「育成日本復活」へ、審判委員会の改革 審判を理解してもらえる環境を目指して
さまざまな改革を進めるJFA。審判委員会の取り組みを小川佳実審判委員長に聞いた 【写真:松尾/アフロスポーツ】
今年6月から7月にかけて行われたコンフェデレーションズカップ(以下、コンフェデ杯)において、若いプレーヤーを擁するドイツが内容の伴った戦いぶりで優勝を果たした。それを見て、小川は「審判はその国の選手と試合によって育てられていく」と語る。JFAの審判委員会として、今後どのような取り組みを行うのか。その概要とビジョンを聞いた。(文中敬称略)
「その国の審判とサッカーのレベルはリンクしている」
W杯で主審を務めた西村雄一。日本にも「世界基準」の審判員がいる 【写真:Maurizio Borsari/アフロ】
「日本のサッカーが継続的に将来、発展していくためには、少なくとも、常に5年後、10年後を見据えた育成プログラムを考えないと大変なことになります。田嶋(幸三)会長のキーワードは『育成日本復活』です。
その育成に関わるのは指導者ですから、審判指導者の養成も大切です。AFCもコーチのライセンス制度がありますが、日本のメソッドを参考にしています。日本はアジアにおいては制度面においても常に最先端を歩んでいます。また、日本人の審判もすごく信頼されていて、審判指導者も出ています。ワールドカップ(W杯)でも継続して日本人審判が笛を吹いている。これは簡単なことではありません。ですが、これは今まで頑張った結果であって、将来を保証するものではない。なので、将来を見据えて都道府県や市区町村レベルから審判員を育成することが必要です。
もう1つ必要なのは審判に関わる人、審判員を育成、審判指導者を養成する人たちにきちんとしたカリキュラム、プログラムと教材を提供し、どのような審判が求められているかというコンセプトを伝えていくことです。その国の審判のレベルとサッカーのレベルはリンクしています」
日本人にも、前審判委員長の上川徹や、西村雄一をはじめ「世界基準」の審判員がいる。日本と世界の差はどこにあるのか。
「欧州はサッカー全体のレベルが高い。そうなると、レベルの高い審判も数多く必要になるわけです。1人でも多くのトップレベルの審判員を育てなければならない。でも育てるためには、試合環境が必要なんです。
サッカーのレベルを上げるためには、審判のレベルを上げなければならない。でも審判のレベルを上げていくためには、ただただ批判していてはいけないし、それでは逆に下がっていく。そこで、組織として何をすればいいのかということです」
各地域に配置される「RDO」とは?
審判員の育成環境を充実させるために、小川はRDOの配置を決めた 【スポーツナビ】
「審判も選手と同じで、常に入れ替わっていく。 何年後かには必ずリタイヤします。だから常に準備をしておかなければならない。JFAとしては47都道府県すべてに対して責任があるんです。地域それぞれのレベルを上げない限り、トップのレベルも上がらない。ということは、それぞれに派遣される審判員も一緒にレベルアップしていかなければなりません。
例えば、審判がミスをした時、どうしてこんなミスをしたんだと罵倒されますよね。ただ、レフェリー自身はミスをしたことは認識している。それは申し訳ないと思うけれど、一生懸命やった上でのミスをたたかれすぎることは厳しいです」