【UFC】地元で背水の陣に臨むワイドマン 『ロッキー』で「ハングリーさ取り戻せ!」
地元ロングアイランド出身のクリス・ワイドマンが背水の陣で臨む 【Zuffa LLC】
ワイドマンの裏庭、ナッソー・コロシアム
「マディソン・スクエア・ガーデンは世界で最も歴史的な会場として知られているけれど、ロングアイランド出身の僕にとってはナッソー・コロシアムこそがホームなんだ。ここは俺たちの誇りであり、喜びでもある。俺にとっては、ここ以上の場所はない。だから、この場所のど真ん中に立ち、満員の観客の視線が自分に注(そそ)がれるというのは、まさに夢がかなったようなものなんだ」
ワイドマンは、この会場の向かいにあるナッソー・コミュニティ・カレッジで2度、さらに隣接するホフストラ大学で2度、オールアメリカンレスラーに選ばれている。現在の所属先のロンゴ&ワイドマンMMAは会場からわずか数ブロック先だ。
連敗脱出を期して試行錯誤
3連敗を喫しているワイドマンにとって、地元での戦いは「ハングリーさ」を取り戻して連敗脱出を狙う 【Zuffa LLC】
前回の試合(17年4月「UFC 210」)ではゲガール・ムサシ(オランダ)に敗戦を喫した。ただし、ムサシの放ったヒザ蹴りがいったん反則と見なされたにもかかわらず、ビデオ判定により判断が覆り、テクニカルノックアウト負けを宣告されたという経緯もあり、ワイドマンは裁定を不服としてニューヨーク州アスレティック・コミッションに提訴している。その結論はまだ出ていない。
それはそれとして、映画『ロッキー3』を見たというワイドマン。作品序盤のロッキー・バルボアはすっかりセレブ気取りで、トレーナーのミッキーから“お前はハングリー精神をすっかりなくしている”と叱責(しっせき)される。このシーンを目にしたワイドマンは思わずロッキーに我が身を重ねてしまったのだという。
「ロッキーはいい家に住み、家族もいて、すべてがうまくいっていた。思えば自分のキャリアは実家の地下室から始まった。当時は何も持っていなくて、マウスピースも床に放ってあるような状態だった。ちょうど『ロッキー1』のような、汚くて古いジムだったんだ。だから、これって自分のことでは……と、ピンと来たんだ。そこで、妻に、今から実家に戻る、実家の地下室でキャンプを張る、と宣言した」
実際に荷造りまでして家を出ようとしたワイドマンだったが、3人の子どもとの別れ際にふと我に返り、「いや、俺は家族と一緒にベルトを取り戻すんだ」と思い直して涙を流したのだという。
結局、ワイドマンはバッファローの実家には戻らず、自宅で使っていなかったゲストルームに家庭内引っ越しを決行した。
「まるで別のアパートに暮らしているみたいだよ。その部屋で眠っている。子どもに会いたい時には会うけど、できるだけ一人で部屋にいて、読書したりしている」
これでワイドマンが白星街道に戻れるのかどうかは分からないが、ロッキーと同じように、ワイドマンもハングリーさを取り戻そうと試行錯誤していることは確かだ。3連敗中にも、決して実力負けをしているとは感じていない、むしろ試合の大半は自分が制していたと語るワイドマン。地元ファンのためにも、今回は本来の強い姿を見せたいところだ。
狙うはタイトル、ガステラム急上昇中
3連勝中のガステラムは再びベルト戦線へ舞い戻るための一戦となる 【Zuffa LLC】
「ジ・アルティメット・ファイター・シーズン18」のミドル級トーナメントで、チーム・ソネンの選択最下位選手から出発して予想外の優勝を飾ったガステラム。UFC本戦ではウェルター級でキャリアをスタートし、計量失格を繰り返していた。ところが、不本意なままで参戦したはずだったミドル級では、ネイト・マーコート(米国)、ティム・ケネディ(米国)、ベウフォートといったレジェンドをいとも簡単にクリアし、タイトル戦線での存在感を高めている。いまだに自分の戦場はあくまでもウェルター級であると言い張り続けているガステラムであるが、結果を見る限りミドル級での適性は明らかだ。
今回のワイドマン戦についてガステラムは次のように分析している。
「崖っぷちに立っているのも、プレッシャーがかかっているのもワイドマンの方だ。地元で4連敗したい人なんていないし、特に今回は彼にとっては、リリースの危機もかかっているからね。これまでで最も準備万端な状態で出てくると思っている」
「こちらは力むことは何もない。ブラジルでベウフォートを倒した時と同じように、力を出し切っていい試合をお見せする。試合後にマイクを渡される時のことをイメージしてトレーニングを行っているんだ。対戦相手は誰でもいい。早くタイトルマッチにたどり着きたいんだ。勝ってタイトル挑戦をアピールしたい」
ニューヨーカー6名出場、燃えるロングアイランド
(文:高橋テツヤ)
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