女子バレー、NECはサーブで強くなった ジャンプフローター習得の背景を公開

月刊バレーボール

時間の経過とともに成果は表れた

16−17シーズンのVリーグレギュラーラウンドで、チームは8チーム中2番目に高い数字を残した(写真は山口かなめ) 【月刊バレーボール】

 新しい打ち方を身に付ける、それ自体は時間を要するものだった。高橋コーチは話す。
「時間はかかりましたね。特に自分が持っているフォームやクセというものは、変えにくいもの。バレーを始めてから十何年とサーブを打ってきて、そのフォームを崩して、新しい打ち方をしようというのですから」

 チーム内でも比較的、習得が早かった柳田でさえ、練習と試合本番において一緒のリズムで打てるようになったのは、V・プレミアリーグ開幕を前にした時期だったという。

「リーグが始まって、1レグ、2レグと序盤はなかなか成果が出ませんでした。よく我慢した結果が、最終的な結果につながったのだと思います」と高橋コーチ。チームとして、サーブを徐々に体得したという事実は、数字上ではっきりと表れた。

 10.7%(4位)、11.6%(1位)、12.5%(1位)。

 これは16−17シーズンのでのNECの1レグ、2レグ、3レグにおける『サーブ効果率』の数字だ。カッコ内は8チーム中の順位を指しており、チームがリーグ戦の中で徐々に高い数字を弾き出したことを示している。

 高橋コーチの「ようやく効果が出始めたと感じたのは3レグ、レギュラーラウンドの後半から。あとはファイナル6、このあたりは実感を持っていましたね」との言葉どおり、ファイナル6の5試合におけるNECのサーブ効果率は14.1%。これは6チーム中トップの数字であり、サーブ効果率で2位のトヨタ車体クインシーズが11.6%という点からも、チームにとってサーブが一つの武器として威力を発揮していたといえよう。

(数字はVリーグ公式記録より。「サーブ効果率(%)」=「(ノータッチ×100+エース×80+効果×25)÷打数」の数値)

速やと強さを追求したサーブのこれから

サーブで攻める、そのスタンスはこれからも継続していく考えだ(写真は古賀紗理那) 【月刊バレーボール】

 最終的に16−17シーズンのV・プレミアリーグでは、柳田がレギュラーラウンドで日本人選手トップのサーブ効果率を上げた(18.8%)。

「新しいサーブにしてからは、ボールを変化させるよりも、相手を見て、そこを目掛けてボールをコントロールする。かつ、助走をとっている分、球速も落ちない。狙いどおりに相手エースを崩すこともできたので、取り組みとしてよかったと思います」と柳田は満足げに語る。

 一方で、初めて参戦した今年5月の世界クラブ女子選手権は、また一つ上のハードルに触れる機会になった。
「海外のチームは、速いサーブ、強いサーブは受け慣れていると思うんです。正面や一歩動いたくらいの位置へのボールでは、どれだけ速く打っても返されてしまうことが多いなと感じました。

 国内では速さと強さをずっと意識していました。それに加えてコントロールの細かさや、レシーブする選手がより苦手とするところを狙うくらいにならないと、まだまだ世界を相手には通用しませんね」

 高橋コーチは 「海外を相手にして、まだまだ足りないスキルの一部だと感じました」と話し、こう続けた。
「日本が一番になるために必要な、スキルのひとつでもあるのかなとは思います」

 サーブで攻める。そのスタンスは今後も継続していくつもりだと高橋コーチは言う。
「チームとしても効果率などの数値は毎年、目標を設定しています。リーグ戦ごとに、また使用するボールによって変わりますが、その数字を越えられるように意識させながら、これからも取り組んでいきたいと思います」

 チームはサーブで強くなるのか? その問いに、NECはリーグ優勝という結果で答えを出した。次のシーズンはさらに進化した姿を、見せてくれることだろう。

(坂口功将/月刊バレーボール)

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著者プロフィール

1947年創刊。バレーボールの専門誌として、その黎明期から今日まで、日本のバレーボールを取り上げ、その報道内容は、全日本、Vリーグはもちろん、小・中・高・大学生、ママさんまで、多岐に渡る。

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