフィール

げいぶ・あると。体験系取材を中心に活動し、「2代目スポーツ冒険家」を自称する40代目前ライター。名前は映画『クリフハンガー』の主人公ゲイブ・ウォーカーから

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