【UFC】ジョン・ジョーンズは本当に再生したか? コーミエ戦で「自分の人生を取り戻す」
破格の若手だったジョーンズ
「ジョーンズはYouTubeでプロレスの動画を見て技の研究をしたらしい」との逸話が広がり、その逸話通りの、「リアルファイトでこんな技が本当にできるのか!」との驚きに満ちた戦い方で白星を重ねた。
そして11年3月、「UFC 128」でマウリシオ・“ショーグン”・フア(ブラジル)を下し、UFCライトヘビー級ベルトを史上最年少(23歳8カ月)で獲得する。戴冠後にはクイントン・ランページ・ジャクソン(米国)、リョート・マチダ(ブラジル)、ラシャド・エバンス(米国)という3人の元王者を簡単に退けてタイトルを防衛しており、まさに異次元の強さに、誰もがジョーンズの長期政権を確信したものだった。
この頃、UFC会長のデイナ・ホワイトは「取り巻きも増える。よからぬ輩(やから)も寄ってくる。ここから本当の試練が始まる」と語っている。
深まるコーミエとの確執
エバンスに勝ったわずか1カ月後の12年5月、ジョーンズの運転するベントレーが電柱に激突する自損事故が発生。ジョーンズは駆けつけた警官に飲酒運転の疑いで逮捕される。車にはジョーンズの恋人ではない女性2名が同乗していた。
その後、「UFC 178」での対戦が内定していたダニエル・コーミエ(米国)とジョーンズが初めて顔を合わせたのは14年8月に開かれたイベントでのこと。フェイスオフの際、ジョーンズが見下すようにコーミエに額と額をあわせたところ、怒ったコーミエがジョーンズを突き飛ばし、ジョーンズもパンチで逆襲、そこから収拾の付かない大乱闘が繰り広げられた。吹き飛ばされるUFCスタッフ、崩れ落ちるバックパネル……。会場のMGMグランド・ガーデン・ホテルのロビーで、人が逃げ惑い、物が飛び交う修羅場の中、ジョーンズは狂気の咆吼(ほうこう)で勝ち誇っている。
さらにその夜、両選手は『ESPN』の看板ニュース番組『Sports Center(スポーツセンター)』に出演。放送中こそ騒動に対する謝罪と反省の弁を述べていたジョーンズだったが、“ON AIR(オンエア)”の赤いランプが消えたとたん、コーミエに「貴様を本当に殺してやる。比喩ではなく、文字通りにだ」と脅迫したのだった。この時の動画は後にUFCのプロモーションビデオで繰り返し公開されることとなる。
しかしながら、ジョーンズが練習中にヒザを負傷したことから仕切り直しを強いられ、両者は15年1月に行われた「UFC 182」で対戦。ジョーンズは五輪レスラーのコーミエから3回もテイクダウンを奪ってみせ、ユナニマス判定勝ちでタイトル防衛に成功した。
ただ、この試合後、14年12月に実施されていたジョーンズの抜き打ち薬物検査の結果が発表され、コカインが検出されたことが判明する。競技期間外のコカインは本来検査対象ではないため、処分対象とはならなかったものの、ビッグマッチの前にコカインを使っていたことは驚きを持って受け止められた。