女子バレー、NECはサーブで強くなった ジャンプフローター習得の背景を公開

月刊バレーボール

NECの高橋悠コーチ(左)と、17−18シーズンから主将を務める柳田光綺 【月刊バレーボール】

『月刊バレーボール』にて連載中の技術企画「チームは××で強くなる」。本誌8月号では、「サーブ」をテーマに、2016−17シーズンのV・プレミアリーグを制したNECレッドロケッツから直々に独自のジャンプフローターサーブの技術を伝授してもらった。今回は、本誌に掲載されなかったサーブ習得の背景を公開する。

分かっているけれど、返せない!?

 サーバーから放たれたボールが、不規則な軌道を描きながらも、速く、そして力強く、向かってくる。レシーブの構えを取るも、腕に当たったボールはあらぬ方向へと飛んでいってしまう。

 分かっているけれど、返せない。そんな対戦相手の困惑が目に浮かぶサーブを、NECは打っている。

「そのようなイメージを一番に、どのチームからも持ってもらえるようなサーブを打ちたいと思いますね」

 そう話すのは、チームで主にサーブを担当する高橋悠コーチ。NECが武器とするサーブの狙いとは――。

「男子では、ジャンプサーブを打ってサービスポイントを挙げる選手をビッグサーバーと呼びます。それを私たちのチームでは、なるべく全員が得点を取りにいくようなサーブを、ジャンプフローターサーブでも打てるようになろう、と。そう考えています」

 かつてはラリーをスタートさせる意味合い(“サービス”はこれに由来する)を持っていたサーブも、今日では攻撃の第一手と位置づけられている。そこでNECは、より攻撃的なサーブの導入に踏み切ったわけである。

「まず日本人、特に女子が世界と戦う際には、身長差の問題が出てきます。そこでどのようなサーブが必要かを考えた時に、韓国の女子バレーを模範にさせてもらいました。

 サーブの助走距離をしっかりと大きく取って、そこから打点は高く、体を大きく使って、力を伝えるものになっています」

 ほかのチームの助走が2、3歩であるのに対して、NECは倍近く。ボールが山なりにならないように、高い打点から強い打球を打つことを心掛けているのだという。

ガラリと変えたサーブのフォーム

チーム内でサーブの習得が早かったという柳田 【月刊バレーボール】

 黒鷲旗全日本男女選抜大会が行われる5月をシーズンの一区切りに、そこからVリーグが始まるまでの期間を、NECでは「鍛錬期」と設定している。16年のこの時期に、チームは現在のジャンプフローターサーブに着手した。

 ボールを数多く打つよりも、まずは体の使い方やスイング動作の確認から。その中で、高橋コーチが「特に体の使い方がうまく、理想の形で打つサーブを習得するまでの時間が早かった」というのが、ウイングスパイカーの柳田光綺だ。

 元々、サーブについては「得意とまではいかないけれど、苦手ではないです」という柳田。チームの方針に沿って、新しいサーブの打ち方に取り組んだ。

「打ち方も、今までとはすべてが違うものに変えました。自分自身、パワーヒッターとして、ボールをたたく強さを持ち味としていたので、それをサーブに生かすことができた取り組みだったと思います」とは柳田本人の述懐だ。

 ジャンプフローターサーブに、柳田は早くからフィットした。だが、取り組んで間もない16年7月のV・サマーリーグでは、苦い思い出も。

「(ジャンプフローターサーブを)初めて公式戦で試す場だったんです。一本目は決まって、“よし”となったんですけれど、ちょうどチャレンジ(ビデオ判定)が入って、間が空いたんです。

 それからサーブを打とうとなった時に、テンパってしまって(笑)。歩幅も合わないし、トスの高さもおかしくなって手に当たらず、アンテナにかかった。『こんなサーブ、いつ以来!?』というくらいのミスでした」

 そんな失敗談もありながら、9月のアジアクラブ女子選手権では、自らのサーブでセットを獲得する「思い出の一本」も生まれた。

 そうして、16−17シーズンのV・プレミアリーグ開幕を迎えたのである。

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著者プロフィール

1947年創刊。バレーボールの専門誌として、その黎明期から今日まで、日本のバレーボールを取り上げ、その報道内容は、全日本、Vリーグはもちろん、小・中・高・大学生、ママさんまで、多岐に渡る。

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